くらし

【後編】たおやかなのに大胆で、自然体。夏木マリさんに学ぶ、生きるコツ。

年代・性別を問わず、「カッコいい」「素敵!」と賞賛される夏木さん。その圧倒的オーラの秘密を探るべく、過去から今に至る半生を語ってもらった。
  • 撮影・HIRO KIMURA(W) スタイリング・岡部俊輔(UM) ヘア・TAKU(CUTTERS) メイク・FUMIKO HIRAGA(SENSE OF HUMOUR) 文・一澤ひらり

「歳を重ねることも、顔のシワも嫌いじゃない」

夏木マリ(なつき・まり)さん●歌手、俳優、演出家。1952年、東京生まれ。’73年デビュー。’80年代以降は演劇をはじめ幅広い分野で活躍。’93年に立ち上げた「印象派」で身体表現を軸とした芸術表現を確立。

40代になるとようやく自分の歩く道が見えてきた。夏木さんがひとりで舞台をやってみようと1993年にスタートしたのが、自分の身体で表現するアートワーク「印象派」だ。そして、これはライフワークになっていく。

「モネやルノアールといった印象派の画家たちが、もっぱらインドアで絵を描いていた保守的な画家たちに対抗して、外に出て太陽の光の下で絵を描いてみようというムーブメントを起こしたでしょ? その気骨と反抗心に惹かれたんですよね」

企画・構成・演出をひとりで行い、パフォーマンスのために身体言語を磨き、自身を追い込んで高みを目指す。そんな途方もない作業に身を投じた。

「セリフに頼るのは好きじゃなかったので、体を使って笑ったり、怒ったりを表現したくて、『なんじゃこりゃ、こんなの見たことない!』っていう舞台を目指したんです。クリエーションだけでなく、資金繰りもやりましたが、気がつけば貯金がすっからかん。でも安定したいとは思わなかった」

「印象派」は、当初から8回までと決めていたが、その後はプレイヤーたちと創り上げるコンセプチュアルアートシアター「印象派NÉO」をスタート。国内外で高い評価を受け、来年6月には4作品目となる『ピノキオの終わり』が上演される。

「ひとりでやっていくことに体力的に限界を感じていたし、そこは仲間に補ってもらおうと思ったんです。踊れなくなったら、メンバーの身体言語に助けてもらおうと」

この26年間に及ぶ「印象派」シリーズは夏木さんを叩き上げ、真のクリエーターに成長させていった。

「物事の考え方がシンプルになりました。あるとき汗まみれで夢中になって踊っていて、ふと鏡を見たんです。そのときの自分の素顔を見て、この顔好き!って思ったんです。それまではメイクをしないと自信がなかったけれど、素顔も許せる。一生懸命やっていたり、打ち込んでいる姿はそれだけで美しいって思えました」

京都は、ノヴさんと結婚して初めて見つけた、「帰る」場所。

夏木さんは59歳のときに、パーカッショニストの斉藤ノヴさんと結婚する。

「もうすでに一緒に暮らしていたし、入籍にこだわる必要はなかったけれど、ノヴさんの母と家族になりたかったんです。将来、嫁の立場のほうが安心するだろうって思って(笑)。義母はもう90歳を過ぎていますが、元気でポジティヴな人。こっちが励まされていますね」

京都で暮らす義母と一緒に過ごす時間を大切にしたい。だから時間を見つけては京都へ「帰る」。東京生まれで戻る故郷を持たない夏木さんにとって、初めて見つけた「帰る」場所だ。

「ノヴさんとは食べ物の好みが合うから、うちめしが一番です。こう見えて料理は大好き。『印象派』で身体表現を追求するためには健康な体がベースになるので、食事は何より大切なんです。私たちに残された時間はそう多くはないから、どうせならおいしいものを食べたいでしょ。家では旬のいい食材を使って腕をふるいますよ」

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