離婚は結婚した人間の選択できる生き方である――白石かずこ(詩人)
文・澁川祐子
離婚は結婚した人間の選択できる生き方である――白石かずこ(詩人)
離婚をすすめるかのような衝撃的なタイトル。この特集が組まれた背景には、1970年には約9万6000件だった離婚件数が、1977年には約12万9500件と急激に増えたことがあります(ちなみに離婚件数のピークは2002年の約29万件、2018年は約20万7000件と減少しています)。
当時、妻側の離婚の申し立て理由ベスト3は<夫の暴力、浮気、性格の不一致>。編集部は<昔だったら、なぐられるのが当然で、子どもの将来を考えてひたすらがまんしたのが、忍従なんかまっぴら、自分の人生を生きよう、というのだ>と綴り、離婚経験者の声を掲載しています。
今回の名言の主、詩人の白石かずこさんもそのひとり。離婚を目的で結婚する人はいないから、結婚をまっとうできればそれはとてもよいことだし、はなから独りの生き方を選ぶのもよし。ただ、結婚してみて失敗したと思ったときは、離婚するのもひとつの選択肢。<それをどうその後の生き方のコヤシにするか>だと語ります。
そのためには<まづ経済的に自立、次に精神的に自立、そしてこの結婚にしばられない孤独で自由な生き方を、存分に楽しみ、活かすことを心得ないと、ハピイにはなれない>と、いま聞いても違和感のない言葉を発しています。
当時は、いまよりさらに女性の経済的自立がむずかしかった時代。このショッキングなタイトルには、自分らしく生きたいと思いながらも、一歩を踏み出せずに悩む女性たちへの最大限のエールが込められていたのでしょう。
※肩書きは雑誌掲載時のものです。
澁川祐子(しぶかわゆうこ)●食や工芸を中心に執筆、編集。著書に『オムライスの秘密 メロンパンの謎』(新潮文庫)、編著に『スリップウェア』(誠文堂新光社)など。
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