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【日本イーライリリー】「年のせい?」と見過ごさないで。大切な家族と自分を守るために知っておきたい、アルツハイマー病のこと

年齢を重ねるごとに、自分や家族の健康維持には敏感になるもの。特に「もの忘れ」は、加齢によるものか、それとも病気のサインなのか、判断に迷うことも。「最近、親が同じ話を繰り返すようになった」「友人の家族がアルツハイマー病と診断されたと聞いた」──。そんな経験はありませんか? 認知症の原因の多くを占めるとされるのが、アルツハイマー病。テレビや雑誌で見聞きしたことはあっても、具体的にどんな兆候があるのか、どう向き合えばいいのかは意外と知らないもの。アルツハイマー病は誰にとっても身近な病気だからこそ、正しい知識を得て、早い段階で向き合うことが、自分らしい生活を長く続けることにつながります。

撮影・青木和義 文・岡田知子(BLOOM)

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2026(令和8)年4月25日(土)~6月7日(日)、全国約50カ所で開催された、アルツハイマー病の啓発イベント「年のせいじゃない“もの忘れ”展」。人型の「脳オブジェ」がひと際目を引く
2026(令和8)年4月25日(土)~6月7日(日)、全国約50カ所で開催された、アルツハイマー病の啓発イベント「年のせいじゃない“もの忘れ”展」。人型の「脳オブジェ」がひと際目を引く

2024(令和6年)版の高齢社会白書によると、2022(令和4)年時点の認知症の当事者は約443万人。2030(令和12)年には500万人を突破すると推計されています。さらに、その前段階である「軽度認知障害(MCI)」を含めると、2050(令和32)年には1,200万人を超える計算に。

もはや認知症は、誰にとっても「いつ直面してもおかしくない」身近な状態。特によく耳にするのが、「アルツハイマー型認知症」という言葉。アルツハイマー病を原因とする認知症のことで、日本では、認知症の約7割を占めるそうですが、そもそも「アルツハイマー病」って? その症状や、どういう過程をたどるのか、などは具体的には知らないかも……。その症状や疑問を解消するヒントを探しに、『年のせいじゃない“もの忘れ”展』を訪ねました。

イベントで体感する、アルツハイマー病の“兆候”と“リアル”

「脳オブジェ」と呼ばれる人型のオブジェに迎えられながら、「アルツハイマー病の多様な症状を『脳からのサイン』として理解するためのチェック冊⼦」をもらって、各コーナーへ。この冊子には、「近時記憶(数分~数日程度の記憶を保持し、思い出すことができる記憶)の低下」をはじめ、時間や場所、視空間認知の低下、言語の流暢性の低下など、認知機能チェックを簡易的に体験する質問が記されています。家族と話すきっかけにもなりそう。

会場には、気になる症状をチェックできるパネルも
会場には、気になる症状をチェックできるパネルも

アルツハイマー病の原因や段階の過程を分かりやすく説明するパネルやモニターなど、会場内にさまざまな展示物が並ぶなか、ある1つに目が留まりました。それが『アルツハイム921号室』。家の中をモチーフにした展示で、アルツハイマー病の初期症状を疑似体験できるというもの。号室数の「921」は、世界アルツハイマーデーである9月21日にちなんでいます。

「アルツハイム921号室」の展示。アルツハイマー病による“もの忘れ”等の初期症状を散りばめた部屋を表しています
「アルツハイム921号室」の展示。アルツハイマー病による“もの忘れ”等の初期症状を散りばめた部屋を表しています

『アルツハイム921号室』の様子は、普段の生活とは少し違った、違和感のあるポイントが散見されました。冷蔵庫には増え続ける調味料や、そこにあるはずのないアイスや財布が入っていたり、窓辺やテーブルには繰り返し買ってしまう同じ種類の花がいくつも置いてあったり、カレンダーの年月がずれたままだったり……。

このような状態は、以前に買ったことを忘れてしまう、片付けるものと場所の関係が分かりにくくなる、時間の感覚が混乱するといった、アルツハイマー病の初期に多く見られる症状から起こるのだそう。

新しい予定や用事を覚えにくくなり、メモが増えていくのもアルツハイマー病初期の代表的な言動の一つ
新しい予定や用事を覚えにくくなり、メモが増えていくのもアルツハイマー病初期の代表的な言動の一つ
形や位置関係をとらえにくくなり、時計を正しく描くのが難しくなることも
形や位置関係をとらえにくくなり、時計を正しく描くのが難しくなることも
新しい予定や用事を覚えにくくなり、メモが増えていくのもアルツハイマー病初期の代表的な言動の一つ
形や位置関係をとらえにくくなり、時計を正しく描くのが難しくなることも

