くらし

伊藤比呂美さん×枝元なほみさん 程よい距離感が心地よい、女の友情を長続きさせるコツは?

詩人として、料理家として。異なる分野で活躍する2人は数十年来の大親友。住む場所や家族構成が変わっても友情を保つ秘訣を聞きました。
  • 撮影・徳永 彩(KiKi inc.) 文・一澤ひらり

「どっちも自立していて、相手のことを考えるスタンスがいいんだね。」枝元なほみさん

右・枝元なほみ(えだもと・なほみ)さん 左・伊藤比呂美(いとう・ひろみ)さん 食べ物の話は尽きることがない。この日は母の味を昭和の記憶とともに懐かしみつつ、あれやこれやと。

2人は同い年の64歳。出会った20代前半から40年余り、つかず離れずのつきあいを続けてきた。長くアメリカに暮らしていた伊藤比呂美さんは、去年早稲田大学教授に就任し、現在は熊本から毎週上京して、親友のねこちゃん(枝元なほみさん)の家に滞在する。2人にとってお互いはどういう存在なのか、女友だちと長くつきあう秘訣などを語り合ってもらいました。

伊藤比呂美さん(以下、伊藤) いまは週に2日、大学の講義や演習があるので、それに合わせて熊本から東京へ来て、週の半分くらいねこちゃんのところに居候してるよね。

枝元なほみさん(以下、枝元) ひろみちゃんは毎週来てるけど、朝早く出ていって夜遅くに帰ってくるとリビングのソファで寝ちゃうものね。ちゃんと折り畳みベッドも買ってあるのに「ちょっと横になって目をつぶるだけだから」ってオヤジみたいなこと言って墜落睡眠(笑)。だから、2人でゆっくり顔を合わせる時間はあまりないかも。

伊藤 東京の朝のラッシュがイヤでイヤで、7時前には出るようにしているし、夜も帰りが10時ぐらいになっちゃう。でも帰ってくるとねこちゃんも遅くまで料理の試作とか、翌日の仕込みとかしてたりするから、ついでにキッチンカウンターで立ったまま何か食べさせてもらったりしてる。まるで野良猫みたいな居候だよね。

枝元 ふふふ。遅くなるとキャンプと称して研究室の寝袋で寝てたりして、帰ってこないこともあるし。

「うるさいこと全然言わないよね。いつでも何やってもいいよって。」伊藤比呂美さん

お互い何も期待しないのがいい。男だとそうはいかないもの。

伊藤 あたしね、夫を亡くして娘3人も独立して、アメリカから帰ってきたでしょ。ここまでひとり暮らしになるのって初めてで、寂しくってしょうがないの。ここに来ると、「ねえ」って言えば「なあに?」って返してくれる。何もなくても呼応してくれる相手がいるって、すごくありがたい。

枝元 ずっとひとり暮らしだったから、ひろみちゃんから「いまから帰ります」っていうメールをもらうと、おっ、そっか、って思う。でもそれを先に知りたいとは思ってないわけだし、先に知りたいと思ったらダメなんじゃないかとも思ってる。お互い何も期待していないのが楽でいいね。野良猫には期待しないもんね(笑)。それがゆる〜く共同生活していく秘訣かもしれない。男だとそうはいかないもの。

伊藤 お互いの男のことは全部知ってるけどね(笑)。こんなふうに長くつきあえるのは、私が子育てしたり、アメリカへ行ったり、親の介護したり、刻々と状況が変わっていくなかで柔軟に対応してくれたからだ思う。

枝元さんの家でゆる〜く共同生活を始めて1年ほど。笑いの絶えない2人。
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