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【安藤なつさん×にしおかすみこさん】笑えないけど笑っちゃえ──こちら、認知症介護のお悩み相談室

終わりの見えない認知症介護。真面目に、時に笑いながら向き合ってきたお笑いタレントのお2人に、読者からのリアルなお悩みを聞いてもらいました。

撮影・北尾 渉 スタイリング・奥田ひろ子(にしおかさん) ヘア&メイク・遠藤芹菜(安藤さん)、白石有梨奈(にしおかさん) イラストレーション・ささきえり 文・保手濱奈美

【安藤なつさん×にしおかすみこさん】笑えないけど笑っちゃえ──こちら、認知症介護のお悩み相談室

話を聞いたのは…

にしおかすみこさん
お笑いタレント
1974年生まれ、千葉県出身。2007年、女王様キャラのSMネタでブレイク。2020年、実家に戻り、認知症の母、ダウン症の姉、酔っ払いの父の4人で暮らす。2025年11月、母が死去。実家での日々を綴った著書『ポンコツ一家』『ポンコツ一家2年目』が話題に。新刊は『ポンコツ一家 最後の2年』。

安藤なつ(あんどう・なつ)さん
お笑いタレント
1981年生まれ、東京都出身。2012年にカズレーザーさんとお笑いコンビ「メイプル超合金」を結成。叔父が介護施設を営んでいたことから、子どもの頃から介護の仕事を手伝い、介護の現場に関わること20年以上。介護福祉士の資格も持つ。共著に『知っトク認知症 家族と本人が自分らしく暮らし続ける超入門』。

お金の悩み

「お金を盗った」と疑われてしまいます

【安藤なつさん×にしおかすみこさん】笑えないけど笑っちゃえ──こちら、認知症介護のお悩み相談室

母は認知症になってから、お金にすごくこだわりを持つようになりました。近所に住んでいるのでよく会っているのですが、出かける時も肌身離さず通帳を持ち歩くようになり、見当たらないと「探しに来てくれ」と電話をしてきて……。ある時は、お金がないと騒いで、「あなたが盗ったんじゃないの!?」と疑ったり、怒ったり。もともとお金に執着するタイプではなかったのに。振り回されて困っています。

安藤なつ お金のことって、人の欲求が表れやすい部分だと思うんです。以前、対談した認知症を専門に診ている先生から、アルツハイマー型の場合は、欲求に関わることへの不安が大きくなりやすいって聞いたことがあります。そして、不安の矛先が家族など一番身近な人に向くケースが多いと。

にしおかすみこ もしもなっちゃんがこの相談者さんみたいに、お金を盗ったと親に疑われたら、どうする?

安藤 疑われたというショックはあると思うけど、そこはいったん置いて、「一緒に探そう」って親が納得するまでお金探しに付き合うんじゃないかな。

にしおか 「なんで私を疑うの?」って怒ったりせず?

安藤 そうですね。本人は本当にお金がなくなったと思っているので、おそらくすごく不安じゃないですか。そこをクリアにしてあげたい。でも、どうしても感情的になってしまったり、つらかったりしたら、無理せずプロの手を借りたほうがいいと思う。

にしおか 介護サービスを利用して、対応の仕方を相談するってこと?

安藤 私は仕事で介護に関わっていますが、その立場から考えると、やっぱり家族より第三者のほうが感情に左右されずに対応できると思うんです。その点、にしおかさんはすごいですよね。介護サービスを頼らず、自分でお母さんの介護をされていたわけですから。

にしおか いえいえ、そんなたいしたことしていないです(汗)。実は、私の母も「お金をとられた」と言っていたことがあって。でも、ウチの場合は父が酔っ払いで、飲み代欲しさに母や姉のお金を持っていくので、これに関して私は母が正しいと思っていました。

安藤 それはまた特殊すぎるなー。

にしおか だから、お金の管理は私がしていましたが、父は母をけしかけてお金を手に入れようとする。次第に母も父にお金を渡すため、私に「お金を返せ!」と何度も繰り返すように。認知症の症状とわかっていても、嫌になって通帳を叩きつけたこともありました。

安藤 すごくしんどかったと思いますが、その気持ちをどうしていました?

にしおか たまに暴言を吐いていました。「死ねー!」って言ってしまったこともあります。そうすると姉がよかれと思って、「たしかに~」と合いの手を入れてくる。いや~、もう〜自己嫌悪です(笑)。

安藤 本当にいろんな家庭があるので、介護の正解は一概には言えませんよね。にしおかさんの場合は、時には発散するのが、正解だったんじゃないかな。

できちゃう悩み 

デジタルデバイスを使った暴走を止めたい

【安藤なつさん×にしおかすみこさん】笑えないけど笑っちゃえ──こちら、認知症介護のお悩み相談室

ネットショッピングやLINEなど、認知症になる前から慣れ親しんでいたデジタル操作は、発症後も意外とできるものなのですね。母はショッピングが好きだったのですが、認知症になってからは節度がわからずスマホやタブレットで買い物しまくり! 独居なので寂しいのか、他愛のないことで一日に50〜100件ほどLINEがくることもあります。デジタルデバイスが母の手元にないと緊急時に困りますし、一体どうすれば……。

にしおか LINEが一日に50~100件って、なかなかの数ですね……。

安藤 それはさすがにうんざりしそう。全部に返信しようとするとストレスになっちゃうから、そんなに律儀に返さなくてもいいと思いますけどね。ただ、お母さんがなんでこんなにLINEを送ってくるんだろうっていう根本の理由を探ることは、やってみてもいいんじゃないかと思います。

