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塩麹・醤油麹の健康効果、賢い食べ方、献立のヒント、作り方やレシピも【発酵食大図鑑】

【麹菌】消化吸収を助け、腸内細菌のエサにもなる。
  • 撮影・青木和義、黒川ひろみ 文・韮澤恵理 

旨みが足され、減塩&脂質カットに。

食材をおいしくする調味料としておなじみの塩麹や醤油麹。どちらも比較的新しい発酵調味料です。麹の持つ分解力に着目し、その味わいと働きで人気です。

主役は麹菌。米麹に水分と塩を加えて菌の繁殖を促しつつ、米自体を分解させるのが塩麹。水分と塩の代わりに醤油を加えて寝かせるのが醤油麹です。いずれも塩分の多い環境なので、菌がゆるやかに活動し、熟成されるのが特徴。

消化酵素のアミラーゼやプロテアーゼが豊富で、食材の旨みを増し、柔らかく、おいしくする効果があります。

このため、塩分や油分が少なくても満足感があり、結果として血圧や血中脂質が上がりにくくなるのが最大のメリットです。

最近では、酵素の働きで食材が柔らかくなるため、噛む力が弱った人の健康維持にも役立つことも注目されています。

発酵食というと、すべてが腸内で生きて活動すると思われがちですが、実は生きて腸で活躍する菌はごく一部。

麹菌は直接腸内で働く菌ではありません。でも麹菌が作る酸性の酵素は善玉菌の活動を助け、腸内環境を改善するという間接的な効果はあります。

大腸は口から最も遠く、ほとんど酸素がないので、酸素なしで生きていける乳酸菌やビフィズス菌、酪酸菌などが活躍する場です。

これらの善玉菌が、酢酸、乳酸や酪酸といった短鎖脂肪酸を作り、善玉菌の暮らしやすい弱酸性の腸内環境を維持します。逆に酸が苦手な悪玉菌を減らします。

麹菌を使った発酵食は善玉菌の活動をサポートして、間接的に腸に働きかける名脇役といえます。

注目の健康効果

塩麹

●たっぷりの消化酵素
麹菌にはでんぷんやたんぱく質を分解する酵素がたっぷり含まれるので、消化や吸収を助けてくれる。肉や魚の下ごしらえに使うと、柔らかくする効果が。

●自然な旨みで減塩
麹がたんぱく質を分解すると、旨みが増し、塩気や油分が少なくてもおいしいと感じられる。

●腸内細菌のエサに
麹菌が作る酸性の酵素は腸内の善玉菌を活性化。発酵食の微生物は胃酸で死んでしまっても、腸内細菌を元気にする働きを持っている。

米麹ができるまで

(A)種麹は専門の種麹業者が作る。麹菌を蒸した米にまき、一定の温度と湿度を保って米の表面に麹菌を繁殖させる。

(B)麹菌の持つ消化酵素アミラーゼがさまざまな発酵食づくりに使われる。

賢い摂り方

● 塩分にも気を配る
肉や魚の下ごしらえに使うとたんぱく質がアミノ酸に代わり、旨みがアップ。ただし、長く漬けすぎると中まで塩分が染み込むので、塩分が多くなります。

醤油麹は特に濃い味で塩分も多いので、直接食べるなら、少量をマヨネーズに混ぜて野菜スティックなどにつけるのがいい方法。ごま油、アマニ油、オリーブ油などを加えてのばしても使いやすくなります。適量の油分は腸の中をなめらかにし、便秘の改善にも役立ちます。

塩麹の作り方

麹と塩を混ぜて熟成させるだけ。旨みたっぷりの万能調味料を手作りで。

【材料(作りやすい分量)】
米麹 …… 200g
塩(自然な塩)…… 20〜40g
水 ……300〜400ml

【作り方】
1.
麹を保存容器に入れ、塩を加えてよく混ぜる。
2.分量の水を加える。しっかりなじむようにていねいに混ぜる。この段階ではポロポロでも大丈夫。軽く蓋をするか、ラップをかける。毎日1回混ぜる。

