くらし

中国のバブル崩壊が家計に響く? 知っておきたい金融・財政の話。

  • 撮影・森山祐子 文・嶌 陽子

増え続ける空き家をどうやって活用していくのか。

家を購入するか、賃貸にするか。永遠のテーマのような気がします。(原田さん)
最近は空き家対策も進んでいるので、どう有効活用するかも注目ですね。(坂口さん)

原田 もうひとつ、気になるのが家の問題ですね。賃貸がいいのか、持ち家か。もしも購入するならどのタイミングがいいのか。

坂口 家をローンで買うっていうのは、つまりは不動産価値が上昇するかどうかにかけるギャンブルと同じなんですよね。僕の持論では、“悩むなら購入するな”。はっきりとした目的やポリシーがあるなら、買っても全然いいと思うんですけれど。

原田 もし家を買おうと考えている場合、そのタイミングは、やはり先ほどからお話しされている経済の動向を見ながらのほうがいいんでしょうか。

坂口 そうですね。先ほどの話のように中国不動産バブル崩壊の影響により金利が上昇した場合、長期の住宅ローンを組んでいると、’90年代の再来で、破綻しかねませんね。

原田 完全固定金利でローンを組むという選択肢もありますよね。

坂口 賃貸の話をすると、現在は、ファミリー向け、そして65歳以上の人向けの借家がないという2つが問題となっていますね。後者は少しずつ解決されていますが、前者はまだまだです。一方で、最近は空き家問題が話題になっていますね。空き家の数がどんどん増えている。国がこれを何とか有効活用できないかと取り組んでいます。これまで、家の賃貸や譲渡には非常に複雑な手続きや契約が必要だったんですが、賃貸でも家屋を改造できるような契約のひな型や、需給のマッチングが気軽にできる“空き家バンク”を作ったりしています。そうした再利用促進の動きも、今後見守りたいですね。

原田 地方ほど、空き家率は高いですよね。限界集落の問題もありますし。

坂口 人口減少が加速し、下水道などの公的サービスすら全く採算が合わなくなってしまっている地域もある。だから、空き家を取り壊し、人々が住むところを集約しようという“コンパクトシティ”という考えも出始めています。皆が近くに住んでいたほうが、買い物に不便を感じる人も減りますし。

原田 私も、もはや今後はその道しかないような気がしますね。ただ、そんなにすんなりと事が運ぶかどうか。

坂口 そのとおりですね。集約化したほうが絶対に合理的なんですけれど、日本ではなかなかうまくいかない気がしますね。住み慣れた場所を絶対に離れたくないという人は多いでしょう。

原田 日本では、土地への権利意識が高い人も多いですしね。もしも行政がコンパクトシティの構想を推進しようとしたら、反対運動が起きる地域も多いでしょうね。

坂口 話は変わりますが、もうひとつ、一部で議論されているものの、僕が日本には絶対に根づかないなと思うのが、“ベーシックインカム”です。

原田 すべての国民に一律で生活費を現金給付するという制度ですね。すでにフィンランドなどで実験的に導入されていますよね。

坂口 格差是正の目的もありますし、生活保護などの社会保障制度があまりに複雑なので、無条件で一律に支給することによって行政コストを下げるという効果もあると言われています。でも日本でやるとなると、まず財源がない。それを何とかやり繰りするとしても、社会保障制度をシンプルにして行政をスリム化するということは公務員の数を減らすということ。公務員の既得権益社会である日本では、賛成する人はほとんどいないでしょう。それに、もしも実施したら、日本国民になって給付を受けようと、偽装結婚などの闇ビジネスが流行る。それを防ぐため、大変な監視社会になる可能性も。日本は、それに耐えられないと思いますね。

原田 むしろ、今の日本では生活保護を受けるべき人がきちんと受けられていないのが問題ですよね。最近、小説の取材のために生活保護について調べているんです。本来、受給できるはずの人が申請していないケースが多い。そっちを何とかしないと、と思ってしまいます。

坂口 日本では、生活保護というと負のイメージが大きい。たまに不正受給のニュースがあるとすごく非難されますが、不正受給なんて、全体の1%未満。それを、“生活保護を受けている人は全員悪者だ”みたいに思われているのは、本当によくないですね。

上がり続ける空き家率。対策は徐々に進められている。

総住宅数、空き家数及び空き家率の推移 -全国(昭和38年〜平成25年)。出典:総務省統計局HP
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