くらし

夏の終わりのスタンダード、ビーチボーイズの名曲【高橋芳朗の暮らしのプレイリスト】

ビーチ・ボーイズ 『All Summer Long』

郷愁を強く刺激する夏の終わりのスタンダード。

そろそろ、夏の終わりを歌った曲が聴きたくなる時期。洋楽ポップスの定番として真っ先に思い浮かぶのは、現地アメリカでもスタンダード化しているビーチ・ボーイズの「All Summer Long」。1964年の作品です。

「All Summer Long」が夏の終わりの歌として定着した背景には、この曲が映画『アメリカン・グラフィティ』(1973年)のエンドロールで使われたことが影響しています。

1962年の夏のカリフォルニアを舞台に、新たな旅立ちを控えた高校生たちの夏休み最後の一夜を描いた『アメリカン・グラフィティ』は、夏の終わりと青春の終わりを見事に重ね合わせた物語でした。

そして、アメリカが1964年のトンキン湾事件を契機にベトナム戦争に本格介入することを考えると、『アメリカン・グラフィティ』は「無邪気なアメリカ」の終焉も示唆していると言えるでしょう。

映画の最後に流れる「All Summer Long」が一定世代のアメリカ国民の郷愁を強く刺激するのは、もはやこの曲が夏の終わりに留まらない「喪失」の象徴として響いてくるからなのかもしれません。

「僕らは夏を思いきり楽しんだ。夏のあいだ、君と僕はずっと一緒だった。でも、まだまだ君のすべてはわからない。夏のあいだ、ずっと僕らは自由だった。でも、そんな夏ももうすぐ終わってしまう。僕たちだけ、ずっとこのままにしておいてくれたらいいのに」

「All Summer Long」を収録。上から、ザ・ビーチ・ボーイズ『All Summer Long』、映画『アメリカン・グラフィティ』のOST『Highlights from the Soundtrack of American Graffiti』。

高橋芳朗 さん (たかはし・よしあき)

音楽ジャーナリスト

著書に『ディス・イズ・アメリカ「トランプ時代」のポップミュージック』(スモール出版)など。

『クロワッサン』1100号より

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