からだ

海藻が体にいい理由5つ、腸内環境を整える食物繊維のほかにもおまけがいっぱい。

きのこ、根菜、豆類など、食物繊維を多く含む食材はたくさんあるけれど、なかでも一番のおすめは海藻だ。
なぜって? そのワケは……海藻に詳しい宮下和夫さんに聞きました。
理由を知ったら、きっともっと食べたくなる! 
  • 撮影・青木和義(カノウユミコさん、料理) 文・葛山あかね 

海藻5つのカラダにイイこと

(1)食物繊維が豊富。
● 腸管で多くの水分と結びついて便のかさを増す。
● 塩分、重金属などの有害物質の排出。
● 腸内細菌のエサになる。

(2)ミネラルが豊富。
● 人が必要とするミネラルをほとんど含む。
● とくに多く含まれるカリウムには、心臓や筋肉機能の調整、塩分の排出、高血圧や脳卒中の予防機能が。

(3)たんぱく質は卵や乳製品に匹敵。
● 海藻には健康なカラダづくりに欠かせない必須アミノ酸(体内では作れないたんぱく質の構成物質)がバランス良く含まれている。
● 旨味成分になるアミノ酸も豊富。

(4)機能性に優れた不飽和脂肪酸が豊富。
● 血流、血管の健康に大切な役割を果たすEPA、ステアリドン酸、アラキドン酸を含んでいる。

(5)わかめやアカモクには注目のフコキサンチンが豊富。
● カロテノイド(天然色素)のひとつ、フコキサンチンには抗肥満、抗糖尿病作用がある。

より効率的に食物繊維が摂取できる。

「海藻のメリットはなんといっても食物繊維が多いこと。種類によって含有量は異なりますが、乾物重量で最低でも30%、多くて60%もの食物繊維が含まれています。おそらく我々が食べる食品のなかで、最も多いのではないでしょうか」と宮下和夫さん。

海藻は大きく、褐藻類と紅藻類、緑藻類の3つに分類され、今回取り上げる海藻はすべて褐藻類に分けられる。フコイダンやアルギン酸など海藻ごとに含まれる食物繊維はそれぞれ違い、異なる機能をもつものの、いずれも腸内環境を整える頼もしい味方だ。

「またほかの食材に比べて、ダントツに多いのがミネラル分。カルシウムやマグネシウムなど人間が生きるために必要なミネラルが海藻にはほとんど含まれています」

なかでも多いのがカリウム。塩分(ナトリウム)の排出を促し、高血圧や循環器系疾患の予防に有効であることはおなじみである。

実は、優秀なたんぱく源である。

驚いたのは、海藻にはたんぱく質が豊富に含まれていること。

「実は、食物繊維やミネラルに次いで3番目に多いのがたんぱく質。しかもアミノ酸スコアが非常に高いのが特長です」

アミノ酸スコアとは人間に必要なたんぱく質を形成する必須アミノ酸がいかにバランス良く含まれているかを表す指標であり、点数が高いほど有用とされている。たとえば卵や牛乳は100点。玄米68、小麦粉44、野菜も大抵50点台と低めである。では海藻は?

「ほぼ80点以上。昆布は82、海苔は91、わかめに関しては驚きの100点なんです」

抗肥満効果をもつフコキサンチンとは?

ほかにも機能性に優れた不飽和脂肪酸など、健康を守る成分が多様に含まれるが、ここで注目したいのはフコキサンチン。宮下さんが20年以上の研究を経て、その効果を導き出した成分である。

「これは、わかめやアカモクなどの褐藻類にだけ含まれるカロテノイド(色素成分)。血糖値の上昇を抑制したり、代謝を活発にして内臓脂肪を燃やすなどの働きがあり、結果的に抗肥満や糖尿病の予防・改善に有効。さらに腸の過敏症やアトピー性皮膚炎など免疫バランスが崩れることによって生じるさまざまな炎症を予防してくれる働きにも期待をもっています」

聞けば聞くほどすごい海藻パワー。そこで次は無理なく、おいしく味わう知恵と工夫を教わった。

固定観念を取っ払い、もっと自由に楽しむ。

海藻というとどうしても、味噌汁や煮物、酢の物といった和食ばかりが思い浮かぶけれど、

「それだけではもったいない!」と料理研究家のカノウユミコさん。

「海藻はクセのない野菜と思ってください。たとえば、わかめは生野菜として、昆布は根菜的なイメージでとらえてみると使い方が広がるのではないかしら」

なるほど。わかめはそのままサラダになるし、昆布は煮込み料理にと連想することができる。

「それにクセのない海藻は、だからこそ多様にアレンジができます。オリーブ油やトマト、ミルクなどともなじみがいいし、スパイス類との相性も抜群。まずは、これまでの固定観念を取っ払っうことから始めてみましょうか」

しかも私たちが手にする海藻は、すでに加工してあるものばかり。

「水で戻すくらいで、あとは手間いらず。簡単に調理できますから、使わない手はないでしょう?」

海藻使いのお約束! 乾物を水で戻すときは商品に表示された浸水時間をきっちり守ること。海藻本来の味や香り、食感が実感できる。
宮下和夫

宮下和夫 さん (みやした・かずお)

帯広畜産大学 産学連携センター 特任教授

アカモク研究の第一人者。海藻に含まれる色素成分・フコキサンチンの効果・効能を解明したことは世界的に有名。好きな海藻料理は生の岩海苔を豆腐と煮込み、醤油で味つけした鍋。※プロフィールは雑誌掲載時の情報です。

カノウユミコ

カノウユミコ さん

料理研究家

鳥取県出身。海の近くの町で育ち、幼少期から海藻は常に身近な存在。精進料理やベジタリアンに興味を持ち始めてからは、海藻の実力に改めて着目。変化に富んだ多彩な料理を提案してくれる。※プロフィールは雑誌掲載時の情報です。

『Dr.クロワッサン 強い腸をつくる、発酵食の摂り方大百科。』(2021年2月18日発行)より。

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