くらし

よろこびも悲しみも彩り豊かに描くピアノ。ピアニスト、国府弘子さんの新作『ピアノ・パーティ』。

  • 文・神舘和典
国府弘子(こくぶ・ひろこ)さん●ピアニスト、作曲家、編曲家。

ピアニスト、国府弘子さんが新作をリリースした。タイトルは『ピアノ・パーティ』。テーマは「命」。

「2019年に還暦を迎え、ふり返ると楽しいこともたくさんあったし、つらい体験も経てきました。でもね、そういう人生のなにもかもを“パーティ”に見立てて、このアルバムをレコーディングしました」

CDは国府さんの還暦バースデーライヴの客席の拍手から始まり、メンデルスゾーンの「結婚行進曲」をモチーフにした「ブギウギ・ウェディング」、病気からの再生がテーマの「リボーン」、90歳を迎えた自身をイメージした「ジャズ婆ちゃん」など、10曲が収録されている。

「編成は、22年間一緒に演奏している自慢のピアノトリオが中心です」

人生は山あり谷あり。ところが、つらい体験がテーマでも、かつて乳がんを患った苦しい時期の演奏でも、国府さんのピアノの音はラテンテイスト。きらきらと輝いて聴こえるのが魅力だ。3人の演奏でも、オーケストラのように華やかで色鮮やか。

「過去にはダークな音に憧れた時期もありました。でも、多くのリスナーのかたに明るい音をほめていただき、元気になった!と言っていただいて。今の自分の音色が大切に思えるようになりました」

今回のレコーディング後、実は国府さんは心筋梗塞の発作で倒れた。

「開演前に心臓を鷲づかみにされたような激痛に襲われ、集中治療室へ。シャンパンで乾杯するジャケット写真のこのアルバムが、遺作になるところだった……。知らず知らずのうちに身を削っていたのでしょうね。いいテイクが録れるとうれしくて、夜が明けるまで聴き続けたので」

それでも驚異的なスピードで、ライヴを行える体にまで回復した。

「復帰後、なぜか耳が研ぎ澄まされ、メンバーの演奏がクリアに聴こえて、それに応じる自分のピアノのアプローチが変わりつつあります」

今後のライヴでは“新生・国府弘子”の音が聴けそうだ。

『ピアノ・パーティ』

人生の万感をピアノで描いた10曲。ラッツ&スターの「め組のひと」のジャズ版など、豊富な共演歴で多彩なアプローチになったからこそのカバーも楽しい。ビクター。3,000円。

国府弘子さんのライブ情報等の詳細は http://kokubuhiroko.net/

『クロワッサン』1016号より

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