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【山田ルイ53世のお悩み相談】このまま芸人を続けていいのか悩みます。

お笑いコンビ髭男爵のツッコミ担当で、作家としても活動中の山田ルイ53世さんが読者のお悩みに答える連載。今回はお笑い芸人を続けるかやめるか悩む女性からの相談です。
  • 撮影・中島慶子

<お悩み>

昨年某お笑い養成所を卒業しました。現在は一応プロの芸人として活動してはいるものの、正直元からお笑いが大好きだったわけでもなく、高校卒業後に進路決定に悩み、容姿のコンプレックスや色々な劣等感から半ば投げやりになって入学したので、売れたいなどの願望も特になくなんとなくバイトしながらの生活を送っています。
親とはほぼ喧嘩のような形で上京したものの、やはり今になっては親孝行しなくては、という思いとこのまま何となくお笑いをやっていていいのか、という焦りがあります。
かといって他にやりたい事もなく、お笑いを辞めると本当に人との繋がりが無くなりそうで怖い気持ちもあります。
自分で決断すべきなのは勿論ですが、これから私はどうしていくべきなのでしょうか。

(佐々木/女性/お笑い芸人をやっている20代のフリーターです。)

山田ルイ53世さんの回答

芸人として活動中だという佐々木さん。
特にお笑いが好きでもなく、
「売れたい!」
といった願望もなく、バイトに精を出す毎日とのこと。
「このまま芸人を続けて良いものか?」とお悩みですが、正直、筆者にはどうともお答えのしようがありません。
仰る通り、「自分で決断すべき」なのもそうなのですが、そもそも“プロの芸人”という言葉に違和感があるからです。

芸人に限らず、“プロ”と“アマ”をあえて線引きするのであれば、「その仕事で飯が食えているかどうか?」だと筆者は思っています。
いや、考え方は人それぞれですし、“芸人”という肩書きなど所詮は自称。
誰がどう名乗ろうが勝手なわけですが、その一方で、養成所を卒業しようと、芸能事務所に所属していようと、生計が立てられないのであれば、
「私はプロだ!」
と言ってみたところで、虚しいだけではないでしょうか。
……とひとまず先輩風を吹かせてみましたが、かつての筆者も似たようなものでした。

中2の夏から不登校、そのまま6年間の引きこもり生活。
20歳手前で大検を取得して、地方の大学に潜り込むも、ほどなく失踪同然で上京し芸人を志しました。
“志した”といっても、「絶対、売れてやる!」といった若者らしい野心や気概はゼロ。
相談者と少し違うのは、履歴書が実質“中卒”で、白紙同然だったことです(あくまで当時の筆者がそう思っていた、という話ですが……)。
おまけに、大学やバイト先の友人に両親、とにかく、誰にも何も告げず全ての人間関係を断って上京したので、コネも伝手もない有様で、就職もままならなかった。
詳しくは拙著「ヒキコモリ漂流記」に任せますが、“人との繋がり”以前に、“社会に入っていけない”状況で、
(お笑いやめたら、いよいよやることが無いなー……)
と八方塞がり。
つまり、“好きか嫌いか”は、何かを続ける理由にも、辞める理由にもなり得なかったのです。

相談者の文面からは、
「実家へ戻ろうかな……」
とお考えのようにも窺えるので、ご両親との関係性は、“絶縁”というほど決定的に破綻しているわけではなさそう(違ったら申し訳ない)。
その点は一安心ですが、一方で、何かにつけて持ち出される“親”の身になれば、それを「孝行」と言うのも微妙な気がします。

もしかすると、
「好きなことを見つけなきゃ!」
「好きなことを仕事にしなきゃ!」
という考えに囚われ過ぎてはいないでしょうか。
勿論、素晴らしいことでしょうが、筆者は常々、
「なれた自分でやっていく」
というのも悪くないと思っています。

筆者の知る限り、世に出る芸人というのは、総じて芸に対しては真面目。
誰もがやったことのないネタ……“発明”を成し遂げることでしか、お声が掛かることはないからです。
乱暴な物言いですが、好きでも嫌いでもなんとなくでも、そこはどうでも良い。
しかし、「食うために」力を尽くせないのであれば、色々考え直した方が良いかもしれません。
お互い、精進しましょう。

山田ルイ53世●お笑いコンビ、髭男爵のツッコミ担当。本名、山田順三。幼い頃から秀才で兵庫県の名門中学に進学するも、引きこもりとなり、大検合格を経て愛媛大学に進学。その後中退し、芸人へ。著書に『ヒキコモリ漂流記』(マガジンハウス)、『一発屋芸人列伝』(新潮社)、近著に『一発屋芸人の不本意な日常』(朝日新聞出版)。
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