にしおか 独居とのことなので、きっと寂しさもありますよね。

安藤 そうですね。もし可能なら会いに行く回数を増やすと、お母さんも少し落ち着くのかもしれません。

にしおか 私の母も、そこまで件数は多くなかったけど、私が外出している時に何度もメールを送ってきてましたよ。私は独身なので、例えば「結婚してほしい」「孫の顔が見たい」と繰り返し送ってくるわけです。それが溜まると「うるさい」って返信しました。でも母は「それでね」とまったく意に介さず話を続けてくる。今となっては懐かしい思い出です。私は、「自分にできることしかやらない」と思っていたので、メールも自分のタイミングで返信していました。

安藤 相談者さんは、お母さんがネットショッピングをしすぎることにも悩んでいますが、これはどうしたらいいんだろう。買い物が好きなら、ネットではなく、リアルな店に一緒に行くとか? 買い物の量を相談者さんがセーブできますし、なによりお母さんが昔好きだった店に行ったりすれば、いい刺激になると思うので。あとは、家にいる時にネットショッピングをしてしまわないように、Wi-Fiを切っておくことはできないですかね?

にしおか それができても、5Gとかネットにつながっていれば、買い物をしちゃうかも。とはいえスマホやタブレットを没収してしまうと、相談者さんが言うように緊急時に困りますよね。

安藤 この場合、ネットという文明の利器は忘れてもらって、連絡ツールを固定電話にするのはどうでしょう? それでもテレフォンショッピングをしてしまう可能性がありますが、住所や支払い方法などオペレーターさんとのやり取りが難しいと、決済までいかないと思うので。

にしおか 確かに! 固定電話にするのはいいかもしれませんね。そうすれば大量のLINEに悩まされることもなくなりますからね。

老老介護のケンカの悩み

認知症の母に父がイライラしてしまう

【安藤なつさん×にしおかすみこさん】笑えないけど笑っちゃえ──こちら、認知症介護のお悩み相談室

認知症の母を父が自宅で介護しています。母は同じことを何度も父に聞くので、温厚な父も「だから言ったでしょ!」と強い口調で返してしまうそう。ショックを受けた母から、泣きながら電話がかかってくることがあります。まだ介護認定を受けていないので、申請して母がデイサービスに通うなどすれば、お互いのストレスも少し減るかと思いますが、父は「そんなことしなくていい」と言い張って。なんとか説得できないものでしょうか。

安藤 デイサービスは行くと楽しい時間が過ごせると思うんですけど、一歩踏み込むまでのハードルが高いというか。そもそも介護認定を受けること自体が“老い”の現実を突き付けられるようで、抵抗感があるみたいですね。

にしおか 私の母は要介護認定を受けて、亡くなる前は要介護2でした。でもなかなか最初は認定を取るに至らなかったです。

安藤 それはなぜですか?

にしおか 母が嫌がったし、私にも迷いがありました。母と姉って最後まで家で一緒に過ごしたい人たちなんです。叶えてあげたいけど、先々のことを考えると、やっぱり要介護認定を取ったほうがいいんじゃないか……。でも例えば母がデイサービスを利用したら、姉が家に残ってしまう。私は母の代わりはできないし、働きたい。じゃあ姉は福祉の施設にお願いしたとします。そうすると家にいたい二人がバラバラになって、どうでもいい私が実家に残る。これって誰のための幸せなんだろうと思って、腰が重い時期がありました。

安藤 家族によって状況はそれぞれ違いますからね。介護というより生活の延長線上だったから、プロの力を借りる方向に結びつきづらかったのかも。

にしおか ただ、相談者さんのご両親のように老老介護とまではいかないながらも、私はアラフィフ。更年期でホットフラッシュがあったり、五十肩で指が痺れたりするわけです。そうするとペットボトルのキャップが開けづらいんですよ(笑)。夏の炎天下のなか、母を病院に連れて行く道中にこまめに給水してほしいのに、ペットボトルを開けられなくて……。母の見守りと、自分の老いに対する揺らぎとで、余計に疲れる時もありました。

安藤 にしおかさんの年齢でも大変なのに、老老介護となると相談者さんのご両親が共倒れしてしまわないかと心配です。デイサービスを検討しているなら、一度見学に行ってみるといいと思いますよ。デイサービスは老人が集まる鬱々とした場所というイメージがあるのかもしれませんが、実際に行ってみるとそんなことはないと思うので。

にしおか 二人でずっと家にいると、ケンカもありますよね。ウチもそうでした。ほぼ毎晩です。母はケンカしたことを忘れて何度も父に突っかかります。父も酔っ払っているので止まりません。私は早い段階で仲裁に入るのを諦めて、ノータッチになりました。

安藤 どうしたら終わるんですか?

にしおか 最後は母が地団駄踏んで、引きあげてましたね。あと、姉が歌って雰囲気を緩和させるとか。だいたい十八番の「蛍の光」。姉は優しいです。

  • にしおかすみこ

    にしおかすみこ さん

    お笑いタレント

    1974年生まれ、千葉県出身。2007年、女王様キャラのSMネタでブレイク。2020年、実家に戻り、認知症の母、ダウン症の姉、酔っ払いの父の4人で暮らす。2025年11月、母が死去。実家での日々を綴った著書『ポンコツ一家』『ポンコツ一家2年目』が話題に。新刊は『ポンコツ一家 最後の2年』。

  • 安藤なつ

    安藤なつ さん (あんどう・なつ)

    お笑いタレント

    1981年生まれ、東京都出身。2012年にカズレーザーさんとお笑いコンビ「メイプル超合金」を結成。叔父が介護施設を営んでいたことから、子どもの頃から介護の仕事を手伝い、介護の現場に関わること20年以上。介護福祉士の資格も持つ。共著に『知っトク認知症 家族と本人が自分らしく暮らし続ける超入門』。

『クロワッサン』1174号より

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