くらし

伊藤比呂美さん×枝元なほみさん 程よい距離感が心地よい、女の友情を長続きさせるコツは?

  • 撮影・徳永 彩(KiKi inc.) 文・一澤ひらり

家族に近くて、自分にも近い存在。一緒にいる、いないは関係ないの。

伊藤 女が50を過ぎるとぶち当たるのが、親や夫の親の介護なんだよね。結婚しようがしまいが、子どもがいようがいまいが、みんな介護に直面する。そこで共感するというか、お互いやってるねっていう感じになる。その連帯感ともいえないような淡い感じが女友だちをつないでいると思う。

枝元 そうだね。私は母親が7年前に亡くなって、父親はこの間三回忌で、大変なこともあったけど、ひとりで背負い込まずにいろんな人に助けてもらえばいいってひろみちゃんに言われて、すごくラクになった。愚痴ではなくて、ただ話をしたいだけなんだよね。だから続いてるのかなって思うし。

伊藤 なんとなく春の日の霞のように寂しさみたいなものがあるときに、「ねえねえ」と言ったら「どうした?」って返ってくる。女友だちってこれでいいんじゃないかなって思う。もちろん、ほかに女友だちはたくさんいて、それぞれにつき合っているわけだけれど、ねこちゃんが一番家族に近い存在よね。

枝元 私もそう。家族に近くて、自分自身にも近い。いまはけっこう一緒にいる時間も多いけど、一緒にいようがいまいが関係ないかな。

伊藤 本当にねこちゃんがいてくれてありがたいって思う。ちゃんと地に足がついてあちこち歩きまわっている感じがするしね。料理研究家と詩人、業界がちょっと違うのもよかった。
枝元 きつねとたぬきぐらいの違い、って言ってたよね。まっ、私がたぬき、だわな。

それぞれ相手の気配を感じながら、各自の仕事をする。
料理上手な伊藤さんは、格好の味見役なのだった。
伊藤さんの感想を聞きながら、仕上げていく枝元さん。

【この日のごはん】レシピ・枝元なほみ

1.次の日の天とじ

天ぷらはだいたい作りすぎる。余った天ぷらを翌日、醤油で甘辛くグダグダ煮て、ご飯にのせて食べる。煮天丼は記憶の中の母の味だ。今回は玉ねぎと桜海老のかき揚げと舞茸天。フライパンにダシと醤油ときび砂糖、みりんを煮立て天ぷらを入れて温め、卵でとじた。天ぷらを作る時は、粉をビール(または炭酸水)で溶くとカラッと揚がる。

2.キャベツの梅昆布和え

キャベツ3~4枚(約150〜200g)はざく切りにし、耐熱ボウルに入れてふたかラップをしてレンジで加熱する(600Wで1〜1分30秒を目安に)。キャベツを刻み、叩いた梅干し1個分、昆布の佃煮(または塩昆布)と太白ごま油適量を混ぜ合わせる。皿に盛りつけ、しらすをのせる。梅干しと昆布の佃煮でちょうどいい塩梅に。

3.コリンキーとブルーベリーのサラダ

コリンキーはオレンジ色でころんとした形の、生食用かぼちゃ。種を避けて皮付きのまま薄切りにし、塩を振って混ぜ、少しおいてもんでから水気を絞る。グレープシードオイル、はちみつ、白ワインビネガー、好みでオレガノやグリーンペッパーなどを混ぜ、味をみて塩を追加したのち、ブルーベリーを合わせる。色も味も相性良し。

枝元なほみ(えだもと・なほみ)さん●料理研究家。劇団員、無国籍レストランのシェフを経て料理研究家に。農業支援団体「チームむかご」を立ち上げ、各地をまわる日々。
伊藤比呂美(いとう・ひろみ)さん●詩人。1978年、現代詩手帖賞を受賞してデビュー。2018年、早稲田大学文学学術院教授に就任。著書に『たそがれてゆく子さん』など。

『クロワッサン』1003号より

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