引田さんがリノベーションを依頼したのは、旧宅でも家具や収納の造作をオーダーしていたオリジナル家具メーカーの「スタンダードトレード」。木の質感を生かした、シンプルで落ち着いたデザインに定評がある。
「家具メーカーとして知られていますが、近年は家具から住宅を考えるというコンセプトで建築にも着手しています。ちょうどいいタイミングでした」
新居のテーマは、旧宅と同じく「ホテルのような居心地のよさ」。リノベーション前は、リビングとダイニングの間に仕切りがあり、天井は斜めで暖炉の設置された山荘風の住宅だった。
それに対して、まずは仕切りを取り払い、一続きのLDKに間取りを変更。壁や梁には淡いグレーの珪藻土を塗り、床はリネンウールのカーペット敷きに。天井は高さを極力生かし、無垢材を羽目板張りにして、照明にはダウンライトを採用した。結果、引田さんらしい上品な雰囲気の、広々とした空間に生まれ変わった。以前から持っていた「スタンダードトレード」のオーダー家具も、この家のためにあつらえたかのように、しっくりとなじんでいる。
また、1階で前オーナーが鍼灸院として使用していた部分は、日あたりのよい寝室に改装。すると、住空間は1階だけで足りるので、「1フロアのほうが住みやすい」と、内階段を取り払って2階は独立した空間に。もともと2・3階へは外階段で出入りできる構造だったため、無理はなかった。
「暖炉だけを残して、ほぼフルリノベーションになりました。合板を使っていないし、壁が珪藻土だから、完成直後から空気がきれいで気持ちがよかったです」とターセンさん。