パン生地を成形、オーブンの様子を確認、揚げ物をフライヤーに入れながら……。笑顔を浮かべつつ、いくつもの作業を難なくこなしていく、金原勇三郎さん。別のお店で18年修業をした後独立し、西荻窪のこの地でパン屋さんをスタート。84歳の今も毎日朝5時からパンを焼いている。
「ここはもともと清水さんというパン職人が、『しみずや』を開いていたんです、その方が引っ越すことになって僕に声がかかり、名前をそのまま引き継いだ。看板とかハンコとか、作り直すのお金がかかるしね(笑)」
今は昼過ぎからの営業だが、かつては早朝から営業しており、近所の女子校と男子校の生徒が通学途中に立ち寄る人気の場所だった。
「8時半になると学生たちで店先が黒山の人だかりになる。あんまり混むものだから、女子校では『あの店に行くと風紀が乱れる』って立ち寄り禁止になっちゃった(笑)」