【利き酒も至福、大人の酒蔵巡り】藤岡酒造(京都府 伏見区)──いざ、あの銘酒を仕込む蔵元へ!
撮影・吉村規子(藤岡酒造) 構成&文・堀越和幸
真野 遥(まの・はるか)さん
料理家、発酵室よはく主宰。日本酒に合う料理の提案を中心に、レシピ開発や執筆など幅広く活躍中。京都・左京区では酒屋『発酵室 よはく』を営み、店主も兼任
小さな蔵が取り組む新しい試み、平日にもファンが集う京の名店
3年前に東京から京都に移住した料理家の真野遥さんは、本業の傍ら小さな酒屋をオープンさせてしまったほどの無類の日本酒好きでもある。そんな真野さんが今回訪れたのは、酒所でも有名な伏見の『藤岡酒造』だ。
「そもそも伏見はどうして酒所として栄えたのでしょうか?」(真野さん)
「伏見は江戸時代には港町として発展しました。町を流れる宇治川は大阪の淀川水路に通じていて、そこから伏見のお酒が江戸に回った。さらにこの地ではお酒造りに欠かせない良質な地下水に恵まれたことが大きいです」
そう答えるのは『藤岡酒造』五代目蔵元の藤岡正章さん。創業は明治35年(1902年)と古いが、父の急逝や阪神淡路大震災の影響で、1995年には廃業を余儀なくされた。大学生だった藤岡さんは卒業をしてからは会社員となったが、折からの地酒ブームで、その頃は“蔵元杜氏”という存在が脚光を浴び始めた時代でもあった。
「それまでは蔵元といえば経営に専念するのがもっぱらでしたが、経営者が造り手の杜氏を兼ねるという小さな酒蔵さんが徐々に増え始めたんですよね」
これなら自分にもやれるかもしれない。すでに酒蔵だった敷地の9割を企業に貸していた藤岡さんは、残った1割にある赤煉瓦の倉庫を酒蔵に改造、そして自らも全国各地の蔵元を訪ね修業を積み、2002年に『藤岡酒造』を復活させたのだ。手がけたブランドは〈蒼空〉と名付けられた。
「上品な甘みの綺麗なお酒。以前大学の日本酒講座で京料理に合う日本酒を紹介する機会があって〈蒼空〉をお手本にしました。大好評でした」(真野さん)
「そう言ってもらえるのが一番うれしい。京料理のお出汁に合う、というのを目標にしてきましたので」(藤岡さん)
狭い敷地の蔵で造られる酒はどうしても量に限りがある。
「伏見には20軒の酒蔵がありますがうちはとりわけ小さい。大手さんが一日で造る量を一年がかりで造ります」
と藤岡さんは言うが、かわりに、
「うちは純米酒でも純米大吟醸酒でもまったく同じ条件。究極の手間をかけて造るというのがコンセプトです」
「蔵を見ながら試飲というのも、これまでの伏見にはなかった取り組み。日本酒好きにはたまらない」(真野さん)
藤岡酒造
酒蔵見学は予約制で、受付は9月まで。「酒蔵BARえん」では、飲みくらべセットのほかにもグラス1杯売り690円〜や、酒の肴690円〜が楽しめる。
『クロワッサン』1169号より
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