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将来の健康のために、骨活、脳活、筋活は50代から始めよう。

人生100年時代といわれる現代では、50歳はまだようやく折り返し地点を迎えたばかり。
厳しい難所がいくつも予想される後半戦に向け、意識すべきは骨・脳・筋肉を鍛える生活習慣!
暮らしの中に、ひとつ、ふたつ取り入れるだけで未来は変わる。さあ、一緒に始めましょう。

撮影・青木和義 スタイリング・小笠原靖子(富永さん) ヘア&メイク・豊田千恵(富永さん) イラストレーション・100%ORANGE 文・小沢緑子

骨活、筋活、脳活。すべてが将来の健康につながります。

左・フリーアナウンサーの富永美樹さん 右・内科医の常喜眞理さん
左・フリーアナウンサーの富永美樹さん 右・内科医の常喜眞理さん

現在52歳の富永美樹さん。更年期以降、気になり始める体の変化と、今後ますます意識して取り入れたい「骨活、筋活、脳活」について、クリニックでホームドクター、企業で産業医として職場のメンタルヘルスのサポートを行う内科医の常喜眞理さんに聞きました。

将来の健康のために、骨活、脳活、筋活は50代から始めよう。

富永美樹さん(以下、富永) 50歳になった頃、明らかに体が変わってきたなという感覚がありました。8年前から多拠点生活を始めて東京と富士山の麓、その後は西伊豆も行き来していますが、以前は平気だったのに移動後にぐったり疲れてしまうときがあって。

常喜眞理さん(以下、常喜) 40代から50代は、女性の体が大きく変化する時期なんです。成長ホルモンの分泌が低下し、疲れが取れにくいなど、だんだん無理が利かない体になってきます。

富永 更年期の症状も現れますしね。急にほてったり、逆に今年の冬はカイロを貼らないと寒くて寒くて……。

常喜 追い打ちをかけるように女性ホルモンの分泌も急激に減るので、自律神経が乱れて体温の調節がうまく働かなくなるんです。
私はよく患者さんに「冷蔵庫に熱々の鍋を入れると、早く冷やそうとしてウィーンと音が鳴るのと同じ」と話しますが、体が急な変化に対応しようとパニックを起こしちゃうんですね。「体が思うようにならない」と思い詰めてしまう人もいますが、更年期は必ず落ち着くときがきます。

富永 私の場合は40代前半くらいから「これがどうやら加齢に伴う自分の体の変化か」と気づいて、「じゃあ仕方ない」「上手に付き合っていこう」と少しずつ受け入れていった感じですね。

常喜 その考え方、とてもいいですね。「体の変化をしっかり受け止めて、慌てず恐れず備える」気持ちが生まれると、更年期、閉経という「体の新たなモードに上手に軟着陸」させていくことができますから。

将来を考えてまず始めたいのは骨活。

【骨】女性ホルモンの減少は、骨にも影響大。50〜55歳の間に骨密度検査を一度受けて骨の状態を知ることは大切。
【骨】女性ホルモンの減少は、骨にも影響大。50〜55歳の間に骨密度検査を一度受けて骨の状態を知ることは大切。

富永 骨活については、今まさにしなくちゃ、と思っているところです。この1年くらい、腱鞘炎がなかなか治らなくて、病院で骨粗鬆症の検査をしたら骨密度が低下していて骨粗鬆症気味と診断されたので。どんなことに気をつけたらいいですか?

常喜 年齢とともに食が細くなる人もいるので、まず骨活は骨量を減らさないために「痩せすぎない」ことが大事。骨密度の検査は、50歳から55歳くらいまでの間に受けて、自分の骨の状態や傾向を知ってほしいです。
男性と比べると、女性は女性ホルモンの減少の影響から骨量の低下が早く始まり、60代以降に骨粗鬆症、70歳くらいから骨折のリスクも増えますので。

富永 骨のためにカルシウムは意識して摂ったほうがいいですか?

常喜 カルシウムも必要ですが、過剰に摂ると体に必要な他のミネラルの吸収を妨げることもあります。骨の健康は骨量だけでなく、骨質にも左右されるので、ほかの栄養素も大切。
将来の蓄えとしても食事はバランスよく、タンパク質、炭水化物、脂質、ビタミンやミネラルなど、いろいろな食品からさまざまな栄養素を摂ってほしいです。

将来の健康のために、骨活、脳活、筋活は50代から始めよう。

富永 いくら体にいいものでも、偏って摂りすぎるのがダメなんですね。

常喜 たとえば海藻類も摂りすぎればヨウ素が過多になり甲状腺機能に影響することもありますし、果物も摂りすぎると中性脂肪値が高くなったり、カリウム過多になる場合も。過量にならないように気をつけることが一番。

富永 骨粗鬆症気味と診断されたとき、問診に「両親に骨折歴があるか」との項目があったのですが、遺伝も関係あるのですか?

