輪島塗──伝統工芸の百の工程を巡りに
画像協力・輪島工房長屋 文・秋山香織
石川の輪島塗は、“一生もの”の器の代表格。国の重要無形文化財である伝統工芸のもの作りを間近で感じ、逸品を探す旅はいかがだろうか。
輪島塗が加飾の美しさや耐久性にすぐれている理由は124もの細かい製造工程にある。数年かけて乾燥させた木材を使い、1年程度の年月をかけ、「木地」「下地・中塗り」「上塗り」「加飾」の工程を工房ごとの完全分業制で職人たちが仕上げる。
特に輪島塗らしい工程は、下地。「輪島のみで採れる珪藻土から作られた『地の粉』を漆に混ぜて塗り重ね、木地の縁や底に『布着せ』をすることで、強固に。何層にも塗り重なっているので、衝撃から木地を守り、傷ができても下地までを塗り直せば元に戻ります。表面を彫って金箔などを埋める『沈金』の技法が輪島塗で発展したのも、この塗り重ねられた下地のおかげ。工程見学では、見えない部分の手仕事にも触れていただければ」とは、輪島漆器商工業協同組合の隅堅正事務局長。
「震災の影響で現在、見学できる工房は一部に限られますが、多くが復興に向けて仮工房などで製作を再開しているところ。輪島塗への関心は、復興への後押しにもなります」
手仕事で一点ずつ作られる作品の一期一会の出合いも、旅の醍醐味。
「『使いづや』といって、使い込んで拭き上げるうちに漆の風合いやつやが増すのも魅力。日常で使い、修理しながら長く付き合ってほしいです」
伝統の技で手間を惜しまず作られる、輪島塗の主な工程
1. 木地
3〜5年以上かけて乾燥させた良質な原木の塊を、作品の形状に削り出す。椀の場合、ろくろの回転を利用し、カンナで内側や外側を段階的に削り出して、形を整えていく。
2. 下地・中塗り
「下地」の工程では、生漆で木地固めをした上に、椀木地の縁や底などに麻布などを生漆と米糊を混ぜたもので貼る〈布着せ〉を行い、器を補強。その後、地の粉と米糊と生漆を練り合わせたものを混ぜた下地漆をへらで塗る〈下地塗り〉と、乾かした後に砥石で研ぐ〈下地研ぎ〉を繰り返し行う。さらに「中塗り」では、漆を塗って下地研ぎよりも細かい砥石で研ぐ工程を数回繰り返し、表面に付いた不純物を取り除いて布で拭き上げる。
3. 上塗り
上塗漆を塗る。外気を遮断して一定の温湿度に保たれた専用部屋で行われ、ホコリやちりを避ける。塗り終わると専用の収納庫に納め、漆が垂れないように回転させながら乾燥させる。
4. 加飾(沈金の場合)
輪島塗にはさまざまな加飾が見られるが、盛んに行われているのは、「沈金」と呼ばれる技法。まず、漆の塗膜にノミ(沈金用の刀)で文様や絵柄を彫り込む。彫り跡に漆を塗り込み、金箔や金粉を入れ込んで接着させることで文様や絵柄を描く。彫りの深さや角度によって、立体感も表現。そのほか、漆で絵を描いて金粉などを蒔きつける「蒔絵」、上塗りした面を磨いて生漆を何度も摺り込み、つやを出す「呂色」などの技法も使われる。
「製造工程の見学」「体験」「購入」ができる店リスト
輪島塗会館 輪島塗SHOP
輪島漆器商工業協同組合が運営する「輪島塗会館」内のショップ。組合に加盟する60の漆器店の商品が並び、普段使いのものから一点ものの室内装飾品まで、幅広く探すことができる。
輪島工房長屋
昔、職人の集まった長屋跡に立つ、輪島塗の体験施設。「My箸づくり」(有料)で沈金や蒔絵の体験ができ、下地の工程見学が可能(他工程の見学が可能な場合も)。
輪島塗しおやす漆器工房
安政5年(1858年)創業の老舗塗師屋。工房では最大6人の職人が作業を行い、下地・中塗り・上塗りの工程が無料で見学できる。市内最大級の展示フロアを誇る店舗では購入も。
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