くらし

中国のバブル崩壊が家計に響く? 知っておきたい金融・財政の話。

  • 撮影・森山祐子 文・嶌 陽子

価値がまだ分からないものにお金を使うべき。

家電や衣類もある程度そろった40代。余剰資金をどう使うかが問われます。(原田さん)
これからは、SNSではない、リアルなヒトのつながりへの投資が増えるかも。(坂口さん)

原田 購買も専門とされている坂口さんに、今日はお金の使い方についても聞いてみたかったんです。今はシェアリングエコノミーもどんどん進んでいますよね。最近巷でよく見かけるカーシェアリングをはじめ、ブランド品や洋服のレンタルサービス、民泊など。

坂口 今やネクタイですらレンタルできますから。モノの“所有”から“共有”に時代が変わりつつありますね。

原田 もうひとつ、先日坂口さんの本を読んで面白いと思ったのが、「効果のわからない支出は抑制するな」という言葉です。普通は逆のことを言いますよね。

坂口 食料や家電、生活必需品など、効果が明確に分かっているものは、価格競争によって安いものも売っているので、いくらでも節約すべき。一方、効果がまだ分かっていないけれど、実は価値のあるものというのは、国が課税していないことも多い。たとえば、江戸時代まで農民には農作物に対して年貢を課しましたが、商人間のやり取りは課税されていなかった。また、現代でいえば、つい最近まで仮想通貨を通じて得た利益は実質的には非課税だったわけです。さらに、これは課税の話とは別になりますが、読書をはじめとする趣味や娯楽、教育など、自分に及ぼす効果が分からないものこそ、実は人生を楽しくさせてくれるものだったり、長期的に自分を成長させてくれるものだったりする。それにはどんどん支出すべきだというのが僕の考えです。今後は、SNS上ではない、リアルな友だちが最大の財産になると思います。

原田 要するに、“つながり”ということですね。

坂口 毎年、統計局が出している“家計調査”は、1年間のジャンルごとの支出が分かる統計です。この変遷を見ていくと、ここ20年ほどで支出が顕著に減っているのが衣類。ファストファッションの台頭もあり、安いものを買う人が増えているんです。一方で増えているのがインターネット代などの通信費です。

原田 今後はどう変わっていくんでしょうね。私たち40代以上の世代は、家電も衣類も、生活に必要なものはある程度そろっている人が多い。日々貯蓄もしつつ、余ったお金をどう使うのがいいのか、考えることはありますね。

坂口 余裕や安心感を持って生きるには、年収の3倍くらいは貯蓄を持っておくのが理想だと思います。それ以上の余剰資金は、“効果の見えないもの”に使うのがおすすめです。

原田 友だちに会ったり、ライブに行ったり。そういった“生のもの”にお金を使うことが、日々を豊かにしてくれるのかもしれませんね。

家計調査を見れば、経済の一側面が見えてくる。

家計調査から分かる生活の変化(平成12年〜平成29年)。総務省統計局家計調査より作成

衣類(被服及び履物)が年々減少する一方で通信は増加。また、外食費が伸び悩む中、「中食」ブームや健康志向のおかげか、調味料は順調に増加していることが分かる。

新しい経済のかたち、シェアリングエコノミー。

シェアリングエコノミーの主なジャンル

シェアリングエコノミーとは、不特定多数の人々がインターネットを介して乗り物や空間、モノなどを共有できる場を提供するサービス。2016年度の国内市場規模は前年度比26.6%増の503億4000万円となった。今後も、関連する既存業界のサービスにとって代わる、もしくは一部共存する形で成長していくと予想される。

注:市場規模はサービス提供事業者のマッチング手数料や販売手数料、月会費、その他サービス収入などの売上高ベースで算出した。
出典:矢野経済研究所「シェアリングエコノミー(共有経済)市場に関する調査(2017年)」(2017年11月15日発表)

原田ひ香(はらだ・ひか)●作家。1970年、神奈川県生まれ。2007年に『はじまらないティータイム』ですばる文学賞を受賞しデビュー。著書に『三千円の使いかた』(中央公論新社)がある。

坂口孝則(さかぐち・たかのり)●経営コンサルタント。電機メーカーなどの調達部門勤務を経て現職。日本テレビ系情報番組『スッキリ』コメンテーターをはじめ、テレビやラジオでも活躍。著書も多数。

『クロワッサン』980号より

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