くらし

【紫原明子のお悩み相談】セックスレスについて愚痴られます。

『家族無計画』や『りこんのこども』などの著書があるエッセイストの紫原明子さんが読者のお悩みに答える連載。あなたもお悩みを投稿してみませんか?

<お悩み>
最近、結婚・出産した友達から、セックスレスについて愚痴られることが増えてきました。しかも一人ではなく複数人……。
独身バツ無しの私は「うんうん、そうなんだ」と相槌をうつ役割を全うすべきと思っていますし、夫婦もいろいろあってストレスを発散したい気持ちがあるんだなと理解していますが、一通り愚痴を言い終わると、揃いも揃って「いいな、自由で。うらやましい」と言われます。
おそらく恋愛とか仕事含めて、私が自由に遊びまわってる様をSNSを通じて知っているから、の発言かと思いますが、そう言われてしまうとなんてリアクションしていいか困ってしまいます。 元々の話題がデリケートだし、独身なもんで下手なことは言えず。しかし毎回羨ましがられるとバカにされている気がしてこっちもカチンときてしまいうんざりしています。
その話題になるとだいたい、笑ってごまかすか、「結婚できてるんだからいいジャーン!」と自虐に走って話を逸らすしかできません。
既婚者はなぜセックスレスの愚痴を独身者にこぼすのでしょうか。こちらはどんな回答をすればカチンとくることを言われなくなるのでしょうか。いいリアクションってありますか? 
(相談者:料理苦手 /IT関係で働く36歳女性、独身バツ無し彼氏無し。)

紫原明子さんの回答

料理苦手さんこんにちは。

お話を伺っていて、これはとても悲しいスパイラルに陥っているなと感じました。女性の30代、足並みが乱れますよね。仕事のこと、恋愛のこと、人生のこと。それまで似たような状況で悩んだり考えたりしてきたのに、ステータスが変わると、自ずと関心の矛先も変わってしまう……。しかし私達は先人たちの知恵によって、結婚しているからいいとか、子どもがいるからいいとか、いやいやむしろ独身だからいいとか、そういうのは別にないんだなってことがわかってきました。負け組・勝ち組なんてフレーズに踊らされないんだ、そんな誰かの敷いた価値観に乗せられないんだって決意を、根底の部分でたくさんの人と共有できるようになってきました。これは超・超前進です。

ところが、今はいかんせん転換期なので、そういうマインドを持っている人と持っていない人とが、社会の中に混在しています。すると、“自分と違う生き方の人を否定しません”という意思を持っている人は「私は結婚してるからいいとか思ってない」「私は結婚が墓場だとか思ってない」というように、会話の前提として、相手に律儀に表明しておく必要があります。

で、この“自分と違う生き方の人を否定しません”という意思表示のバリエーションが、残念ながら私達には乏しいのです。

自分と立場の違う相手の話に興味をもって“耳を傾ける”、これが一つです。
自分と立場の違う相手の立場を、いいな〜と“羨む”、これが二つです。
そして三つ目が“自分の立場を相手より下げる”、つまり自虐です。

料理苦手さんにとって何が一番ストレスかって、この2と3の、建設的でないコミュニケーションですよね? お気持ちとても良くわかります。

セックスレスについて打ち明けてくるご友人。恐らく本当に悩んでいらっしゃるのでしょうが、他方で少なからず、“結婚しているからといって優位であると思っていないよ”という意思表示を兼ねているのでしょうし、それで不必要に持ち上げられて羨ましがられて今度は料理上手さんが自分を下げる、本当に悲しく、そして不毛なスパイラルです。

セックスレスはたしかに深刻な話で、特に出産した直後というのはただでさえナーバスになっているので、もう自分はこのまま二度とセックスをしないかもしれない、女でなく母として生きる道しか残されていないかもしれないと不安になるご友人のお気持ちもとても良く分かります。そしてそれを一通り聞いてあげる料理苦手さんの優しさたるや。ご友人のみなさんに代わって私からお礼を言わせてください本当にありがとうございます。

ただ仰るとおり本件非常にデリケートな問題で、じゃあセックスを外注しちゃえばいいじゃん、となかなか簡単に言えないし、セックスできないなら離婚したらいいじゃん、とも言うわけにいかないし、そう考えるとやはり返答としては「夫婦カウンセリングがいいらしいよ、近くで探してみたら?」で、カウンセラーに丸投げしちゃったらどうでしょうか。実際私の周囲でも最近、夫婦カウンセリングで関係性を改善した人達が増えてきました。

……で、本当に難しいのはここからで、自虐に代わる共通の話題がない、ということだと思うんです。趣味で繋がっている友人ならば趣味の話に終始すれば良いし、たまにしか会わない地元の友達なら懐かしい思い出話をし尽くせば良いのでしょうが、そういうわけではないんですよねきっと。しょっちゅう会えて、なおかつもともとは立場が似通っていることがきっかけで知り合った友達だったんですよね。

ご友人も、恐らくこのままずっとセックスレスの問題と向き合い続けていくわけではないと思います。改善するなり、諦めるなり、5年、10年も経てば状況は変わるでしょうから、それまでは会う頻度を減らすというのも一つだと思います。何しろ女性は平均すると80年以上生きるそうなので、そのうちのたった5年、10年です。先は長いです。

でも、そういうわけにもいかないとすると、やはり何か、お互いの自虐を持ち出さなくて良いような話題を見つけるしかありません。共通の趣味や共通の状況がない場合、会話の糸口となるのはもっぱら他人の話ですが……いくら悪口でないとしたって、そこにいない人の話ばかり延々とやるのも気が引ける。で、一般的にはそういうとき、メディアを彩る手の届かないスター達が生贄となってくれている場合が多いです。あのボクシングの人ぶっ飛んでるね、とかあの人アメリカに留学してしまったねとか……(誰というわけではありません)。

ただこの点について私がやや危惧しているのは、便所の落書きがすべて可視化されているインターネット時代において、日本のスターというのは、ゴシップに対する正当な対価をもらえていると言えないのではないかということです。たとえばハリウッドスターのように、プライベートジェットを買ったり、離島を買ってゼロからインフラを敷いて家を建てたりできるくらい莫大に稼ぎがあるなら、たとえ一般の人にちょっとくらい噂話されたってその甲斐があるという話ですが、日本のスターってそういうわけじゃないですよね。せいぜい都内のタワマンの上の方にワンフロアの部屋が買えるとか、その程度でしょう。そうなるとやっぱり、時間稼ぎのために好き勝手噂話するというのは、どことなく気が引けます。

そこで私は考えたのですが、ここはもう本当に神頼みしかないのではないかと。神とか仏とか、こういう方々は私達を救うために存在しているのだから、神とか仏とかのゴシップでもって窮地を救ってもらうのが一番良いのではないでしょうか。

一つとっておきの豆知識をお教えします。「仏陀」という単語は「明子」のような固有名詞ではないんです。悟りの境地に達したものを指す普通名詞なのです。だから悟りを開けば誰でも「仏陀」になれるらしいです。「え〜そうなの?」というリアクションが返ってくればしめたもの。神や仏の話しをしまくって、楽しく神々しい時間を過ごされるのはいかがでしょうか。あ、セックスレスで悩んでいる友人にもぜひ「それ仏陀への一歩だよ」と……これはやめておきましょう。

イラスト:クロワッサン編集部・どーなつ

紫原明子● 1982年、福岡県生まれ。個人ブログが話題になり、数々のウェブ媒体などに寄稿。2人の子と暮らすシングルマザーでもある。Twitter

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