アルツハイマー病の兆候や症状について、このように具体的な部屋の展示で知るのは初めてでしたが、ただ説明の文字を読むだけでなく視覚的に体感することによって、アルツハイマー病についてよりリアルに理解することができました。

『アルツハイム921号室』を見て、経験したことがあるシーンにシールを貼るコーナーも。シールを持った来場者から「これ、よくある!」という声が聞こえてきます
『アルツハイム921号室』を見て、経験したことがあるシーンにシールを貼るコーナーも。シールを持った来場者から「これ、よくある!」という声が聞こえてきます

脳にタンパク質がたまって起こるアルツハイマー病。初期症状の代表が「もの忘れ」

会場のなかで特に注目を集めていたのが、京都大学大学院医学研究科 人間健康科学系専攻(在宅医療・認知症学分野)教授で、脳科学の専門医・木下彩栄さんによる解説セッションです。

「アルツハイマー病では、実は発症するかなり前の段階から脳の変化が始まっています」という言葉に、来場者の熱心な視線が注がれます。

【日本イーライリリー】「年のせい?」と見過ごさないで。大切な家族と自分を守るために知っておきたい、アルツハイマー病のこと

木下彩栄さん(きのした・あやえ)
京都大学大学院医学研究科 人間健康科学系専攻 教授 (在宅医療・認知症学分野)

1989年京都大学医学部卒、医学博士。ハーバード大学等での研究を経て、2005年より京都大学教授(在宅医療・認知症学分野)に就任。日本認知症学会理事も務める専門医


木下さんからは最初に、アルツハイマー病が起こる原因についての解説が。

「アルツハイマー病は、脳内に『アミロイドβ(ベータ)』と『タウタンパク質』という2つのタンパク質が異常に蓄積することで進行します。まず『アミロイドβ』が神経細胞の周りに少しずつ蓄積し始めますが、この時期はまだ自覚症状がほとんどありません。その後、記憶の中枢である脳の海馬に『タウタンパク質』が蓄積し始め、脳に広がっていきます。このタウタンパク質が引き金となって神経細胞にダメージを与え、認知症の症状を引き起こします。アミロイドβが存在するとタウタンパク質の蓄積が早まりますが、そのメカニズムはまだ解明されていません」

アミロイドβは、症状が出る10~20年ほど前からゆっくり蓄積していくものだそう。当事者が自覚するずっと以前から、アルツハイマー病は少しずつ始まっている、という事実を初めて知り驚きました。

アルツハイマー病は『アミロイドβ』が脳内に溜まることで起こります
アルツハイマー病は『アミロイドβ』が脳内に溜まることで起こります

アルツハイマー病の初期症状として、真っ先に思い浮かぶのが「もの忘れ(記憶障害)」です。ここで判断が難しいのが、それが単に加齢によるものなのか、アルツハイマー病によるものなのか、ということ。

「加齢に伴う“もの忘れ”は単なる『再生の障害』で、脳内にある記憶を取り出すのに時間がかかっている状態です。体験自体の記憶は失われていないので、ヒントがあれば思い出すことができます。一方、アルツハイマー病によるもの忘れは、海馬のダメージによる『エピソード記憶の障害』。新しい情報をインプットして留めることができない状態であるため、自分がとった行動そのものをすっぽり忘れてしまい、同じ話を繰り返したり、同じものを何度も買ってきたりします」と、木下さん。

例えば、「テレビドラマで見た俳優の名前が思い出せない」ということがありますよね。加齢による場合は、一時的に名前を忘れているだけなので、きっかけがあれば、また思い出せます。ですが、アルツハイマー病による場合は、テレビドラマを見たこと自体がすっぽり抜け落ち、忘れてしまうのです。

「買い物をした」という行動を忘れて同じものを何度も買ってしまうなど、買い物の場面でも初期の変化に気づくことができます
「買い物をした」という行動を忘れて同じものを何度も買ってしまうなど、買い物の場面でも初期の変化に気づくことができます

もの忘れについてポイントとなるのが、「直近の記憶を思い出せるか」という点です。当事者やその家族は「昔の記憶はちゃんと覚えているから大丈夫」と誤解しがちですが、アルツハイマー病の初期のもの忘れは「少し前の記憶を思い出せない」のが特徴だと言います。アルツハイマー病の初期症状としては、もの忘れをはじめとして、日付がわからなくなる、繰り返し同じことを聞く、興味や意欲の低下などがあるとのこと。

趣味などへの興味が薄れ、編み物が途中で止まったままになってしまうこともあります
趣味などへの興味が薄れ、編み物が途中で止まったままになってしまうこともあります

「あれ?」と感じたら、早く対応することが大切。進行を緩やかにする新しい治療法も

現在、アルツハイマー病による認知症の進行を完全に止める治療法はありません。ですが、初期段階で対応することで、進行を緩やかにしたり、症状を緩和したりできる可能性がある、というお話も。

