からだ

「腰を曲げると痛くなる」におすすめ、3種の腰痛ストレッチング。

理学療法士の田中尚喜さんに、「腰を曲げると痛くなる」腰痛におすすめのストレッチを教わります。
  • 撮影・黒川ひろみ モデル・くらさわかずえ スタイリング・高島聖子 ヘアメイク・宮島香奈子 イラストレーション・松元まり子 文・山下孝子

太もも伸ばし

このストレッチングによって、膝の裏から太ももにかけてついているハムストリングを伸ばすことができます。
ハムストリングは複数の筋肉の総称のため、2つの動きを行います。ここが硬くなってしまうと、股関節や膝の曲げ伸ばしだけでなく、正しい姿勢で椅子に座ることも難しくなるので、やさしく伸ばしてあげましょう。

(STEP 1)
少し足を広げて座り、一方の足を伸ばし、もう一方の足は軽く曲げる。そして、両手を伸ばした足の方に向けて伸ばす。
 ↓

(STEP 2)
背筋をまっすぐにしたまま、両手を伸ばした足の上で滑らせるように上半身を前に倒す。このとき、骨盤を前に倒すことを意識する。無理のない位置まで倒したらその姿勢を30秒キープする。反対側の手足でも同じ動きを行う。
 ↓

(STEP 3)
仰向けに寝て片方の足を両手で持ち、曲げた膝を上半身に近づけるように引っ張る。無理がない位置まで足を引っ張ったらその姿勢を30秒キープする。反対側の足も同じように引っ張る。

膝抱きお尻伸ばし

このストレッチングによって、お尻についている大臀筋を伸ばすことができます。
大臀筋が硬くなってしまうと、骨盤が後ろに傾くうえ、「歩く」「立ち上がる」といった股関節の伸展が伴う動作がうまくできなくなるため、じっくり伸ばしてあげましょう。

(Point)
仰向けに寝ながら片足を上げ、両手でその膝をつかんだら、胸に向かって引き寄せる。このとき、上半身を起こすと腰が反るので注意する。無理のない位置まで足を引っ張ったら、その姿勢を30秒キープする。反対側の足も同じように引っ張る。

(足が上がらない……)

(Point)
足を上げることが難しく、膝をつかんで引っ張ることができない場合は、太ももの後ろを持つだけでも、お尻の筋肉を伸ばすことができる。

腰を曲げると痛くなる(おすすめストレッチング)伏せのポーズで背中伸ばし

このストレッチングによって、背中の大部分に広がっている広背筋を伸ばすことができます。この筋肉は脇の下までつづいているため、硬くなると姿勢が悪くなるだけでなく、腕を動かすことも難しくなってしまうので、忘れずに伸ばすようにしましょう。

(Point)
四つん這いの姿勢から、床にすべらせるようにゆっくりと両手を前に伸ばして、額を床につけるように上半身を伏せる。上半身とは対照的に、お尻は突き出すようにする。無理のない位置まで伏せたら、その姿勢を30秒キープする。

(注意1)ひじはまっすぐ伸ばす。
(注意2)足を動かさず、お尻と足をくっつけないようにする。

(腕を上げられる場合)

高齢になると腕を上げるのが難しくなりますが、腕を上げても痛くない場合、片方ずつ広背筋を伸ばす、次のようなストレッチングもあります。椅子に座った状態でもできるため、仕事の合間の気分転換に行えます。

(STEP 1)
背を伸ばして両手をまっすぐ上げ、片方の手でもう片方の手首をつかむ。
 ↓

(STEP 2)
手首を引っ張るように、手首をつかんでいる手の方向に上半身を倒し、無理のない位置まで倒したら、その姿勢を30秒キープする。
 ↓

(STEP 3)
上半身を反対側に倒す時は、手首をつかむ手も逆にする。

安静にしすぎて腰痛を悪化させない!腰痛ストレッチング

腰痛の予防・改善には、筋肉を鍛えるだけでなく、筋肉をやわらかくすることも大切になってきます。
なぜなら、筋肉が硬くなってしまうと体を動かしづらくなるからです。そこで、腰痛体操を教えていただいた理学療法士の田中尚喜さんの指導で、筋力トレーニングの効果と、ゆっくりと引き伸ばすことで血行をよくして、緊張した筋肉をほぐしてあげるストレッチの効果を併せ持つ「ストレッチング」を紹介。

腰痛を予防・改善するストレッチングで鍛えるのは、太ももの裏についているハムストリング、太ももの前面についている大腿直筋(だいたいちょくきん)と腸腰筋(ちょうようきん)、お尻についている大臀筋(だいでんきん)、背中から腰にかけてついている背筋と広背筋(こうはいきん)、脇腹にある腹斜筋(ふくしゃきん)の7種類の筋肉です。

ストレッチングは筋肉の動きなどから、紹介する順番に実施するのが理想的ですが、時間や場所と相談して、できるものから行っても大丈夫です。

最低でも1日1回実施することは、筋肉をほぐすだけでなく、ストレスの解消にも役立つはずです。

ただし、脊柱管狭窄症などの骨や椎間板の病気が原因の腰痛は、患部の状態によってNGの姿勢や体勢もありますので、治療中の場合は、紹介するストレッチングを実施しても問題ないか、必ず医師に相談するようにしましょう。

【ストレッチングの10個のルール】

(1)腰の痛みがひどいとき(急性期)にはしない。
(2)やわらかすぎる布団の上ではしない。適度に硬いマットや畳の上でする。
(3)1つの動きに30秒ほどかけて、弾みをつけずにゆっくりと筋肉を伸ばす。
(4)ストレッチングで伸ばす筋肉を意識する。
(5)「気持ちがいい」くらいに伸ばし、痛くなるまで伸ばさない。
(6)曲がらないからといって、他人に押してもらわない。
(7)息を止めると血圧が上昇するので、自然な呼吸を心がける。
(8)入浴後など体が温まっている時に行うと、効果が上がる。
(9)最低でも1日1回は行い、慣れれば腰痛体操よりストレッチングの回数を増やしてよい。
(10)1日何回でもよいので、気がついたときに行う。

田中尚喜

田中尚喜 さん (たなか・なおき)

理学療法士

岩手リハビリテーション学院を卒業後、東京厚生年金病院(現・JCHO東京新宿メディカルセンター)リハビリ室勤務。現在はリハビリテーション士長。1994年にローマで開催された世界水泳選手権には、日本選手団のチームトレーナーとして帯同。臨床の経験を活かし、『図解 百歳まで歩く』(幻冬舎)、『100歳まで歩ける! スクワット健康法』(宝島社)、『正しく歩いて、不調を治す。』(クロスメディア・パブリッシング)など、理学療法の啓発・普及に貢献する著書の執筆や監修を手掛けている。

※プロフィールは雑誌掲載時の情報です。

『Dr.クロワッサン 脊柱管狭窄症、骨粗しょう症、ぎっくり腰もスッキリ! 腰痛の新常識』(2020年8月27日発行)より。

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