くらし

【山田ルイ53世のお悩み相談】コミュ力のない息子の将来が心配で夜も眠れません。

お笑いコンビ髭男爵のツッコミ担当で、作家としても活動中の山田ルイ53世さんが読者のお悩みに答える連載。今回は人付き合いが苦手という大学生の息子の母親からの相談です。
  • 撮影・中島慶子

<お悩み>
私には、双子の男の子がいます(20才になります)。二人とも大学生ですが、一人が人付き合いが苦手で心配です。親の私が苦手だった事もあり、夫は転勤族であまり外に出さずに育ててしまいました。今は、県外の大学に通い一人暮らしをしています。
就職するには、コミュニケーションをしなくてはならないのに、一人でいるのが居心地がいいみたいです。
将来が心配で、夜も眠れません。
何か、アドバイスをお願いします。
(チエケーキチ/女性/40代の専業主婦です。双子のもう一人は、一緒に暮らしています。)

山田ルイ53世さんの回答

息子さんの将来が心配で、夜も眠れないというチエケーキチさん。
相談者によれば、「人付き合いが苦手」という息子さんですが、それがどの程度のものなのか、残念ながら文面から窺い知ることは出来ません。
というより、彼は今まさに一人暮らしをし県外の大学に通っているわけですから、「あまり外に出さずに育ててしまった」などと悔いる必要はない気がしますし、少なくとも現時点で、息子さんが社会に出て行くにあたって、何か支障があるようには筆者は思いません。

また、「一人でいることが心地いい」というのは、別に悪いことではありません。
実際、そういう人も多い。
筆者は、"引きこもりのモバイル化"と呼んでいますが、電車の中でも皆一人でスマホ画面に没入し他者を寄せ付けぬ空気を醸し出しています。

双子のもう一方、相談者と暮らしている息子さんについては、特別心配しておられぬご様子。
もしかすると、"親元を離れ初めての一人暮らし"中の我が子が心配だ、という単純な話ではないでしょうか。
相談者にとって長い間そこにあった、「息子が2人、しかも双子」という愛すべき光景。
そこから、一人欠けたときの喪失感、寂しさは小さくはないだろうなと想像します。

むしろ、心配なのは相談者の方かと。
ご自身がお持ちの、人付き合いに対する苦手意識等々、
「息子もそうに違いない!」
と重ね合わせ過ぎていませんか。
だとすれば、これを機に思い切って子離れするのも良いかもしれません。
いくら心配しても、息子さんの人生は息子さんのもの。
彼の人生をあなたが生きることは出来ないのです。
……見当違いなら、申し訳ないですが。

「就職には、コミュニケーションが取れなければならない」と仰いますが、コミュニケーション能力というザックリとした概念を、更に得意・不得意の両端でザックリと語るのはあまり意味がありません。
まあ、筆者などは、「話しやすい人だよ!?」という前評判のある人物や、自分でもそう思ってるんだろうなと感じる人物に遭遇すると、むしろ、
(話しにくいな……)
と思ってしまう人間なので、論外ですが。

筆者は、「僕にだって出来たのだから君も!」「私になれたんだから、誰でも!」式アドバイスは、あまり意味がないと思っています。
人それぞれ事情もスペックも違うので、結局、「俺は出来た!」「私は成れた!」と自慢話を聞かされただけになる場合も多いからです。
ましてや、
「いや、言うほどお前が成功してないやん!」
という背筋が凍るツッコミを受けるリスクの高い一発屋では……しかし、今回はあえて言います。
6年間引きこもっていた筆者が、芸人なんて仕事をしているのだから大丈夫……とは言い切れませんが、そこまで心配することではないのかなと思います。
とりあえず、安眠して下さい。

山田ルイ53世●お笑いコンビ、髭男爵のツッコミ担当。本名、山田順三。幼い頃から秀才で兵庫県の名門中学に進学するも、引きこもりとなり、大検合格を経て愛媛大学に進学。その後中退し、芸人へ。著書に『ヒキコモリ漂流記』(マガジンハウス)、『一発屋芸人列伝』(新潮社)、近著に『一発屋芸人の不本意な日常』(朝日新聞出版)。
⇒ 公式ブログ

この記事が気に入ったらいいね!&フォローしよう

この記事が気に入ったらいいね!&フォローしよう

SHARE

※ 記事中の商品価格は、特に表記がない場合は税込価格です。ただしクロワッサン1043号以前から転載した記事に関しては、本体のみ(税抜き)の価格となります。

人気記事ランキング

  • 最新
  • 週間
  • 月間