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腸の健康を支えるぬか漬け、ぬか床の作り方や管理方法、注目の健康効果【発酵食大図鑑】

【乳酸菌】【酪酸菌】【酵母】
乳酸菌と野菜が同時に摂れる!自宅での発酵生活。
  • 撮影・青木和義、黒川ひろみ 文・韮澤恵理 

ぬか床を作れば2つの菌が摂れる。

ぬか漬けは自宅で簡単に発酵生活が始められる身近な存在です。ぬか床を作れば、そこに乳酸菌がすみつき、世代交代を繰り返すので、ずっと健康を支え続けてくれるのが魅力。

ぬかは玄米を白米に精米する際に取り除かれる外皮で、ビタミンB1と食物繊維がたっぷり。乳酸菌は野菜の表面などに自然に存在するので、ぬか床にくず野菜を下漬けすることで菌がぬか床に移り、繁殖を始めます。

塩で雑菌の繁殖を抑え、乳酸菌が気持ちよく暮らせれば、野菜にもたっぷり吸収されて日々乳酸菌が摂れます。野菜の栄養素もしっかり得られるので、相乗効果があります。

おいしくて体にいいぬか床を育てるには、日々の手入れこそが大切です。ぬか漬けの健康効果は乳酸菌が摂れることですが、実はぬか床に住んでいるのは乳酸菌だけではありません。

手入れを怠ると表面に繁殖する白いカビのような産膜酵母、容器の底のほうにたまる臭い酪酸菌もぬか床の住人。

特に酪酸菌は悪玉菌を攻撃したり、腸壁の細胞を守る酪酸を作る菌なので腸の健康に密接に関係する菌ですが、酸素が嫌いなので食べ物からはほとんど摂れません。

このことからもぬか漬けは別格な発酵食です。ただし、いずれも増えすぎるとぬか漬けの味が落ちます。毎日上下を返すように混ぜて、ぬか床内の菌のバランスを保つことが重要です。

乳酸菌によるほのかな酸味と健康成分、ぬかのビタミンB1が野菜に適度に染み込んでいるのがベスト。ちょうどいい塩梅に漬けることが大切です。

(注目の健康効果)

●増えた乳酸菌が野菜に吸収
野菜についている乳酸菌がぬか床で増え、漬け込んだ野菜に再び吸収されるので、元気に活動中の乳酸菌が毎日摂れる。

●酵母や酪酸菌も豊富
発酵食の中でもめずらしく空気を嫌う酪酸菌が生息する。乳酸菌、酵母、酪酸菌がバランスを取り合って腸の健康を支えてくれる。

●ビタミンB1が増える
米の外皮であるぬかのビタミンB1が野菜に吸収されることで、生の野菜の10倍にも。糖をエネルギーに変えるのを助ける。

【ぬか床とぬか漬けができるまで】

(A)野菜の表面などに自然についている乳酸菌がぬか床で繁殖する。

(B)ぬか床の塩分で野菜の水分が抜け、乳酸菌をたっぷり含むぬか床の成分が染み込む。

(C)乳酸によって酸っぱい味に。ぬか床内で活動していた生きた乳酸菌もたっぷり摂れる。

(賢い摂り方)

●毎日漬けて日々食べる。
ぬか床を元気にするためにも、こまめに乳酸菌を摂るためにも、毎日漬けてかき混ぜるといい。時間がなくてそこまでは無理という人は、冷蔵庫で漬けると菌の活動がゆるやかになり、好きなときに漬けることができます。

栄養豊富でおいしい、旬の新鮮野菜を漬けることも大切。なすやきゅうりなどの実野菜と、大根やにんじんなどの根菜では歯ごたえも味も異なるので、いろいろな野菜を漬けて目先を変えると飽きずに続けられます。

