くらし

刃物、割れ物、燃えやすい紙類……。台所こそ防災を考えた片づけを。

台所は、大きな揺れが来たとき、家の中で最も危険な場所。どのような片づけと備えが必要なのか専門家に聞きました。
  • 撮影・岩本慶三 文・一澤ひらり

逃げ道の確保が避難時の最優先。家電は固定、床に物を置かない。

(左)台所からリビングへきれいに一直線。床に障害物は何も置いていない。 (右)調理台や棚の上にも調理器具、調味料など一切置かないよう徹底。

千葉県下の新築マンションに入居直前、東日本大震災が発生。自宅マンションは無事だったが、敷地内や周囲が液状化したという整理収納アドバイザーの熊田明美さん。
「震災の2週間後になんとか入居しましたが、収納スペースが少なくて段ボール箱は積み上がったまま。息子は当時まだ小学生で、また大地震が起きたら命に関わると、整理収納と防災の重要性に目覚めました」

とりわけキッチンはひとたび地震が起きれば大型冷蔵庫が転倒したり、包丁などの刃物類や小型家電が飛んできたり、食器が割れて飛散したり、最大の危険ゾーンと化す空間。そこで熊田家のキッチンをモデルケースにして、防災に有効な工夫の数々を教えてもらった。
「我が家のキッチンは広くないので、床には何も置いていません。非常時にはここ一番の避難経路。床に物があったら、つまずいて怪我をする原因になりますから」

調理器具などを出しっぱなしにしないのも防災の基本だ。使用後は必ず元の場所に戻し、調理台の上には何も置かないように気をつける。
「激震が起きたら包丁はまさに凶器となるので、使ったらすぐに洗ってしまうようにしています。調味料のびんやお玉などのツール類も飛ぶと危ないので、使ったら戻します」

余計なものが一切なく、清潔感にあふれている熊田家のキッチン。家電の固定も徹底している。
「大型冷蔵庫は100kg以上あり、倒れたら大惨事になりかねません。転倒防止のための器具を取り付けることは必須です。それから電子レンジや炊飯器などの小型家電は宙を飛ぶ凶器になりますから、しっかり固定することが必要です」
この固定をしっかり行っておけば、電子レンジが足の上に落ちて骨折するといったリスクを回避できる。
「地震が起きれば棚から食器が飛び出し、割れて床に飛び散ります。ガラスの破片の上をスリッパで逃げるのは危険すぎるし、後始末も大変です。開き扉が開かないようにすることが大事。激しい揺れを感知すると自動ロックがかかる耐震ラッチを付けて食器の飛び出しを防ぎましょう」
滑り止めシートを棚板に敷けば、中で食器が割れる恐れも軽減できる。

調理用具は出しっぱなしにせず、元の場所に戻すのが鉄則。

キッチンは食材や調理用具、調味料などで散らかりがちだ。「調理を終えたら洗い物は食洗機に入れ、調味料や道具は元あった場所に戻します」。ご覧のとおり何もないクリーンな空間。

地震で危険なのは大型冷蔵庫。転倒防止対策は絶対必要!

「台所で最も危ないのは大型冷蔵庫の転倒です。人の上に倒れたり、避難経路を塞ぎます。我が家では上部は突っ張り棒とベルトで固定をして、下は粘着マットを敷いています」

電子レンジなど小型家電は転倒や落下を防ぐためにしっかり固定。

激震で棚から飛んだり、落下したりして大怪我のもとになるのが電子レンジ。熊田さんは粘着式バックルを貼り、ベルトで固定をしている。震度6強に耐える強度だが、べルトを外せば掃除が簡単にできる。

耐震ラッチやS字フックを使って、戸棚や扉には開かない工夫を。

戸棚には震度5の揺れを感知すると扉を自動ロックし、揺れが収まると自動解除される耐震ラッチを取り付けている。とくに吊り戸棚には必要不可欠だ。
引き戸には携帯電話用の落下防止リングを戸の下に貼る。S字フックを取っ手に引っかけて、もう一方をリングに引っかければ開くのを防止できる。
観音扉にはキャビネットストッパーを付けて扉をロック。「これはシールを剥がして貼るだけで付けられ、ワンタッチでロックすることができます。食器の飛び出しを防いでくれるんですよ」
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