【大人のデジタルヘルスケア】AIを使ってメンタルケア──健康寿命を延ばし、心も安定
撮影・北尾 渉 イラストレーション・えだようこ 構成&文・中條裕子
AIを使ってメンタルケアをするという方法もあります
メンタルケアにおけるAIの活用の可能性に注目し、自らも対話を実践している、精神科医の益田裕介さん。益田さんいわく「使い方としてはまずは気軽に愚痴を話すことから始めるといい。思っていることを吐き出すとスッキリするし、何が問題なのかが可視化されます」。その具体的なやり方と、使うコツについて詳しく聞いてみた。
Q. メンタルケアをAIにしてもらうと何がよいの?
日頃から悩みごとを抱えているとストレスや疲労に繋がって、うつや不安を生んでしまいます。どこに問題があるのかを整理、可視化しないといけないけれど、一人で把握するのは大変だし、なかなか他人には話しにくい。そうした時こそAIにアシストしてもらい、さまざまな問題をいっぺんに書き出してみるといいでしょう。AIは似たような情報を整理するのが得意。心に溜まっているものをまずは脈絡なくバーッと話し、最後に「どこに問題があるのか分類し直して」と伝えてください。とりあえずなんでも話してみると、その後に分類してくれます。家族の問題はこれとこれ、お金の問題はこれ、仕事の問題はこれですね、と。問題がはっきり見えてくると、それだけで気持ちもスッキリするものです。
Q. メンタルケアに使うAIは、どのように選んだらよいの?
会話型AIアプリには、それぞれに性格があります。AIは各企業が不適切なことを言わないよう調整をかけていて、犯罪や差別に繋がるようなことは答えない。その調整に各社のカラーが出ているんです。たとえば、ChatGPTは会話で寄り添うのが得意だけど、褒めすぎるきらいがあります。Geminiはおもしろみには欠けますが、中立的。Claudeは哲学的で理屈っぽく、技術的なことが得意。Xで使えるGrokは冗談が多く、やんちゃな感じ。そうした違いや性質をわかったうえで、好きなものを選ぶといいでしょう。ただし、あくまでプログラミングなので信用しすぎないこと。私はAIが間違ったことを言っていないか、別のAIにチェックしてもらったり、意見をもらうこともあります。
〈代表的な会話型の生成AIの特徴〉
会話で寄り添うのが得意。
おもしろみはないが中立的。
口調が優しく、技術的なことが得意。
Xで使える。冗談が多い。
Q. メンタルケアでAIに話しかけるには、どうしたらよい?
まずは、なんでも悩みを話してみることです。できるだけ話が具体化するように持っていくと、納得できる答えを得られることが多くなります。たとえば、介護問題について話す場合。施設に入居するのか、自分で介護をするのか。そうしたことをAIに話すと、「施設に入居する際は何がネックですか?」と聞いてくる。「お金と気持ちの問題になります」と答えたとすると、「ではまずお金の問題を整理しましょう」となる。その点が解決できたら、あとは「きょうだいに会ってみたら」「その時はこんな話題をしてみてください」といった流れになるかと思います。介護に限らず、どんな話題でも基本的にAIには古今東西の膨大なデータがありますから、私たちの抱えている悩みは大抵解決できます。
Q. 少し慣れてきたらおすすめの、AIメンタルケアは?
AIにインタビュアーになってもらい、自分のことを語って自分史を辿ってみましょう。その際には「自分史を作りたいので、今からあなたはインタビュアーになって」と、AIに役割を伝えてください。世の中には、答えの出てこない問題というのがあります。たとえば、離婚するかしないか。これには正しい答えはなく、するメリットもあれば、しないメリットもある。こうした究極の選択は、AIに聞いてもわからない。決断するのは自分です。お金を優先するのか、自由が大事なのか。自分なりの価値観を明らかにするには、生い立ちから自らを語り直すことが必要となってきます。自分のことを改めて語ってみると、なるほどと感じることが多いはず。そのようにして自分を知ることで、心が強くなって悩まなくなります。
Q. 注意しなくてはならないことはありますか?
AIをメンタルケアに使う際には、いくつか留意する点があります。とにかく褒めたり、肯定しすぎるので、気をつけること。つい長く使って睡眠時間が減ってしまうのもよくない。そして、人間のように言葉を返してくるので、恋人みたいに思ってしまう人も。AIは人間ではないということは、しっかり意識しないといけません。また、いかにももっともらしく誤ったことを言う場合もあるので、AIは間違える可能性があることを常に疑う必要もあります。人間と会話するよりAIは楽なので、今度は人間と話すのが億劫になることも。そうしたリスクがあることを踏まえ、睡眠時間が減っていたり、周囲から異変を指摘されるなど、使っていて不安を感じたら専門家に相談するようにしてください。
〈メンタルケアを助けてくれるアプリ応用編〉
心の専門家が開発したアプリ。一日の始まりと終わりに、体と心のアイコンをタップし、日々の自分の感情や心の状態を記録して可視化。また、認知行動療法に基づいた方法で、もやもやした出来事と自分の感情を書き出し、客観的に見つめ直すことができる。
『クロワッサン』1171号より
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