●ぬか床とうまく付き合う
ぬか床は管理が一番のポイント。酵母や酪酸菌が増えすぎないように混ぜるのはもちろん、塩分が多くなったらぬかを足す、水っぽくなったら水気をとるなど、こまめにめんどうをみて、よい状態を維持しましょう。

とはいえ、ぬか床は案外タフ。白い酵母で覆われても、白い部分を捨ててよくかき混ぜればリカバリーできるし、少々のカビなら、その部分を捨てれば大丈夫。

本物のたくあん漬けは実はぬか漬けの一種。干した大根をまるごとぬか床に漬けたもので、大根の辛味成分が分解されて黄色くなる。

ぬか床を作ってみよう

簡単な温度管理で、失敗なく作れるレシピです。

【材料(作りやすい分量)】
ぬか …… 1kg
水 …… 1L
塩 …… 150g(ぬかの重量の15%)
赤唐辛子、昆布、くず野菜 …… 各適量

【作り方】
1.
分量の水を沸騰させ、塩を加えて溶かしたら冷ます。
2.ボウルにぬかを入れて1を加え、しっかり混ぜる。ぬかがまとまってきたら手でこねるように混ぜ、清潔な保存容器に移す。
3.唐辛子と昆布をキッチンばさみで切って加えて混ぜ、空気を抜くようにならす。ぬか床をならすために、くず野菜を数回捨て漬けにする。冷蔵庫で保存する。

【手入れ】

1日1回程度、底から上下を入れ替えるように混ぜる。水分が増えたら、キッチンペーパーで吸い取るか、ぬかを足す。雑菌が繁殖しないように辛子粉を加えても。

体にいいぬか漬けの漬け方

野菜は洗って表面に塩をつけてこすり、皮に細かい傷をつけると、ぬか床の成分が内部に浸透しやすい。

よく混ぜたぬか床に埋めるようにして漬ける。きゅうり1本で半日くらいが目安。

取り出して表面のぬかを落としてから洗う。

(気をつけたいこと)
いいことばかりのぬか漬けですが、漬けすぎると塩分が野菜に吸収されるのが難点。水に漬けて塩抜きしますが、せっかくの有効成分も抜けてしまうので食べごろを把握しましょう。夏は冬より漬け時間が短くなります。

(おすすめ献立)
野菜と乳酸菌を摂れるので、ご飯と味噌汁、納豆の朝食は高得点。炭水化物とたんぱく質がバランスよく食べられます。ぬか漬けを漬けすぎたら、細かく刻んで納豆に加え、その分たれを減らせば、乳酸菌はムダにせずに塩分調整に。

(ぬか床は熟成がポイント)
作りたてのぬか床は塩分が強く感じられて乳酸菌も少ないため、捨て漬けを繰り返して野菜に付着している乳酸菌をぬか床で繁殖させ、熟成させる時間が必要です。最近はあらかじめ発酵させたぬか床も市販されています。毎日かき混ぜなくても大丈夫なものもあります。

市販の発酵ぬか床。買ってきてすぐに使える。袋のまま漬けられるもの、冷蔵庫で保存できるものなど種類も豊富。

Cooking idea|漬け過ぎたら塩けを調整して

長時間漬けてしょっぱくなってしまったぬか漬けは、そのまま食べると塩分の摂りすぎに。薬味などでかさ増しし、食べすぎないようにするといい。ソースやドレッシングにアレンジしてもおいしいです。

古漬けの生姜あえ

ぬか漬けはいつもより薄切りにし、必要なら水につけて塩抜きする。生姜をせん切りやみじん切りにしてたっぷり加えると塩分調整に。おろし生姜でもいい。

ぬか漬けタルタルソース

古漬けはみじん切りにし、マヨネーズと和えるとピクルスのようなアクセントに。旨みと酸味、乳酸菌効果が加わるので、フライのソースやサンドイッチにも活用したい。

『Dr.クロワッサン 強い腸をつくる、発酵食の摂り方大百科。』(2021年2月18日発行)より。

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