「生け花と着物には、共通点が多いことを感じます」
冬の朝の光を柔らかに受け止める、宋代の白磁壺。そこに清楚な木瓜(ぼけ)の枝を挿しながら、山根奈津子さんはそう微笑んだ。昭和2年創流の華道「真生流」副家元として、母である家元・山根由美さんを支えている。
「たとえば格の高い松に野の花を合わせてしまうと、軽過ぎてちぐはぐな印象になります。個性の強い花器には何種類も花を入れず、きりりと一種で生けたほうが、お互いが映える。花器、そして花材同士の釣り合いが非常に大切なのですが、それは着物でも同様ですよね。着物と帯、それぞれの模様や素材の格が釣り合って初めて、真におしゃれな着姿になるように思います」
そんな山根さんは、数メートルもある枝物を用いて大作を生ける日は洋服で取り組むが、花展の会期中や華道団体のパーティーなど、公の場にはほとんど着物で出席するという。
「特に流派の花展では、お弟子さんたちが楽しみにしてくださるので、必ず着物を選びます。初日や最終日には訪問着、中日には小紋や紬を着ることもあり、会期中に変化をつけるようにしています」
毎年行事が続き、しかも代々山根家は数多くの着物を所持する。管理が大変そうだが、
「どんなにスケジュールが立て込んでいても、必ず毎回のコーディネイトを記録して、すぐ参照できるようにしています。名古屋なら名古屋、一つの場所について、最低5年間は同じ着物を着ないよう心がけているんですよ」