それでも、その様子をにしおかさんは、「母が怒り出す」とは記すが、「母に怒られた」という言葉は使わない。そこに被害者意識はない。だから、だれも悪者にしない。にしおかさんの視点で選び取られた言葉たちは、泥臭く過酷な状況にあって、温かく、笑いさえ誘う。
「母の介護は、自分が元気でいられる範囲のことをしています。最初は何に疲れているかさえわからずヘトヘトでした。今は、自分を大事にすることを意識しています」
ウォーキングやヨガに耽り、無心になる。自分の時間を作り、ほかに皺寄せがいったとしても、しょうがないと腹をくくる。介護は、際限がなく、答えがないからこそ、全部はやらない、追い込まない。