くらし

生活に不安はなかったけど、自分の生き方に不安があったの――K・Yさん(ブチック経営)

1977年創刊、40年以上の歴史がある雑誌『クロワッサン』のバックナンバーから、いまも心に響く「くらしの名言」をお届けする連載。今回は、離婚を機に自立した女性の言葉を取りあげます。
  • 文・澁川祐子

生活に不安はなかったけど、自分の生き方に不安があったの――K・Yさん(ブチック経営)

1979年2月25日号「離婚で転身」より

1冊を通して「転身」をテーマにした1979年2月25日号。女性にとって人生の大きな転機になりやすい「離婚」をバネに飛躍した女性7人にインタビューした特集が組まれています。

専業主婦から美容院や喫茶店をはじめたり、作家になったり。自立して生きる道を選んだいま、「何をしても楽しい」と語る人もいれば、「できれば離婚はしないほうがいい」という人もいて、その心境は一様ではありません。

生活に不安はなかったけど、自分の生き方に不安があったの――K・Yさん(ブチック経営)

そのなかでピックアップした名言の主は、20歳で結婚し、3年後に夫の女性問題で離婚したという26歳の女性。1歳9ヶ月の娘とともに東京から大阪の実家に戻り、家業の洋服屋を手伝ったのち、子どもを両親に預けて単身上京。雑貨を扱う店を開いたあと、洋服のメーカーをつくることに。その後、子どもを呼び寄せ、親子水入らずの生活を謳歌しているといいます。

今回の名言は、彼女が実家にいたときに感じた「このまま生きていっていいのか」という漠とした不安が言語化されています。彼女は離婚後にこう感じましたが、離婚前に似たような不安を感じる人も案外多いのではないかと思います。

生活の不安は、もちろん何より重くのしかかるものです。しかし、その不安が解消されたら万事解決かといえば、そうではない。そんな人間の複雑な心理を垣間見せてくれるフレーズでした。

※肩書きは雑誌掲載時のものです。

澁川祐子(しぶかわゆうこ)●食や工芸を中心に執筆、編集。著書に『オムライスの秘密 メロンパンの謎』(新潮文庫)、編著に『スリップウェア』(誠文堂新光社)など。

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