血流改善や腸活、キムチの健康効果、賢い食べ方、献立のヒント【発酵食大図鑑】
撮影・青木和義、黒川ひろみ 文・韮澤恵理
乳酸菌とヤンニョムが発酵食の相乗効果を。
キムチといえば、唐辛子の赤い色が特徴的な白菜キムチが浮かぶと思いますが、これはペチュキムチといいいます。
朝鮮半島で寒い時期の野菜不足を解消するために発展した乳酸発酵漬け物がキムチで、各地で多くの種類が作られています。唐辛子を使わないものもあります。
白菜キムチは塩で下漬けした葉の間に、ヤンニョム(後述)をはさんで熟成、発酵させたもの。野菜の乳酸菌が繁殖し、たっぷりの乳酸を作るので酸っぱい味になり、これが腸を弱酸性にしてくれます。
乳酸菌そのものも善玉菌を支え、腸内環境を整える働きがあります。ビタミンB群が豊富なので、エネルギー代謝もよくなります。
ヤンニョムにはにんにくやねぎなど、硫化化合物を含む野菜が使われ、アミの塩辛や魚醤など、すでに発酵させた材料も加わることから、発酵食の相乗効果が得られます。
赤いキムチにたっぷり使う唐辛子にはカプサイシンという辛味成分が豊富で、毛細血管を拡張して血流をよくし、末端まで栄養や酸素が運ばれるので、冷えや血行不良による不調を改善したり、内臓の健康を支える効果があります。
赤い色は唐辛子の色素成分カプサンチン。活性酸素による酸化を防ぎ、細胞の老化を抑えてくれる働きがあります。
キムチに使う唐辛子は驚くほどの量ですが、一味唐辛子などとは違う種類で、比較的辛さは弱め。だから真っ赤になるほど加えても大丈夫なのです。
発酵食としての健康効果と、辛味による血流改善、色素の抗酸化効果が体を支えるのがキムチです。
(注目の健康効果)
●増腸内細菌を応援
野菜由来の乳酸菌が旨みたっぷりの漬け汁の中で糖やでんぷんをエサに活動し、酸っぱい乳酸を作る。菌は腸にまで届いて善玉菌を応援。
●唐辛子で血流改善
いろいろな唐辛子をたっぷり使うキムチは、辛味成分カプサイシンが末梢の血流をよくし、代謝を上げる。赤い色素は抗酸化成分。
●ビタミンが大幅増
発酵によって乳酸が生まれるとともに、ビタミンB群も大幅に増えるので代謝が上がり、栄養を効率よくエネルギーにする助けに。
【キムチができるまで】
(A)まず白菜を塩で下漬けして水分を出し、味が染み込みやすくする。
(B)自然に野菜についていた乳酸菌や酵母が加わる。
(C)唐辛子とアミの塩辛、りんごなどの材料を混ぜた旨み調味料を葉にはさみ込む。
(D)乳酸菌が酸味を生み、ビタミンが増加。ヤンニョムがなじんで独特の旨みを作る。
(賢い摂り方)
●乳酸発酵させた本物を
キムチに期待したいのは豊富な乳酸菌の働き。韓国では、乳酸発酵させたものしかキムチを名乗ることができません。日本では浅漬けを唐辛子調味液で味つけした製品もあるので見極めが大切。といっても、表示を見てもわかりにくいのですが、韓国産の本格的な発酵キムチにだけ表示が許される「キムチくんマーク」は一つの目安になります。
韓国食品を扱う専門店などでは手作りの本格キムチを扱っていることも多いので、探してみても。ネット通販などでも販売されています。
●乳酸菌をムダなく活用
乳酸菌が生きているキムチでは、乳酸菌が活動を続けますから、熟成するほど酸味が増すのが特徴です。買ってきたキムチが酸っぱくなっていくことがありますが、傷んでいるわけではありません。酸っぱいのが好きなら、賞味期限ギリギリまでおいてもいい。ただし、開封したら早く食べきりましょう。
キムチを食べ終わるとたっぷりと漬け汁が残ることがあります。この汁には乳酸菌を始め、多くの健康成分が含まれていて捨ててしまうのはもったいない。チャーハン、汁物、鍋物などの味つけに活用すれば全部ムダなく使いきれるので試してみてください。
[オイキムチ]
きゅうり(オイ)を使ったキムチ。一口サイズのほか、オイソバギと呼ばれる、きゅうりに切り込みを入れて、ヤンニョムであえた具をはさみ込んだものもある。いずれも比較的浅漬けで、歯ざわりを楽しむ。きゅうりのカリウムも豊富。
[カクテキ]
大根を使ったさっぱりとして歯ごたえのあるキムチ。大根を塩で下漬けして水分を抜き、塩気を洗い落としてからヤンニョムに漬けて発酵させる。歯ごたえがあるので食べすぎ防止にも役立つ。
[水キムチ]
唐辛子を使わず、塩水に果物や穀類の糖分を加えて、野菜の乳酸菌で発酵させる漬け物。辛味がないので誰にでも食べられ、圧倒的な乳酸菌の量を誇る。漬け汁に乳酸菌がたっぷりなので汁まで余さずに使いたい。残り汁は冷麺のスープにしたり、汁物としてムダなく活用するといい。
(気をつけたいこと)
ほかの漬け物同様に塩気が多いので、塩分の摂りすぎには気をつけたい。キムチだけでご飯を食べるような食べ方はあまりおすすめできません。キムチ以外のおかずの塩分を控え、食事全体で調整しましょう。
(おすすめ献立)
キムチを漬け物として食べるなら、肉や魚のおかず、野菜、汁物などを組み合わせるとバランスがいい。納豆を混ぜたり、冷奴にトッピングするなど、キムチを調味料がわりにしても。海藻やきのこの副菜を添えるのがおすすめ。
(ヤンニョムは健康調味料)
ヤンニョムとは、韓国の合わせ調味料の総称ですが、キムチを漬ける調味液を指すことが多い。唐辛子ににんにくや生姜、魚醤、アミの塩辛などを加えたもので「薬念」と書き、薬食同源の考えに基づいています。
韓国では各家庭に伝わるヤンニョムがあり、市販品でも店ごとに独特の味があります。
Cooking idea|汁まで食べたいキムチの健康レシピ
乳酸菌をたっぷり含み、旨みの宝庫でもある漬け汁まで余さずに食べられてヘルシーなレシピです。
キムチ鍋
豚肉とキムチを油で炒め、だしを加えて野菜やきのこ、肉、魚介類、豆腐などを煮る。最後は醤油や味噌で仕上げて。たっぷりの野菜や豆腐が食べられるので、バランスがよく、体も芯から温まる。
豚キムチ
豚肉と玉ねぎをフライパンで炒め、キムチを加えて炒め合わせる簡単炒め物。キムチや豚肉に豊富なビタミンB群を効果的に摂るために役立つ硫化アリルが含まれる玉ねぎを組み合わせた体にいい料理。同じく硫化アリルが豊富なにらやにんにくをプラスするとさらにいい。
キムチ麺
キムチの栄養を、手軽な麺類と組み合わせるのもおすすめ。ラーメンにたっぷりキムチをトッピングしたり、うどんやそうめんをキムチで炒めるのも目先が変わる。ただし、キムチの塩気の分、調味料を控えて塩分を調整して。
『Dr.クロワッサン 強い腸をつくる、発酵食の摂り方大百科。』(2021年2月18日発行)より。