デビュー16年を迎えたシンガー、JUJUさんが4枚組ベストアルバム『YOUR STORY』を発表した。全52曲。52の歌の物語だ。4枚のCDは4つのシアターのイメージ。
「普遍的な愛を歌うシアター・レッド、切なさがにじむシアター・パープル、胸ときめくシアター・ピンク、頑張る人の背中を押すシアター・ブルーと、それぞれ名付けました」
曲は初期の名曲「ありがとう」「奇跡を望むなら…」から、最新シングル「STAYIN’ALIVE」まで、キャリアからまんべんなく選ばれている。女性シンガーの多くは年齢を重ねるとともに低い音域へ移行していく。ところが、このベスト盤を聴く限り、JUJUさんの音域は広がっている。声に透明感も増している。
「喉も筋肉です。油断すると衰える。実は最近ちょっと自分の過信を感じて、今、新たな気持ちでヴォイストレーニングに臨んでいます」
52の歌の物語には52人の主人公がいる。それぞれの悲しさ、苦しさ、ささやかな喜びをJUJUさんが歌うと、ものすごくリアルに響く。自分が歌の主人公に思えてくるほど。
「作品の力だと思うのですが、いつも私には主人公が降りてくるんです。小学生時代、国語の授業で教科書に書かれていた老婆が突然降りてきて、彼女の気持ちと口調で朗読して、それからずっとです。
『YOUR STORY』を聴き直しても、主観的にはならずに歌詞の主人公に寄り添えている自負はあります」
シンガーとしてのキャリア、そして女性としてのJUJUさんの喜びや悲しみによっても歌は情緒を増し、切なさがにじむ。
「16年間には、幸せな出会いも悲しい別れもありました。もちろん、つらい体験はしたくはありません。なのに、苦しみのピークのときですら、これでまた歌える曲が増えた――と心のどこかで感じています」
シンガーの性からは逃れられない。
「どんなに悲しくても、歌うためだと思ってしまうから、ぎりぎりのところで心が壊れずにいられるのでしょう。そういう積み重ねで一曲一曲歌ってきました。もし歌を奪われたら、私にはなにも残されていません」
歌うために生きている人の歌だから、リスナーは胸をしめつけられる。