出演してきた番組の多くは生放送。久米さんの当意即妙の受け答えを楽しんだ人も多い。
「アナウンサーは美辞麗句を使って表現する職業だという伝統がありますが、生放送ではその時に思いついた言葉がいちばん力があるんです。たとえばサッカー中継で言えば『乾坤一擲のコーナーキック』とか使いたがりますが、僕からすればそれは生きている言葉ではない。『今のコーナーキック、目をつぶって蹴ったぞ』とか言うほうがよっぽど見ている人に伝わる。それが生放送の魅力ですね」
『ニュースステーション』では、話し言葉でニュースを伝えることを心がけたという。
「記者が書いた原稿は音になったときにどう伝わるかを考えていないんです。一回息を吸って吐いたら文章が終わるように短くしたり、『白い洗いたてのシャツ』とあったら『洗いたての白いシャツ』と形容詞を主語の近くに置くようにするとか、それまでのニュース番組で常識だったことを、もっといい方法があるんじゃないかと思っていやになるぐらい変えましたね」
“僕は細かいですから” と言うと見慣れた笑顔を浮かべる久米さん。