常喜 骨の老化は遺伝の影響が70%くらい関与することがわかっていて、特に母親や祖母、叔母など親族の女性に骨粗鬆症と診断された人がいると、リスクはより高い傾向にあります。

富永 運動も大切ですか? 軽くランニングすると、地面にトンとかかとがあたる刺激で新しく骨が作られると聞いたのですが。

常喜 骨のためには「かかと落とし」の運動が有効で、ランニングだけでなく、かかとが必ず地面にあたるウォーキングもいいですよ。運動は体や脚に痛みがあるときは控えたほうがいいですが、将来の健康を考えると、運動習慣はつけたほうがいい。それに運動は骨活に限らず、筋肉を維持するための筋活にもなりますし、代謝がよくなるので生活習慣病の予防にもなります。

富永 バランスのいい食事で骨を丈夫にし、運動で骨に刺激を与えることで新しい骨が作られる。その両方が骨活にとって大事なんですね。

将来の健康のために、骨活、脳活、筋活は50代から始めよう。

筋肉を維持する筋活は、骨の健康も守る。

【筋肉】体が健康だと認知症になりにくい、という傾向が。ムリなく楽しく日常の合間に動かして筋肉を維持。体の筋力だけではなく、コロナ禍のマスク着用の影響で口のトラブルも。口を大きく開ける筋活も忘れずに。
【筋肉】体が健康だと認知症になりにくい、という傾向が。ムリなく楽しく日常の合間に動かして筋肉を維持。体の筋力だけではなく、コロナ禍のマスク着用の影響で口のトラブルも。口を大きく開ける筋活も忘れずに。

常喜 ただ、骨は筋肉に支えられていますから、骨活だけでなく、筋肉を衰えさせないための筋活を行うことも必要。筋肉を維持することは、骨を守ることにもつながります。

富永 骨活と筋活は別ものじゃなくて、切り離せないんですね。

常喜 40代、50代だとまだそこまで焦る必要はありませんが、年齢とともに筋肉量、筋力はどんどん低下し、筋力の低下→疲れやすくなる→運動や外出がおっくうになる→運動不足でますます筋力低下→さらに疲れやすくなる→ますます運動や外出がおっくうになる、という負のサイクルに陥ると、行き着く先は寝たきり予備軍に。
筋力が低下して体の機能が衰えていく状態をサルコペニアと呼びますが、「運動機能と認知機能の程度は一致」することが多いので、できるだけ体の健康を保って筋肉も維持すると認知症の予防にもつながります。

富永 体が健康だと認知症になりにくいんですね。それは心強い!

常喜 生活習慣病もそう。高血圧やコレステロールは放置すれば脳血管性の認知症の原因になるので、今から予防するよう気をつけましょう。

富永 私、この2年くらい運動をしていないので、これから何かしなくちゃ。

常喜 運動習慣といっても、家の中でできるものでいいですよ。急にハードな運動を始めて強い負荷がかかると、体にダメージを与えてしまうので。たとえばフルマラソンをした後に健康診断を受けると、心筋梗塞を起こした後のような数値に変わることもあります。楽しく走るのはいいことなのですが、くれぐれも無理しないことが大切。

富永 先生は、何か運動はされていますか?

常喜 毎日洗髪後にドライヤーをかけながら、「ながらスクワット」をしています。50回くらいするのが習慣。筋力を維持するためにはある程度の負荷をかけることが必要で、人間の筋肉の7割が下半身に集中しているので、その7割を鍛えようと思って。

富永 私はスクワットももう何回もできない気がする……。まずはお腹から下の筋肉、ですね。

常喜 あとは、入浴中に腕を背中に回して、右手と左手を後ろで組む「肩甲骨はがし」のストレッチも日課。

富永 (背中に腕を回して)後ろで手を組むのって意外に難しい!

