でも、ちょっとした風景みたいなものは残っている。例えば、母は大根を切る時に、最初に一枚だけ薄く切って、そのまま食べる。それからうーん何にしようかな、とか言って。それを私はなんとなく再現しちゃうんです。そういう習慣的なことを、娘っていうのは継いでいくものなのかもしれません」
そして、“だいたい”という言葉にも馴染みがあった、と続ける。
「昔、娘時代にお菓子作りに夢中だった頃があって。オレンジババロアを作って友だちにプレゼントしたら『おいしかったからレシピを教えて』って言われて。卵白はこうとか書いていって、『だいたいこのくらいの硬さになったら』とか『だいたいこのくらい砂糖を入れたら』とか書いていたらしいの。そしたら彼女が『あなたのレシピってほとんど“だいたい”だからわからない』って(笑)。その頃から私は“だいたい”なんでしょうね」