また、それぞれの事例を語る視点は、事務員の聡美さんや紬の父、出雲くんや紬、などと章ごとに変わってゆくのも面白い。
「雑誌で連載していた時は、聡美さんの視点で全章書いていたのですが、それぞれの事例を見るのにふさわしい視点があると思い、改稿しました。
『縁が切れる』とはネガティブワードだと思うのですが、実際は切りたい縁ってありますよね。例えば、熟年離婚。よく問題になるのは住居問題で、離婚によって生活レベルがガクッと下がってしまうことがあるんですね。
でも、貧乏してでも自由になりたい、と決心する尊厳ってあると思うんです。諦めずに離婚する時に、どう動くと有利になるかは弁護士にノウハウがあって、そういう現実的なところを書きたかった。マイナスに受けとめられがちな『縁切り』を違う角度から見ることで、悩みを抱えている方の気持ちが、少しでも軽くなるといいなと思います」