くらし

’88年発表の渡辺美里のミリオンセラー。リマスタリングで甦ったものは?

渡辺美里『ribbon-30th Anniversary Edition-』

発売当時の初回プレスそのままに、真っ白なBOX仕様で登場。ライナーノーツも必読だ。通常盤2,963円(EPICソニー)

「リマスタリング」とは過去に録音された音源を、トラックごとに最新技術で調整し、新たなバランスで仕上げること。ヴォーカルはもちろん、ベースのテクニックまで一つ一つの音が際立ち、瑞々しい驚きや感動と共に楽しむことができる。

1988年に発表された渡辺美里の4thアルバム『ribbon』は、当時100万枚を売り上げた代表作。作曲には小室哲哉、岡村靖幸、大江千里など同じレコード会社の仲間のほか、’90年代にSPEEDの楽曲を手がける伊秩弘将の名も。まだ新人だったギタリストの佐橋佳幸(松たか子さんの夫)も全編で活躍し、アルバムの骨格を作る。渡辺美里というヴォーカリストのもとに集まった人々が、のちに活躍の場を広げていったのは、彼女のアーティスト性がそれだけ魅力的であり、新しい才能を引き寄せる力を持っていた証明かもしれない。

初回限定盤には、1988年収録の貴重な映像集や、未公開写真を集めたフォトブックが。6,019円

1988年、世はバブル期に突入。上向きで元気だった日本にあって、渡辺美里の歌詞は10代の写実的な視点から変化し、働き始めた同世代の痛みや喜びを歌い始める。アクセルやダッシュボードなど、カーステレオを意識させるフレーズも多く使われ、アナログ盤からCDへと移行し、音楽に接する機会が外へと拡大していったあの頃を思い出させる。今作での彼女の歌声も、「センチメンタル カンガルー」や「シャララ」ではソウルシンガーのような大胆さを見せ、「19才の秘かな欲望」ではツアーバンドと共にライブさながらのグルーヴ感でファンを驚かせる。ボーナストラックの「HalfMoon」では、当時渡辺美里が、岡村靖幸たちと模索していた日本語のブルースが昇華。こちらも必聴だ。’80年代はJ-POPの音作りにおいて、電子化が定着し始めた時代。そこに渡辺美里の「ベルベットロック」とも呼ぶべき強力なヴォーカルが加わり、曲ごとに、生演奏やシンセサイザーの絶妙なバランスが世界観を作る。

それらの時代性や制作背景に気がつくのも、今回のリマスタリングによって、彼女の声やコーラスワーク、アレンジがくっきりとした輪郭で耳に飛び込んでくるからこそ。そしてもう一つ、30年のときを経て、私たち自身が社会に出て共同作業の喜びを知ったからわかる、作品へのリスぺクトもあるかもしれない。思い出が色鮮やかに浮かびあがるニューアルバムだ。

『ribbon』収録曲を演奏するライブも。

『クロワッサン』974号より

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