くらし

中国のバブル崩壊が家計に響く? 知っておきたい金融・財政の話。

  • 撮影・森山祐子 文・嶌 陽子

年金積立金の収益にも影響、株式市場の動きにも注目。

2020年オリンピック後の日本経済は、一気に悪くなるんでしょうか?(原田さん)
“オリンピック後に不景気”はやや短絡的。それよりも、中国経済の行方に注目です。(坂口さん)

原田 ところで、2年後には東京オリンピックがありますね。「オリンピックの崖」なんていう言葉もあるように、オリンピック後に景気は悪くなるという説もありますが……。

坂口 確かに、今ほとんどの人がオリンピック後の経済は崩壊すると言っていますよね。でも、財政の中でも公共事業というのは非常に絞られている。経済全体の中における建設業の比率も低い。オリンピック後、これらがガクッと減ったからといって、経済全体にそれほど影響を与えるのか。そこはあまり短絡的に考えないほうがいいと僕は思っているんです。

原田 あまり「オリンピック後」ばかり意識しすぎないほうがいいということですよね。坂口さんが注目している動きは何でしょうか?

坂口 僕が注意すべきだと思うのは、中国不動産バブルの崩壊ですね。今のところ、不動産価格の上昇は続いていますが、もしもあと数年後、たとえば2020年頃にバブルがはじけた場合、世界経済にも波及し、安全だと思われている円が買われ、円高になる。

原田 2008年のリーマンショックと同じですね。

坂口 その結果、輸出製造業が海外に出ていき、国内産業が空洞化する。さらに、もしも海外での日本企業の業績が悪かった場合、今度は一気に円が売られる。国債が暴落し、金利も上昇する。日本経済が大打撃を迎える可能性もありえます。

原田 それが最悪のシナリオですね。

坂口 年金にも影響がありますよ。今、日本の年金積立金は、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)によって、国内外の債券のほか、株式投資などで運用していますから。株価が暴落したら運用益も下がる。ひいては将来の年金支給額にも影響してくるわけです。

原田 自分自身は株式投資をしていないからといって、株価の変動と全く無関係ではいられないんですね。

坂口 そうです。ここ最近の運用益を見ると、良い成績をあげているからいいですが。言ってみれば、年金積立金を通じて、国全体で大博打をやっているようなものですから。株価の変動やGPIFの運用については、我々一人ひとりが注目すべきだと思います。

原田 私も年金問題はいつも気になっていますね。企業の退職金も年々減っている中、自分たちの世代は、果たして年金をもらえるのか。いっそのこと、もらえないならもらえないで、事前に教えてもらいたいんです(笑)。それなりに対策を立てられるので。

坂口 今の年金制度は賦課方式、つまり皆が積み立てたお金を運用しながら配布していくシステムですよね。僕は、現状のまま行けば、あと20年くらいは劇的に崩壊することはないだろうと思っています。騙し騙ししながらも、何とか持つでしょう。その先は、日本の経済がどの程度まで成長していくのかによるでしょうね。

中国の不動産価格は上昇が持続中。

中国住宅価格と価格上昇都市数。出典:日本総合研究所(中国国家統計局「全国房地産開 発投資和銷售情況」、Thomson Reutersを基に作成)

中国の新築住宅価格は2018年5月時点では上昇が持続中。ただし、最近は米国との貿易摩擦などにより経済成長が鈍化。先行き不透明感がかつてなく高まっている。

実は国内外の株式や債券で運用されている年金積立金。

GPIF運用資産別の構成割合(年金積立金全体)。出典:年金積立金管理運用独立行政法人「平成29年度第3四半期運用状況」

年金保険料から集められた公的年金積立金は、厚生労働大臣の預託により、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が国内外の債券市場や株式市場で運用している。その運用額は約160兆円。世界最大の年金基金だ。近年、より収益性を上げるために運用資産の構成を見直し、国内外の株式の割合を引き上げた。平成13年度以降の累積収益額は+63.4兆円。7月にGPIFが発表したところによると、平成29年度の運用収益率は前年度比+6.9%と2年連続でプラスを確保した。GPIFが運用する積立金は年金財源のごく一部ではあるものの、その運用方針や収益については注意深く見守る必要がありそうだ。

GPIF市場運用開始後の四半期収益率と累積収益額(平成20年度〜平成29年度第3四半期)。出典:年金積立金管理運用独立行政法人「平成29年度第3四半期運用状況」

大企業の退職金は年間2.5%ずつ減少している。

大企業の退職金の傾向。出典:厚生労働省「就労条件総合調査」(大卒、大企業、定年退職の場合)

厚生労働省の調査によると、大企業の場合でも退職金の額は年々減少傾向にある。定年後、退職金と年金だけで生活できる時代は、もはや終わりつつあるのかもしれない。

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