くらし

「捨てれば幸せ」とは限らない、程よくモノのある暮らし。

  • 撮影・青木和義 文・嶌 陽子

つい買ってしまうものは、自分が苦手なジャンルなのかも。

[鍋類は全部でたったの5個。効率を重視したキッチン]普段使うのは、炊飯用土鍋、独シリット社の「ミルクポット」、電気調理鍋の3つ。鍋類はほかに煮込み用の鍋と、グリルパンのみ。料理が苦手で、油の飛び跳ねが嫌いという性格、価値観に合わせた選択だ。
[食器を新たに買う時は、 “白いものを2つ揃いで”が原則]食器を買うときのマイルールは、どんな料理にも合う白の器を、2つ揃いで買うこと。「1つが割れたら、似たサイズのもので代用します」。大皿は買わず、見栄えのいい鍋をそのまま食卓に出すスタイル。
[ガラス容器はすぐ取り出せるよう平置きにして収納]電子レンジのすぐ下にある引き出しの中には、ガラス製食品保存容器が平置きに。毎日、食材と調味料を入れて、電子レンジで副菜作りを。

苦い経験をもとに、今の住まいを作り上げた香村さん。どの部屋も、3人の子どもがいるとは思えないほどすっきりしている。ただし、以前と違うのは、程よくものが置かれているため、くつろげる空気が漂っていることだ。
「ここまで来るのに、いろいろと失敗もしましたね。雰囲気を良くしようと思うあまりに、出窓のスペースを飾り過ぎたこともありました。逆に、キッチンはものをしまい込み過ぎていたんですが、ある時、遊びに来た人から、『このキッチンからおいしい料理が生まれる気がしない』と言われて(笑)。それ以来、いくつかの器は出して収納するようにしています」

また、以前はテレビをリビングに置いていたものの、次第にテレビばかり観るように。本来の目的である“話をする”が減ってしまったため、別室に移した。こうしたトライアンドエラーは、今も続いている。買い物での失敗も、年に数回はあるのだという。
「私の場合、つい通販サイトなどでチェックしてしまうのが調理道具。それは私が、料理が苦手だからなんです。『これを買えば、料理が上手になるかも』と思ってしまうんですよね。“つい買ってしまうものは、苦手なジャンル”と自覚するだけでも、買い過ぎを防ぐブレーキになるかもしれません」

最近では、客用布団や夫婦の服の一部などは、レンタルサービスを利用。試行錯誤を経て、ものの量が自分にとってちょうどいいと思えるようになったのは、ここ3年くらいのことだ。
「ものを捨てまくった時代、どれだけ家事時間を減らせたか、ストップウォッチで計っていました。今でも、その習慣は続いています。もちろん、以前より物量が増えたので、その分、家事の時間も増えました。でも、あの頃にはなかった、心の潤いが生まれましたね。音楽を聴きながら掃除できるんだったら、少し時間が増えてもいいな、と思えるようになりました」

香村さんのもとには、日々“ミニマリストになりたい”という人が相談に来る。それ対して「捨て過ぎないで」とアドバイスすることが多いそうだ。
「ものが多いということは、裏を返せば、好きなことがそれだけたくさんあるということ。その人らしさが見えて、すごくいいなと思います。もちろん、ものの増やし過ぎはよくないですが、減らし過ぎは、暮らしがすさみます。“家は住んでいる人を映す鏡”だと考えれば、何もない家に住んでいるのは、中身がない人みたい。自分たちの過去を振り返って、そう思うんです」

香村 薫(こうむら・かおる)●ライフオーガナイザー®。会社員を経て、2014年、片づけサポート業務「ミニマライフ.com」を開業。著書に『トヨタ式おうち片づけ』『トヨタ式超ラク家事』(共に実務教育出版)。愛知県岡崎市在住。

『クロワッサン』970号より

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