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理学療法士に教わる、ビギナー向け腰痛体操。

腰痛に悩んでいる人は、腰回りの筋肉や関節が硬かったり、腹筋や大臀筋(だいでんきん)などの筋肉が衰えていたりすることがほとんどです。
痛みが激しい急性期から鈍い痛みの慢性期に変わったら、衰えた筋肉を強化する腰痛体操を始めましょう。理学療法士の田中尚喜さんに教わります。

撮影・黒川ひろみ モデル・くらさわかずえ スタイリング・高島聖子 ヘアメイク・宮島香奈子 イラストレーション・松元まり子 文・山下孝子

まずは基本の姿勢チェック!

理学療法士に教わる、ビギナー向け腰痛体操。

(1)腰、胴、頭の順に体を壁につけましょう。「正しい姿勢」の場合は、首の後ろにすき間ができるはずです。

(2)「正しい姿勢」で立っていると、背中と腰は壁に密着しますが、背中と腰の間には手のひら1個分のスペースが空きます。

(3)背中と腰の間のスペースが大きい人は、上半身が前に反りすぎている証拠です。

(4)かかとは壁にくっつけず、壁から2~3センチ離しましょう。

●注意
最近は背中にある下後鋸筋(かこうきょきん)(息を吐くときに下部の肋骨を引き下げる)が緊張して、胸の下が出っ張っている人が多くなっています。下後鋸筋の緊張も腰痛の要因となるので、もむなどしてゆるめてあげましょう。

腰痛を予防するために大切な筋肉

理学療法士に教わる、ビギナー向け腰痛体操。

● お腹の筋肉(腹筋)
一般的にお腹の真ん中についている腹直筋のことですが、内臓を収納する「腹腔」の壁の役割を果たす外腹斜筋と内腹斜筋(まとめて腹斜筋)、腹横筋といった脇腹の筋肉も腹筋に含まれています。

● 背中の筋肉(背筋)
背中にはたくさんの筋肉があり、背中の中央から上部についている僧帽筋や、背中の下部から脇の下にかけついている広背筋が有名です。また、背骨の骨のひとつひとつにつながっている多裂筋は、背骨を引っ張って背筋を立たせる働きを持つとして、最近注目されています。

● お尻の筋肉
骨盤の傾きを支えている大臀筋は、お尻だけでなく人間の体の中で最大の筋肉です。また、大臀筋の深部にある梨状筋は、太ももを外向きにひねる動きを助けるやわらかい筋肉ですが、硬くなると坐骨神経を圧迫して足が動きづらくなることがあります。

● 太ももの前の筋肉
太ももの前には複数の筋肉がついていますが、太ももの内側についている大内転筋は腰痛予防に不可欠な「歩く」という動作にとって大切な筋肉です。また、骨盤の前面についている腸腰筋は、太ももを前に振る働きを持つ2種類の筋肉(腸骨筋・大腰筋)の総称です。

● すねの筋肉
すねの前面についている前脛骨筋は、つま先を持ち上げる働きを持ち、「歩く」という動作にとって大切な筋肉です。ただし、つりやすい筋肉のため注意が必要です。

● 太ももの裏の筋肉
太ももの裏側には、股関節の伸展や膝関節の屈曲に影響を与えるハムストリングと呼ばれる複合筋(半膜様筋、半腱様筋、大腿二頭筋)がついています。ハムストリングを鍛えると基礎代謝がアップして太りづらい体質になるといわれています。

● ふくらはぎの筋肉
ふくらはぎの表層部分についている腓腹筋は、日常生活ではあまり使われないため、つりやすい筋肉です。また、腓腹筋の深部にあるヒラメ筋は、「歩く」という動作にとって大切な筋肉ですが、運動不足になるとつりやすくなるため、高齢者はこむら返りが起きやすくなります。

特に鍛えたいのは腹筋と大臀筋

人間が「正しい姿勢」を保つことができるのは、腹筋・背筋・大臀筋(だいでんきん)の3種類の筋肉のおかげです。そのため、大半の腰痛の要因は、これらの筋肉が衰えることで姿勢が悪化してしまうことです。

かつて、腰痛は痛みが治まるまで安静にしているのが常識でした。しかし、近年は痛みが激しい急性期(最初の2〜3日ほど)が過ぎ、安静にしていれば痛まない、または腰を温めると痛みが和らぐような慢性期に入れば、筋肉の衰えによって症状が悪化するのを防ぐために、積極的に動かすことが腰痛対策の新常識とされています。

体を動かす際に、特に心がけてほしいのは次の3点です。

(1)硬くなっている腰回りの筋肉や関節を伸ばしてやわらかくする
(2)腰の骨や股関節を伸ばして動きをよくする
(3)腹筋(腹直筋・腹斜筋)や大臀筋を鍛える

なお、背筋は立ったり座ったりという日常の動作で使うため、熱心に鍛える必要はないそうです。筋肉の強さは腹筋が2に対して背筋は1ぐらいがちょうどよいうえ、背筋を鍛えすぎると上半身が後ろに引っ張られ、反り腰になるリスクが高くなるので要注意です。

本書では腰痛の予防や改善に効果がある体操とストレッチングをいくつか紹介しますが、最初からすべてを行う必要はありません。自分ができる体操やストレッチングを選び、無理のないペースで始めれば大丈夫です。

ただし、医療機関で治療中の人や高血圧や心臓病がある人などは、本書で紹介している体操やストレッチングを行ってもよいか、治療を担当している医師に相談する必要があります。

また、腰痛以外の体調不良(熱がある、安静時の脈拍が1分間に90以上ある、めまいがする、胸が痛い、吐き気がある、など)がある場合は、運動を避けましょう。

もちろん、頭痛やめまいがする、冷や汗が出る、足・腰・関節が強く痛む、などの体調不良が運動中に現れた場合も、すぐに中止してください。

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