「着付けを終えて控室を出た瞬間、私の姿を見て、母が涙ぐんで。私じゃなくて孫の結婚式なのに(笑)。でも、そんな母を見ていたら、親孝行できたかなと思いました」
母だけではない。父も大いに喜んでくれた。
「実は、我が家は、鎌倉時代の武士・伊東祐隆(すけたか)の一族なんです。男きょうだいがいないため、長女の私が『庵木瓜(いおりにもっこう)』という家紋を受け継いでいて、その家紋の入った留袖姿が、やはり父には相当うれしかったようです。夫も子どもたちも『着物姿を初めて見た』と喜んでくれましたし、着るだけで家族がこんなに笑顔になるなんて、着物ってすごいなって」
そんな中山さんは、これまで着物の収納に悩む人を数多くコンサルティングしてきた。
「頻繁に着る方はご自分の整理法を持っていらっしゃるのですが、たまにしか着ない方に問題が起こりがちです。とても多いのが、あちこちにばらばらにしまっていて、どこにどの着物があるのか分からなくなっているケース。着物バッグなど小物類は知らず知らず奥に押し込まれて、金具部分が変形してしまっていることもありますね。枕棚にとりあえず片づけたものの、出しにくくて結局着ないというパターンもよくお見かけします」
そんな着物収納問題のあれこれ、中山さんのメソッドは、着物+帯+帯揚げ+帯締め、購入時のコーディネイト一式をまるまる一枚の畳紙(たとう)に収納するというものだ。
「着物は着物、帯は帯とアイテム別の収納が一般的ですが、たまに着るだけの方にとっては、一つ一つ探すのに時間がかかり、着るのが億劫になってしまいます。〝一式セット収納〟なら、着たい時にベストのコーディネイトをすぐに取り出せますから」
桐たんす、不織布ケースなど、様々な着物用収納グッズがあるが、
「押し入れ収納用の桐たんすは、すっと取り出せるキャスター付きのものを選んでください。そこに一軍のセットをしまいます。二軍、三軍のセットは不織布ケースに収納しますが、二軍はそこそこ取りやすい段、三軍は枕棚へ。着物というカテゴリーで一括りにするのではなく、使用頻度によって使うグッズも収納位置も変えてしまっていいんです。もちろん、時には三軍の着物を着たい日もありますから、枕棚からすぐ取り出せるよう、必ず脚立も一緒にしまっておくこと!」
そう言って微笑む中山さんは、今、着付けを習うつもりだという。
「今回、着物が予想外に楽しくて、開眼しました。実は襦袢も新調したんです。着物収納の新しいアイディアが生まれたら、またご紹介しますね」