体からの小さなSOSを見逃さない。セルフコンディショニング事典【鼻・口・喉】
イラストレーション・黒木雅巳 文・小沢緑子
「中医学では、夏疲れは胃腸が弱り、『気(生命エネルギー)』が不足してエネルギー切れに陥ったり、体に余分な水分(痰湿)が溜まり重だるく感じる症状が代表的と考えます」と、国際中医薬膳管理師の久保奈穂実さん。また、汗をかく夏は、汗の中に含まれる「気」と「血(潤いと栄養)」も水分と一緒に失われる。さらに外と冷房が効いた室内の温度差が激しいことも疲れに拍車をかけ、一年のうちでもバテやすい時季という。「すると体の中の『気・血・水』のバランスが崩れ、さまざまな部位にSOSが現れます。それを見逃さず、早めに対策をとることが大切」。気になるサインと対策を紹介します。
▶ 鼻
【サラサラした透明の鼻水が出る】
「サラサラした鼻水は、夏の冷房による影響などで体が冷えているサイン。秋に向けて空気が乾燥し始めると急激に鼻の奥も乾燥し風邪に発展することもあるので、汗をかいて体の中から冷えを追い払いましょう」。お風呂で湯船に浸かるほか、料理に生姜、しそ、ねぎなどの香味野菜やスパイスを使い発汗を促す方法も。「おすすめは、ゆかりとおろし生姜にお湯を注ぐだけの即席スープ。すぐに体が温まってきます」
【ドロッと粘り気のある黄色い鼻水が出る】
この症状がある場合は、「体に熱がこもった状態。夏の間の食生活が原因であることが多く、揚げ物やお酒が好きな人に多くみられます」。対策は、まず揚げ物や辛いものなどは控え、体の「湿熱(しつねつ/余分な水分と熱)」を取る効果があるもずくやワカメ、ひじき、海苔などの海藻類や、もやしを意識して摂取して。「もずく酢やめかぶはそれだけで一品になりますし、もやしは手軽なナムルにするのもいいですよ」
▶ 口
【唇がカサカサする】
夏バテの主原因・胃腸が弱ったサインは、口元に現れやすい。「胃腸が弱ると摂った水分や栄養が全身に行き届かなくなり、体内が乾燥します。すると唇は皮脂腺がない分、ほかの皮膚より乾燥が早く進んでしまいカサカサしやすくなるのです」。甘いもの、揚げ物、辛いもの、冷たいものは控え、「山芋のすりおろしを味噌汁に入れるなど、胃腸に優しい食べ方を」。
【口の中をよく噛む】
口の中をよく噛むのは胃腸が弱っているサイン。「体に余分な水が溜まって重だるく感じる『痰湿』タイプの夏バテの場合、口の中がむくんで噛みやすくなることがあります。また、噛んだことにより口内炎になることも」。対策は、スープやおかゆなど温かくて消化にいいものをよく噛んで食べる、が基本。「豆には胃腸を元気にして水を排出する力があるので黒豆茶や小豆茶を取り入れても」。また、ツボ押しも効果的。「脚の膝の外側あたりにある〈足三里(あしさんり)〉は胃腸が整うツボ。拳でトントン気持ちよく叩きましょう」
【歯ぎしりをする】
「歯ぎしりはストレスが原因。食いしばりも同様で、ともに顎に痛みが生じたり、場合によっては歯が欠けてしまうことも」。手軽にできるストレスを取り除く方法で対処。「アロマなどの好きな香りをかぐことで、浅くなりがちな呼吸を深めましょう。眠れないときは就寝前にツボ刺激を。足にある〈太衝(たいしょう)〉、手のひらの中央にある〈労宮(ろうきゅう)〉がストレスに効くツボで、頭にカーッと上った気をスッと下ろします」
▶ 喉
【よく咳払いをする】
「よく話しながら咳払いをする人がいますが、実はあれはストレスを感じているサイン。症状が進むと『喉にころっとした塊がある』ような違和感を感じてしまうことも」。漢方の「半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)」が特効薬というが、「日常ケアでは柑橘、ミント、ティートゥリーなどの精油をタオルやマスクにつけてかいだり、香りのいいハーブティーを飲んで気を巡らせて。普段よく目にする場所に植物を置いたり、窓際から自然を眺めたりとグリーン効果でリラックスするのもいい方法」。
【痰がからみやすい】
体の中に余分な水分が溜まる「痰湿」は、喉の症状にも影響。「痰湿の場合、胃腸が弱ることで水を排出しにくくなり、喉にも痰がからみやすくなります」。防ぐには、胃腸に負担のかかる食生活は避け、痰を溜め込みやすい脂っこいもの、甘いものを控えること。「体内の掃除をする海藻類を摂って排出させましょう」
【空咳が出る】
「秋の始まりは空気の乾燥による不調が増えます。ケホケホと咳が出る空咳は、肺が乾燥して弱っているのが原因」。改善策は肺を潤す白い食材(豆腐、白菜、えのきたけ、蓮根、梨、りんご、白ごまなど)を摂るほかにツボ押しも。「鎖骨の中間あたりにある〈天突(てんとつ)〉を押すと咳がおさまってきます」
〈舌で健康状態をセルフチェック〉
中医学では、舌は内臓と直結し胃腸の調子が出やすい場所。舌を日々の体調を測るバロメーターに活用したい。
【舌】
「健康な舌はきれいなピンク色で、白い苔がうっすら全体についています」。舌や舌苔の色や状態は、日々変わるので鏡でチェック。
①舌の色
□ 白色
血が足りない「血虚」の状態。疲れ、冷え、不眠、落ち込みなどの症状が出やすい。補血のために赤い食材、黒い食材を積極的に。
□ 赤色
体に熱がこもり潤いが足りない「陰虚」。ほてりやのぼせが現れやすい。きゅうり、トマト、豆腐など潤いをもたらす食材を摂ろう。
□ 紫色
血が滞る「瘀血(おけつ)」。生理痛、頭痛、夏は冷房で冷えることで首肩周りのこりも出やすい。サバ缶、ねぎ、酢など、活血食材を意識的に。
②苔の色
□ 白色
体が冷えていたり、水分が溜まっている「痰湿」。水分代謝を促し胃腸を温める食材(とうもろこし、大豆、大根、きのこなど)を。
□ 黄色
体に余分な水分と熱がこもった「湿熱」。湿と熱の両方を取り除く海藻類、こんにゃく、大根、もやし、春雨、あさりなどが効果あり。
③舌の状態
□ 歯形がついている
舌の側面に歯形がある場合、2つのタイプが。舌がぽてっとむくんでいたら余分な水分が溜まった「痰湿」。脂っこいものや甘いものを避けて。ハリがなくたるんでいたらエネルギー不足の「気虚」。芋類や豆類を取り入れて。
□ 裏側に静脈が見える
舌の裏側に静脈がポコッと浮き上がって見える場合、血の流れが滞っている「瘀血」の状態に陥っている。舌が紫色の場合と同様、血の巡りをよくする活血食材を摂ろう。
『クロワッサン』1173号より
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