※夏なら3日程度、冬は1週間程度で使える状態に。熟成したら、冷蔵庫で保存。

板麹は1粒1粒にバラバラにほぐし、塩を入れてよく混ぜる。

分量の水を加えて混ぜる。ポロポロだけれど大丈夫。室温に置き、毎日かき混ぜる。

醤油麹とそのアレンジ

醤油麹

麹と塩を混ぜて熟成させるだけ。旨みたっぷりの万能調味料を手作りで。

【材料(作りやすい分量)】
米麹 …… 200g 
醤油 …… 200ml

【作り方】
1.
保存容器に麹を入れる。板麹は1粒ずつバラバラにほぐす。
2.醤油を加え、全体がなじむようにていねいに混ぜる。最初はポロポロでも大丈夫。

※夏なら3日程度、冬は1週間程度でねっとりとしてくる。熟成したら、冷蔵庫で保存。

[市販品ならば]

醤油と麹だけのもの、梅干し、唐辛子、油などを加えたバリエも。

(アレンジ)三升漬け

醤油麹に青唐辛子を加えたピリ辛で使い勝手のいい調味料。

【材料(作りやすい分量)】
麹 …… 200g
醤油 …… 200ml
青唐辛子 …… 好みで

【作り方】
醤油麹の作り方を参照し、細かく刻んだ青唐辛子を加えて熟成させる。

(アレンジ)生姜醬油麹

生姜の代謝アップや血流促進の効果と麹の力の合わせ技。

【材料(作りやすい分量)】
麹 …… 200g
醤油 …… 200ml
生姜 …… 100g

【作り方】
醤油麹の作り方を参照し、みじん切りの生姜を加えてよく混ぜ、毎日かき混ぜて熟成させる。おにぎりの具、野菜スティックなどに。

(気をつけたいこと)
塩分が多いので、少量を上手に使いましょう。肉や魚の下ごしらえに使うときも少量で十分。肉や魚はもちろん、さまざまな料理においしさをプラスする発酵調味料ですが、分解力を活用する発酵食だということを忘れずに。

(おすすめ献立)
鶏肉や豚肉、魚などを漬け込んで下味を漬けてから焼いたり揚げたりするとおいしい。たっぷりのせん切りキャベツや大根おろしなどを添えて野菜もしっかり補いましょう。副菜には海藻やきのこを使って。

(麹の種類も多彩)
米麹は大元になる種麹の種類と、使われる米、蔵の温度や湿度といった環境で味わいが変わります。そのまま流通する生麹は発酵力が強く、強制的に水分を飛ばした乾燥麹は保存性が高いという特徴があります。

[板麹]

蒸した米を室箱に入れて麹菌をまき、そのまま繁殖させたもの。

[粒麹(バラ麹)]

蒸し米で麹菌を増やす途中、何度か混ぜてバラバラにしたもの。

Cooking idea|

しっとり&旨みアップ切り身魚の塩麹漬け

鮭や銀だら、ぶり、めかじきなどの切り身魚をファスナー付き保存袋に入れ、塩麹を大さじ1〜2を加えて空気を抜き、外側から全体になじませ、冷蔵庫で1晩くらい漬ける。塩麹をこそげ落としてグリルやオーブントースターで焼く。鶏肉、豚肉などもおすすめ。

柔らかくて消化もいい醤油麹の鶏唐揚げ

醤油麹に鶏肉を漬けると柔らかくて消化もよくなる。鶏肉は一口大に切り、保存袋に入れる。醤油麹(アレンジ醤油麹でも)を加えて袋の外側からもみ込み、空気を抜いて口を閉め、冷蔵庫で数時間つける。袋の中に小麦粉または片栗粉を振り入れ、均等になじませたら、揚げ油でからりと揚げる。保存袋のまま冷凍しておいてもいい。

『Dr.クロワッサン 強い腸をつくる、発酵食の摂り方大百科。』(2021年2月18日発行)より。

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