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骨の名医に聞く、50代からの「転ばない、曲がらない、縮まない」ための骨トレ。

年齢とともに注意が必要となる〝骨の健康〟。
特に骨が急激に弱くなる50代から、強くするための運動を取り入れよう。
骨の名医に対策を聞きました。
  • 撮影・青木和義 イラストレーション・竹井晴日 モデル・横川莉那 スタイリング・仮屋薗寛子 ヘア&メイク・浜田あゆみ 文・小沢緑子

50代から気をつけたい、骨のトラブルとリスク。

「加齢とともに、骨とそれを支えている筋肉は次第に衰えていきます。特に女性は50代から注意が必要。閉経後は女性ホルモンが激減するため、それまで女性ホルモンの働きで守られていた骨が急激に弱くもろくなります」と、長年骨粗鬆症をはじめ、骨の診療に携わる医師の林泰史さん。

骨の健康を守るには、骨の材料の元になる「食事」、カルシウムの吸収を促しビタミンDを増やす「日光浴」、骨を強くする「運動」が3大原則。今回は運動に焦点をあて、毎日簡単にできる“骨トレ”を教えてもらった。

「運動は『骨自体を強くする』ものと、『転倒しづらい体作りをする』ものの2本柱。家事や仕事の合間などに取り入れやすい動きばかりなので、気軽にまずは2週間ほど続けてください。体が変わってくるのを感じるはずです」

【50代】閉経すると、骨密度が減少傾向に。

閉経後、女性ホルモンが急激に減ることで骨密度も減少。20代のときの正常な骨密度と比べると、60歳では7割くらい、70歳では6割くらいまで骨密度が低下してしまう。

[閉経の平均年齢]51歳

【60代】筋力低下で転倒リスクが高まる。

60代以降、筋力がどんどん低下し、転倒で骨折するリスクが増える。転倒原因は高齢になるほど、つまずきより、障害物が何もなくても体のバランスを崩しての転倒が多くなる。

[転倒原因]
1位 バランスを崩す
2位 つまずき

【70代】圧迫骨折を起こしやすくなる。

骨密度低下から骨粗鬆症が進む70代。体重の重みでいつの間にか背骨が潰れたり、尻もちをついただけで骨折したり、大きな衝撃がなくても骨が折れる圧迫骨折が増加。

[折れやすい骨]
1位 背骨
2位 腕、手首
3位 太ももの骨

[1]刺激を与えて骨を丈夫に!

「骨を丈夫にする運動」とは、骨に負荷をかけて刺激を与えられるもの。

「骨には細い穴(骨細管)がたくさん開き、中に組織液が充満しています。運動をして体を動かすと骨がたわんで中の組織液も一緒に動きますが、その動きが『骨を強くしなくちゃ。骨を作れ!』という命令となり、周りにある骨芽細胞が骨を新しく作り始めます」

この指令システムが働くことが、運動による利点。年齢とともに低下していく、骨の新陳代謝を促してくれる。

[全身強化]かかと落とし

1日30回(朝昼晩各10回ずつでも)

「骨を強くするために一番効果的なのがこの運動です。かかとを上げてつま先立ちをした後、力を抜いて下に下ろすとかかとにほどよい負荷がかかります」。背骨を中心に全身の骨に刺激を与えることができる。

背筋をまっすぐ伸ばして立つ(椅子などにつかまってもよい)。両足のかかとをゆっくりと上げてつま先立ちになる。
 ↓

両足のかかとを勢いよくストンと下ろす。繰り返す。

[腕の骨強化]壁押し

1日30回(朝昼晩各10回ずつでも)

腕の骨に負荷をかけられる動き。「壁を押しながら体を起こすだけなので、腕立て伏せより簡単でラクです。また背筋を伸ばすことで姿勢矯正にもなり、背骨がいつの間にか潰れていく圧迫骨折の予防にもなります」