「近年、アルツハイマー病の前段階である軽度認知障害(MCI)期から使用できる新しい抗アミロイドβ抗体薬が登場しています。この薬は症状が進行していない段階であるほど高い効果を発揮するため、症状に早く気づいて治療を行うことが何よりも大切です。また、早期診断により家族が対応を学び、介護サービスなどの環境をあらかじめ整えられるというメリットもあります」(木下さん)

「あれ?」と思ったら、まずはかかりつけ医に相談し、専門医を紹介してもらうのが一般的。または、地域にある「認知症疾患医療センター」や「もの忘れ外来」へ。

加えて「専門医に診てもらう場合は、脳神経内科、脳神経外科、精神科などが選択肢として考えられますが、最新の治療薬の投与を担う割合が最も高いのは脳神経内科。近くにあれば最初に受診するのもよいでしょう」とも。

認知症のリスク因子として、難聴、高血圧、糖尿病、アルコールの過剰摂取、肥満、喫煙、社会的孤立、運動不足などが大きくかかわるといわれています。前段階や初期段階からこれらの改善に取り組むことも、進行を緩やかにするために重要だそうです。

会場には、治療法に関する説明がかかれたパネルも
会場には、治療法に関する説明がかかれたパネルも

アルツハイマー病を調べるための専門的な検査についてもお聞きしました。
まず問診、認知機能テスト、血液検査、画像(MRI)検査などを行い、アルツハイマー病の疑いがあれば、脳内のアミロイドβの溜まり具合を調べるアミロイドPET検査(画像検査)や脳脊髄液検査を行います。

親のもの忘れが気になるけれど、本人は受診を頑なに嫌がる……というのも、アルツハイマー病の初期段階によくある困りごと。ということで、木下さんに受診の際のアドバイスも伺いました。

「ほとんどの人が受診を嫌がりますが、放置すると病状が進行して、抗アミロイドβ抗体薬による治療のチャンスを逃してしまいます。本人の拒否感を少なくするため、『アルツハイマー病』『認知症』といった言葉は使わず、『検診の延長として、頭の検診も受けてみない?』とすすめたり、高齢者が高い関心を寄せる『脳梗塞のチェック』を表向きの口実にしたりするといいですね。また、『大きな病院の先生を紹介してもらったよ』という、信頼感を得る誘い方も効果的。家族があきらめずに、あの手この手で声をかけることが大切です」

アルツハイマー病には多様な症状があり、自宅で簡易的にチェックすることも有用です(回答できなくてもアルツハイマー病とは限りません。気になる場合は専門医へ)
アルツハイマー病には多様な症状があり、自宅で簡易的にチェックすることも有用です(回答できなくてもアルツハイマー病とは限りません。気になる場合は専門医へ)

今回、「年のせいじゃない“もの忘れ”展」や木下さんの話を通じて、当事者も、日ごろから見守っている家族や周囲の人も、少しの変化にいち早く気づくことが何よりも大切であることを実感。ちょっとしたもの忘れを感じる程度では、「『病院に行くほどではないかも』『本人に言い出しにくい』と躊躇してしまうかもしれません。ですが、『日常生活は普通に過ごせているけど』『こんな軽い症状で病院に行っていいのかな』という初期の段階こそ、治療に大切な時期」だと、木下さん。

「アルツハイマー病は発症までに10~20年、重度症状に至るまで全体の経過として30年ほどを要する、非常に長い年月をかけて進行する病気です。重要なポイントは、初期はほぼ無症状であることと、原因物質のアミロイドβを早期に抑制できれば、進行を緩やかにできる新しい治療が存在するということ。この新しい治療薬は、症状が進行した中等度以上の方には使うことができません。『まだ大丈夫』と思っている間に適切な治療時期を逃してしまう可能性が十分にあるので、当事者も周囲の人も『あれ?』と感じたら、遠慮なく専門医を受診していただきたいです」

『年のせいじゃない“もの忘れ”展』では、展示を回って謎解きにも挑戦! 全問クリアして記念ステッカーをゲット
『年のせいじゃない“もの忘れ”展』では、展示を回って謎解きにも挑戦! 全問クリアして記念ステッカーをゲット

正しい知識を知って早期に専門医を受診することは、当事者にとっても家族にとっても、これからの人生の時間をより豊かに過ごすための第一歩。「年のせい」と片付けてしまう前に、まずは専門の医療機関を訪ねてみる。その前向きな行動が、大切な家族の笑顔を長く維持することにつながるはずです。

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