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疲労回復や美肌、腸内環境の改善に。甘酒の健康効果と簡単な作り方、活用レシピ【発酵食大図鑑】

【麹菌】
米麹が作る自然な甘味が体に優しい発酵食。
  • 撮影・青木和義、黒川ひろみ 文・韮澤恵理  

糖とビタミンの効果で飲む点滴と呼ばれる。

甘酒は江戸時代から庶民の間で夏バテ防止に役立つ飲み物として愛されてきました。暑い時期には夏バテ対策に甘酒売りが街を回っていた記録もあります。

甘酒はご飯に米麹を加えて酵素の力ででんぷんをブドウ糖に分解し、体への吸収を高めたもので、点滴同様、即効で元気になるのは理にかなっています。

さらにビタミンB群が豊富なので、糖をすぐにエネルギーに変え、疲労回復を助けます。糖は脳の働きと直結していますから、朝一杯の甘酒を飲めば、午前中から脳がしっかり働き始めます。さらに皮膚の代謝をよくする効果から、美肌を保ち、肌トラブルの改善効果もあります。

麹菌はでんぷん分解酵素、たんぱく質分解酵素の2種類の消化酵素を作り、食べ物の消化を助けます。下ごしらえに使えば肉や魚を柔らかくするというメリットがあります。

いずれの消化酵素も腸でアミノ酸に分解されてしまいますが、体が消化酵素を作る負担を減らしてくれることにもなります。結果的に体内で他の酵素を効率よく作る手助けをしているともいわれています。

麹菌は腸にすむ菌ではありませんが、乳酸菌やビフィズス菌、酪酸菌など善玉菌を応援し、酢酸や体にいい短鎖脂肪酸を作るのを助ける酵素を作ります。米の食物繊維とともに、腸内環境改善に役立つのです。

また、食物繊維にはさまざまな成分を抱き込む働きがあるのですが、甘酒を通して行われた最近の研究では胆汁を抱き込んで排出し、胆汁の原料であるコレステロールを消費するので、血中コレステロール値が下がったり、ダイエット効果があることもわかってきています。

(注目の健康効果)

●疲労回復の特効食
甘味成分のブドウ糖は吸収が早く、豊富なビタミンB群が糖を素早くエネルギーに変え、疲れている時や運動の前後に効果がある。

●腸内環境の改善
米と麹の食物繊維がそのままたっぷり含まれていて、さらに麹も善玉菌の活動を助ける物質を作り、腸内環境がぐんと改善される。

●酵素が消化を助ける
麹が大量の酵素を作るので、米のでんぷんやたんぱく質だけでなく、食材の消化を助ける働きがあり、胃腸の負担を軽くしてくれる。

【甘酒の作り方】

(A)ご飯のでんぷんを分解して糖を生み出す(糖化)。

(B)甘味が生まれ、ビタミンB群、アミノ酸も豊富に。食物繊維も豊富。

[市販品いろいろ]

甘酒は発酵による甘味を楽しむ飲み物ですが、濃度、口当たり、味は多様です。米や米麹の種類、量、使っている水で味わいが変わり、粒感なども異なるので、いろいろ試してみてもいいのでは。原料が米と麹または麹だけで、他のものが添加されていないものを。

(賢い摂り方)

●1日200ml程度を毎日
1日200mlくらいを目安に毎日飲むのがおすすめです。朝食に一杯の甘酒を飲めば、一日元気に過ごせるはず。疲れたなと感じた時に飲むというのもいい方法。効果抜群なので、スポーツや試験の前など、体や脳を使う時のエネルギーチャージにもなります。

●下ごしらえや調味料に
麹が生んだ消化酵素を活用するなら下ごしらえや調味料として活用するのもいい方法。肉や魚を漬けて柔らかくしたり、野菜を漬けて甘味を足すのもいい。刺し身にからめたり、ドレッシングに加えるのも実はおいしい食べ方です。いずれも旨みと甘味、消化をよくする効果が感じられます。

(気をつけたいこと)
甘酒は糖分なので、体にいいからと飲みすぎれば肥満の元になります。吸収がいいので、大量に一気飲みすると血糖値の急上昇を招くことも。血糖値が気になる人は、数回に分けて飲みましょう。お茶などで割ると少量でも満足。

(おすすめ献立)
朝食に甘酒&フルーツはいい組み合わせ。ビタミンと食物繊維が補えます。砂糖の代わりに甘酒を味つけに使うとヘルシー。無理なく効果が得られます。アレンジドリンクでティータイムにすれば、砂糖を使った甘い物を控えることも。

炊飯器の保温で

簡単な温度管理で、失敗なく作れるレシピです。

【材料(作りやすい分量)】
米麹 …… 200g
おかゆ …… 米1合分
水 …… 400〜900ml

【作り方】
1.
おかゆは米1合に対し、水750mlくらいで炊き、炊飯器に入れて水を加え、55〜60度くらいまで冷ます。
2.ほぐした米麹を加えてよく混ぜ、炊飯器の保温機能を使って50〜60度を保つ。完全に蓋をすると温度が高すぎる場合は、蓋を開けてふきんなどをかけておいてもいい。
3.8時間ほどおいて、しっかり甘くなっていればできあがり。冷蔵庫で保存する。

スープジャーで手軽に作る

温めたスープジャーに温かいご飯80gと65度の湯160ml、ほぐした米麹80gを加えて冷めないようにきっちり蓋をする。8時間程度で甘酒に。甘味が足りない場合は少量の湯を足してさらに保温。

Cooking idea|健康効果アップ変わり甘酒!

[くこ甘酒]

できあがった甘酒が温かいうちに、乾燥の枸杞子を好みの量加え、柔らかくする。食べる甘酒として楽しむと、漢方の生薬でもあるくこの滋養強壮効果をプラスできる。

[柑橘甘酒]

甘酒のできあがり直前に、房から取り出したオレンジや甘夏などの柑橘を加え、そのまま冷ます。柑橘類の香りとビタミンがプラスされ、さわやかな味わい。季節の果物を使っても。

[黒米甘酒]

古代米として健康効果が知られる黒米を加えた黒米ご飯を使ってつくる甘酒。アントシアニンという黒米の色素には高い抗酸化効果がある。

[さつまいも甘酒]

米の代わりにゆでて潰したさつまいもを使った甘酒。米同様に60度の湯と米麹を加えて8時間発酵。冷まして飲むとレジスタントスターチ効果も。

Cooking idea

鮭の甘酒漬け

鮭の切り身を保存袋に入れ、鮭1切れに甘酒大さじ1程度を加える。よくなじませて空気を抜いて口を閉じ、冷蔵庫で一晩くらい漬ける。甘酒をこそげ落としてグリルなどで焼く。魚は何でもOK。豚肉や鶏肉も合う。

大根のべったら漬け風

大根は3〜5mm厚さに切って保存袋に入れ、全体になじむ程度の甘酒を加え、冷蔵庫で2〜3時間漬ける。2〜3日保存できる。きゅうり、にんじん、みょうが、キャベツなどもおいしい。

『Dr.クロワッサン 強い腸をつくる、発酵食の摂り方大百科。』(2021年2月18日発行)より。

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