背筋をまっすぐ伸ばして両足を少し開き、壁に向かって立つ。両手を肩の高さで壁につけ、体を壁に傾ける。
 ↓

腕立て伏せをイメージし、息を少しずつ吐きながら壁を押すようにして体を起こす。

[肋骨の強化]フーフー息かけ

1セット5回

日常のふとした動作でも折れやすい肋骨。「息を吸って胸郭を大きく広げてからしっかり息を吐く胸式呼吸を利用した体操で、肋骨を動かすストレッチになります。息を吸うときは背筋を伸ばすよう意識しましょう」

両手で紙を広げて持ち、顔の前に来るよう準備する。猫背にならず胸を広げることを意識しながら大きく息を3秒間吸い、紙に向かって1秒間で思いきり吹きかける。

[2]転倒しづらい体づくりで骨折予防。

「『転倒しづらい体』=『骨折しにくい体』です。まだ先の話と思うかもしれませんが、高齢者が要介護となる主原因の第4位が骨折・転倒(『平成30年版 高齢社会白書(全体版)』より)。将来の健康寿命を考えるうえで、転倒・骨折しにくい体作りは必須で、周りの筋肉や関節の動きを高めることが必要。重点的に鍛えたいのは、とっさのときに踏ん張るための脚と足指、手をついて受け身をとれる手首の筋力。結果的に骨を守ってくれます」

[踏ん張り力up(ふらつかない)]しこふみ

左右で1セット10回

「相撲取りの動きを体操にした『しこふみ』は、股関節の内側にあり、倒れそうになるとぐっとこらえる力が働く腸腰筋を鍛えます」。同時にドスンドスンと四股を踏むことで、太ももの骨を刺激して強化する。

80cm程度に両脚を開いて中腰で立ち、両手をそれぞれ太ももに乗せる。
 ↓

可能な範囲で片脚をゆっくり持ち上げ、その反動で地面をしっかり踏みしめて四股を踏む。反対側の脚も同様。

[背屈力up(つまずかない)]つま先リフト

1セット10回

「すねの筋力が衰えるとつま先を上げる背屈(はいくつ)力が低下。すり足になってつまずきやすくなるので、足指を鍛えましょう」。林さん考案の軽くて使いやすい〝新聞棒〞を足指のつけ根におき、つま先を上下に運動を。

新聞棒の作り方

リハビリの現場でも行われる棒を使った体操が自宅でできるよう、林さんが考案したのが新聞棒。新聞棒を使うと鍛えたい筋肉をより意識できる。作り方は新聞1部を用意。ページ下の中央に芯となる割り箸をおき、筒状に巻く。最後に中央、両端をテープで留める。

椅子に深く座り、両足の指の付け根に新聞棒をおく。
 ↓

新聞棒を落とさないようにつま先を上下させる。上げるときはすねの筋肉を意識しながらしっかり上げ、下ろすときは新聞棒が落ちないように指先に注意。

[柔軟性up(受け身をとる)]ぶんぶんアクセル回し

左右で1セット20回

新聞棒を持ち、手首だけ動かす体操。「加齢で手首も硬くなりがち。普段あまりしないこの動きを体操で取り入れて、手首の柔軟性を高めましょう。転倒時に手をついても手首がしなやかだと骨折を防げます」

椅子に浅く座り、背筋と肘を伸ばし新聞棒の両端を持って前に突き出す。
 ↓

腕は固定してバイクのアクセルを回すようなイメージで、手首だけを手前、奥と交互にねじって、細かく回転させる。

林泰史

林泰史 さん (はやし・やすふみ)

原宿リハビリテーション 病院 名誉院長

整形外科医として高齢者医療やリハビリテーション医療を行う。『新聞紙体操』(ワニブックス)など著書多数。

トップス9,680円、パンツ1万4300円(共にジュリエ ヨガ アンド リラックス TEL.03・5720・8256)

『クロワッサン』1094号より

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