常喜 それから、更年期になると頻尿や尿もれなどの排尿障害に悩む人が増えてきますが、原因のひとつは老化による膀胱の筋力の低下。内臓の下垂を改善するために、気づいたときにでもお尻のあたりをキュッと締める「骨盤底筋運動」も、筋活のひとつとして取り入れるのはおすすめです。

富永 何かの合間にできていいですね。

常喜 富永さんは職業柄、発声練習に慣れていると思いますが、このコロナ禍のマスク着用が影響して、口が開けにくくなったり、顎が痛くなったりする顎関節症を起こしている人がけっこう増えているんです。「口を大きく開ける」ことも意識してほしいです。

富永 発声練習の「あえいうえおあお」のような?

常喜 口を開けて舌を出し入れして動かす程度でも。コロナ禍は人と会ってお喋りする機会も減っていたので、口を開けて「楽しく笑う」ことも、口の筋活のひとつになりますよ。

将来の健康のために、骨活、脳活、筋活は50代から始めよう。

人との関わりは、脳活にとって重要。

【脳】脳活は〝楽しさ”が一番。 新しいこと、興味のある ことに夢中になると脳への刺激にもなる。人とのいい関係が、脳を活性化。しがらみから離れ、自分にとって心地いい関わり方を模索することも大切。
【脳】脳活は〝楽しさ”が一番。 新しいこと、興味のある ことに夢中になると脳への刺激にもなる。人とのいい関係が、脳を活性化。しがらみから離れ、自分にとって心地いい関わり方を模索することも大切。

富永 脳活にあてはまるかわからないですが、昨年富士山の麓で庭作りをする会社を友人と立ち上げたんです。人生100年時代というけれど、「私が今と同じような体力と気力で頑張って働けるのはどのくらい?」と考えたときに75歳くらいかなと思ったら、あと20年少しであっという間。やりたいことはすべて挑戦しようと思って。

常喜 ポジティブのうえアクティブで、心の健康面から考えても素晴らしいことだと思いますよ。

富永 20代や30代の若い世代の社員もいて、新しい関係を築き上げている最中なのですが、今までの仕事とは違うエネルギーを使うのがまたすごく楽しくて。友人には「好奇心に貪欲」(笑)と言われますけどね。

常喜 50代以降の健康を考えるうえで、人との関わりは重要な要素なんです。
アメリカのハーバード大学の研究で、75年間にわたって約700人を追跡した調査があるのですが、「健康で幸福な人生はよい人間関係がもたらす」「特に50代で人間関係に恵まれると、70代、80代で健康かつ幸せであることを実感している人の割合が高い」というデータがあって、なるほどと思いました。
50代は言ってみれば、仕事でも家庭でも忙しさが落ち着いて一息つける時期。趣味でも地域の関わりでもいいので、自分にとって心地のいい人間関係を作るのは、心の健康面から考えてもとてもいいことだと思います。

富永 私もそう思います。これは多拠点生活を始めた頃から感じていたのですが、今までと違う環境に住むと食も気候も変わるし、しかも知らないことや出会いもいっぱいあって、それを体験することで見たことがない世界が広がり、脳への刺激にもなるなと。
住む場所まで変えなくてもいいけれど、推し活でも何でも興味があることを始めてコミュニティを広げるのは、脳活のひとつとしてぜひおすすめしたいです。

常喜 脳が活性化するのは、「楽しみながら何かをしているとき」なんです。食事をしっかり取って、体を適度に動かして、人と会って楽しく過ごす。それこそ、骨活にも筋活にも脳活にもつながると思いますし、将来的な健康にいい影響を与えてくれると思います。

将来の健康のために、骨活、脳活、筋活は50代から始めよう。
  • 常喜眞理

    常喜眞理 さん (じょうき・まり)

    「常喜医院」院長

    内科、皮膚科の診療のほか、慈恵医大新橋健診センター診療医長、産業医として活躍。著書に『オトナ女子 あばれるカラダとのつきあい方』等。

  • 富永美樹

    富永美樹 さん (とみなが・みき)

    フリーアナウンサー

    東京と富士山の麓、西伊豆を行き来する多拠点生活を送る。環境省アンバサダーとしての活動やレシピ本の出版、講演、商品プロデュースも行う。

富永美樹さん着用:
ワンピース6万6000円(マッキントッシュ ロンドン/SANYO SHOKAIカスタマーサポート TEL.0120・340・460)
ピアス8万2500円(ウノアエレ/ウノアエレ ジャパン TEL.0120・009・488)
パンプス2万2000円(銀座かねまつ/銀座かねまつ6丁目本店 TEL.03・3573・0077)

『クロワッサン』1094号より

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