性食と書いて、〈せいしょく〉と読む。性と食のあいだに存在する親和性に、誰もがうすうす気づいていながら表立って論じる者はいなかった。なぜだろう。
「食べることも交わることも、人間にとって根源的な、いちばん基本的な行為。とても大切で厳粛なものであると同時に、タブーの観念にも関わってきます」
じつは赤坂さん自身、今までの著作のなかで、性について書いたことは一度もないのだという。
「書いていて自分がとんでもない世界に入り込んでいく予感がありました。これは中途半端にやるとかえって卑猥になってしまう、容赦なくやろうと覚悟を決めました」
絵本から民話や昔話、そして神話へと赤坂さんの思索は、広がっていく。たとえば男女の性的な関係を食べることに例える習慣から、聖アウグスティヌスの「私たちは糞と尿のあいだから生まれるのだ」という言葉まで幅広く奥深く。