冒頭、思うがままに権勢を振るう道隆(井浦新)。内裏から皇太后・詮子(吉田羊)も追い出して、邪魔するものは何もなし。
「なんと思うままにならぬ、我が一生よ!」と叫ぶ崇徳院(2012年大河ドラマ『平清盛』井浦新が演じた)を覚えている大河ファンとしては、ほんのちょっとだけ、よかったですね……と思わないでもない。
我が世の春を謳歌する道隆に比べて、道兼(玉置玲央)は誰かれ構わず、すがれるものにはなんでもすがる状態なのだろう。公任(町田啓太)の家に居座ってしまう。道長が迎えに行ったら酒浸りで烏帽子はないし、直衣は脱ぎ捨て女の衣を引っかけている。公任の家の女房になにかした様子が窺え……荒み切ってしまった。
「この道長がお支えいたします」
殴られる弟、殴る兄であった第1話(記事はこちら)の頃を振り返ると、こんな日が来るとは思わなかった。
この場面に限らないが、ひとを気遣う時の台詞と柄本佑の演技にたびたび第1話、子役(木村皐誠)の頃の三郎を感じる。
道兼といい道隆といい、兄たちが父・兼家(段田安則)と権力に振り回され変わっていく中で、三郎の部分を失わない道長が彼らを、家族を支えようとしているのだ。