からだ

「腰を反らせると痛くなる」におすすめの4種の腰痛ストレッチング。

理学療法士の田中尚喜さんに「腰を反らせると痛くなる」腰痛におすすめのストレッチを教わります。
  • 撮影・黒川ひろみ モデル・くらさわかずえ スタイリング・高島聖子 ヘアメイク・宮島香奈子 イラストレーション・松元まり子 文・山下孝子

胎児のポーズで背中伸ばし

このストレッチングによって、背中についている背筋を伸ばすことができます。背筋が硬くなってしまうと、腹筋とのバランスが悪くなり、上半身が後ろに引っ張られて反り腰のリスクが高まりますので、しっかり伸ばしてあげましょう。

(Point)
仰向けに寝た状態でそろえた両足を上げ、両膝を抱えることができたら胸のほうに引き寄せる。
両足を胸につけるほど引っ張る必要はなく、目安はお尻が床から少し浮くぐらい。無理のない位置まで上げることができたら、その姿勢を30秒キープする。

(注意)
同時に頭を上げておへそをのぞき込むのが理想だが、首の筋肉を痛める可能性もあるので、無理に頭を上げなくてもよい。

(仰向けに寝られない……)

(Point)
腰の反りが強くて仰向けに寝ることが難しい場合、椅子に浅く腰かけ、広げた両足の間に伸ばした両手を入れるように上半身を倒す。無理のない位置まで倒せたら、全身の力を抜いて、その姿勢を30秒キープする。

(注意)
上半身を起こすときは、急に頭を持ち上げると貧血になる場合があるため、ゆっくりと起こすようにする。

一の字全身伸ばし

このストレッチングによって、腹筋、背筋、手足などの全身の筋肉を、ほどよく伸ばすことができます。
全身を伸ばすと、特に背中と腰の間の部分の筋肉がよく伸びます。仰向けに寝た状態で行うため、朝起きたときや寝る前など、布団の上にいるときに行うのもおすすめです。

(Point)
背中をぴったりと床につけるように仰向けに寝て、手と足がそれぞれ逆方向に引っ張られているように全身を伸ばし、その状態を30秒キープする。

(寝る前にこのストレッチングを行う場合)

高齢になると「こむら返り」が起きやすくなります。睡眠中に起きてしまうと、痛みで目が覚めて睡眠の質が低下します。そのため、このストレッチングを寝る前に行う場合、ついでに手足を振ってふくらはぎの筋肉をほぐし、こむら返りを予防しましょう。

(STEP 1)
仰向けに寝た状態で、無理のない高さまで両手両足を上げる。この時、手足をまっすぐ伸ばす必要はない。
 ↓

(STEP 2)
両手両足を上げたら、上下前後に動かして両手両足を30秒ほど揺さぶる。

太ももの付け根伸ばし

このストレッチングによって、太ももの付け根に部分についている腸腰筋を伸ばすことができます。
股関節を動かす働きだけでなく、上半身を曲げる動きにも使われる筋肉のため、硬くなると歩行や正しい姿勢の維持にも支障が出るので積極的に伸ばしましょう。
ただし、腰椎すべり症の治療中の場合は、避けた方がよいストレッチングです。

(Point)
四つん這いの姿勢から片方の膝を曲げ、もう片方の足を後ろに伸ばして膝を床につけ、ゆっくりと腰を下ろす。無理のない位置まで腰を下ろしたら、その状態を30秒キープする。反対側の足も同様にする。

(この姿勢が難しい場合)

このストレッチングの姿勢は、ある程度の筋力がないと、かなり難易度が高いといえます。その場合は無理をせず、うつ伏せに寝転がり、片足を軽く開いた状態で膝の下に枕やクッションを置きましょう。
この姿勢で5分間リラックスすることで、枕やクッションにのせた側の太ももの付け根を伸ばすことができます。

太ももの前伸ばし

このストレッチングによって、太ももの前の部分についている大腿直筋を伸ばすことができます。この筋肉は股関節を動かす働きを持っており、硬くなると腰を後ろに反らせるだけでなく「歩く」動作も難しくなりますので、丁寧に伸ばしてあげましょう。

