くらし

【堀本裕樹さん×向井 慧さん 対談】俳句のことを、ゆっくり話そう。

俳句を詠み、講評するテレビ番組も人気でいまやたしなむ人は数百万人!?
初顔合わせのふたりがその魅力に迫る。
  • 撮影・天日恵美子 文・三浦天紗子

芸人だからこそ、1位を取って、番組を盛り上げたいんです。(向井さん)

風景の中に自分が入り込むぐらいの気持ちで詠んでみるといいですよ。(堀本さん)

(左)堀本裕樹さん 俳人 (右)向井 慧さん 芸人

昨今の俳句ブームの立役者のひとり、堀本裕樹さんと、芸能人が多彩な才能を競い合うバラエティー番組『プレバト!!』(MBS)で隠れた才能を発揮する「パンサー」向井慧さん。どんな俳句談議となるのでしょう。

向井慧さん(以下、向井) こうして俳句のちゃんとした先生とお話しさせていただけるなんて、ちょっと緊張します。

堀本裕樹さん(以下、堀本) いえいえそんな。僕、お笑い芸人だと又吉直樹さんと親しくさせていただいているんですが、向井さんは又吉さんと以前同居してたんですよね。

向井 はい。お互い仕事も何もない頃から一緒に遊んでいただいていて。知り合ってもう13年とかですかね。

堀本 それこそ又吉さんと僕との共著『芸人と俳人』の中にも向井さんの話が出てくるんですよ。『プレバト!!』、たまに見ています。又吉さんに、向井さんと俳句の話をしたりするのかと聞いたら、あまりしたことはないと。でも向井さんのことは「あらゆることに感度が高い」とすごい褒めてました。

向井 番組で俳句をやることになったとき、一切やったことないのにと途方に暮れたんです。でも、又吉さんに具体的なアドバイスをもらったら、どうしたって又吉色が出てしまう。

堀本 出ますね。少なくとも僕は、そのニュアンスがわかると思う。

向井 それもイヤで。なので「今度、番組で俳句を作るんです。どうしたらいいですかね」とざっくり相談したら、この本(カバンから堀本さんの著書『十七音の海』を取り出す)を1回読めと。「俳句の入り口に立てるというか、こんなふうに作ったらいいということが感覚的にわかると思うで」と。この対談のために、盛ってるわけじゃないです。

堀本 それはうれしいですね。

詠むときに大切なのは、伝えたいものを活かす覚悟。

向井 ただあの番組で、僕なんかが3位になっちゃうと、スタジオがものすごく微妙な空気になるんです。

堀本 芸人だったら、1位か最下位。いいか悪いかふり切れろと。

向井 プラス、いまの時代は芸人が最下位というのもベタというか……。司会の浜田雅功さんも、いちばんおいしいのは、芸人が、俳優さんや大御所の方と競って、最後にトップを取ることだと思ってるわけです。

堀本 ボケすぎというか、下手すぎてもつまらないということですね。

向井 まさに! 僕の場合は、いい成績を収めて浜田さんに喜んでもらいたいという気持ちがまずあります。お題をもらってから収録までだいたい1週間弱。その間は携帯の待ち受けにお題のイメージ写真を入れて、ずっと考えますね。番組で査定をなさっている夏井いつき先生もよく「写真の中に飛び込みなさい」とおっしゃいます。

堀本 そうですね。外から眺めてるだけじゃできません。夏井先生がおっしゃるように写真に入り込むくらいの気持ちでいかないと。たとえば、1位になったこの句、〈白南風(しろはえ)に揺れ干すシャツのバニラの香〉は、どうやって考えたんですか。

向井 これは窓の向こうに白いシャツが干してある写真でした。部屋に気持ちのいい風が通って、ふわっと香ってきたという感じを詠もうと思ったんですが、何の香りだろうと想像したときに、ある意味何でもよかった。シャツの白のイメージと、音がはまるからバニラにしたんじゃないかなと。

堀本 なるほど。実はそのとき大事なのは、向井さんが何をいちばん伝えたいかなんですよね。本当はバニラじゃないな、バラだなとか思いながら、音数が合うからバニラを選ぶのではなくて、バラだと思ったなら「絶対にバラの香を活かして作るぞ」という覚悟で作る。そうすると、他の誰のでもない“向井さんの句”になるんですよね。〈バニラの香〉を〈バラの香よ〉とすればバラも入る。「よ」という詠嘆を響かせているから、読み手にも、香りまでが伝わる感じになりますよね。

向井 ああ、そうか! 伝えたいことを優先しないとダメなんですね。たぶん僕が普通に思いつくことなんて、誰でも思いつくんです。それが最初に浮かんできてこれじゃダメだろうなということだけはわかるから、じゃあみんなの考えないところってなんだと。ただ、そういう潜り方をするためには、僕の場合ある程度時間が必要なんです。時間をかければかけるほどいいものができたという手応えが生まれることもあるし、実際に褒められたりするし……。「芸人なのに、なんで本気で俳句なんか考えてるんだ?」と思った瞬間もあったんですが、いつの間にかちゃんといいもの作りたいという気持ちになってました。

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