立美さんが石川県の県議会議員となってからは、東京と金沢でそれぞれの生活が始まった。社会に出て、責任ある立場で活躍する妻を、守穂さんは魅力的に感じ、まぶしい思いで応援していた。ところが立美さんの気持ちは……。
立美 離婚しようと思った時が、1回だけありました。主婦から突然議員になって、最初の頃。議会では知らない言葉がぽんぽん出てくるし、何をしていいかわからない。「先生」と呼ばれて戸惑い、自宅と議会の間を、人と目を合わせないように下を向いて通うという時期があったんです。4年の任期が早く終わればいいと思う毎日でつらかった。その気持ちを守穂に「わからない」と言われ、いちばん身近な人だからこそ、ショックでした。
守穂 僕は本当にわからなかった。せっかく当選したんだ、思いっきりやりなよと檄を飛ばして。鬱の人は励ましちゃいけないって言いますよね。まったく的外れなことをやったと、後でわかりました。
立美 その時は、初当選の女性議員と出会って連絡を取って、情報を共有するなどして乗り越えることができました。でも、議員を続けていく上では、守穂にいろいろ助けられた部分もあります。辞書代わりというか(笑)。