(Point)
しゃがんで両手を床につけてから伸ばす側の足を後ろに引き、伸ばしている足とは反対側の手で足をつかみ、そのかかとをお尻につけるように引っ張る。無理のない位置まで足を引っ張ったら、その姿勢を30秒キープする。

(この姿勢が難しい場合)

後ろに引いた足を曲げて膝だけで支えることになるため、「太ももの付け根伸ばし」のストレッチングよりも姿勢をキープするのが難しくなります。
そのため無理をせず、ちょうどよい高さの椅子を用意し、背をつかみ、座面に膝をつけた状態で足を持ってかかとをお尻につけるように引っ張りましょう。
椅子の背につかまっているのでバランスを保ちやすくなります。

(注意)
使用する椅子の座面は、できるだけ平坦なものを選ぶ。また、足の裏をつけた状態で膝を置ける高さのものにする。

安静にしすぎて腰痛を悪化させない!腰痛ストレッチング

腰痛の予防・改善には、筋肉を鍛えるだけでなく、筋肉をやわらかくすることも大切になってきます。なぜなら、筋肉が硬くなってしまうと体を動かしづらくなるからです。
そこで、腰痛体操を教えていただいた理学療法士の田中尚喜さんの指導で、筋力トレーニングの効果と、ゆっくりと引き伸ばすことで血行をよくして、緊張した筋肉をほぐしてあげるストレッチの効果を併せ持つ「ストレッチング」も紹介。

腰痛を予防・改善するストレッチングで鍛えるのは、太ももの裏についているハムストリング、太ももの前面についている大腿直筋(だいたいちょくきん)と腸腰筋(ちょうようきん)、お尻についている大臀筋(だいでんきん)、背中から腰にかけてついている背筋と広背筋(こうはいきん)、脇腹にある腹斜筋(ふくしゃきん)の7種類の筋肉です。

ストレッチングは筋肉の動きなどから、紹介する順番に実施するのが理想的ですが、時間や場所と相談して、できるものから行っても大丈夫です。

最低でも1日1回実施することは、筋肉をほぐすだけでなく、ストレスの解消にも役立つはずです。

ただし、脊柱管狭窄症などの骨や椎間板の病気が原因の腰痛は、患部の状態によってNGの姿勢や体勢もありますので、治療中の場合は、紹介するストレッチングを実施しても問題ないか、必ず医師に相談するようにしましょう。

【ストレッチングの10個のルール】

(1)腰の痛みがひどいとき(急性期)にはしない。
(2)やわらかすぎる布団の上ではしない。適度に硬いマットや畳の上でする。
(3)1つの動きに30秒ほどかけて、弾みをつけずにゆっくりと筋肉を伸ばす。
(4)ストレッチングで伸ばす筋肉を意識する。
(5)「気持ちがいい」くらいに伸ばし、痛くなるまで伸ばさない。
(6)曲がらないからといって、他人に押してもらわない。
(7)息を止めると血圧が上昇するので、自然な呼吸を心がける。
(8)入浴後など体が温まっている時に行うと、効果が上がる。
(9)最低でも1日1回は行い、慣れれば腰痛体操よりストレッチングの回数を増やしてよい。
(10)1日何回でもよいので、気がついたときに行う。

田中尚喜

田中尚喜 さん (たなか・なおき)

理学療法士

岩手リハビリテーション学院を卒業後、東京厚生年金病院(現・JCHO東京新宿メディカルセンター)リハビリ室勤務。現在はリハビリテーション士長。1994年にローマで開催された世界水泳選手権には、日本選手団のチームトレーナーとして帯同。臨床の経験を活かし、『図解 百歳まで歩く』(幻冬舎)、『100歳まで歩ける! スクワット健康法』(宝島社)、『正しく歩いて、不調を治す。』(クロスメディア・パブリッシング)など、理学療法の啓発・普及に貢献する著書の執筆や監修を手掛けている。

※プロフィールは雑誌掲載時の情報です。

『Dr.クロワッサン 脊柱管狭窄症、骨粗しょう症、ぎっくり腰もスッキリ! 腰痛の新常識』(2020年8月27日発行)より。

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