各地に伝わる保存漬けは、旬の野菜を漬けて冬の野菜不足を解消するために発達した備蓄食です。
大きく分けると、下漬けした漬け物の乳酸菌が増え、徐々に酸っぱく変わる乳酸菌発酵の漬け物と、酢や味噌、醤油などに漬け込んだ発酵を伴わない漬け物に分けられます。発酵食としてここで紹介するのは乳酸発酵した漬け物。
野菜にはたくさんの乳酸菌がついているので、これを塩漬けにすると、浸透圧で野菜の水分が出てきて、その漬け汁で乳酸菌が繁殖します。乳酸が作られ、酸味と旨みが生まれると同時に乳酸菌がたっぷり摂れる食材になるのです。
その恵みをいただくのが乳酸発酵の漬け物の魅力。野沢菜や高菜をはじめとする青菜の発酵漬けは地域ごとにさまざまな物が伝えられてきました。
野菜の水分を出しやすいので塩漬けすることが多いのですが、醤油などを加えたものも。木曽のすんき漬けは塩を使わず、乳酸菌だけで発酵しためずらしい漬け物です。名前のよく似たすぐき漬けは京都の名産で塩を使っています。ここから植物性乳酸菌が見つかりました。
乳酸発酵が進むとどんどん酸っぱくなっていきますが、それに伴って乳酸菌が増えていくのかというとそうではありません。たとえ塩分に強い乳酸菌でも塩の多い漬け物はとっても過酷な環境です。
やがて菌は死んでしまうので、乳酸菌が活発に活動をしているうちに食べるのがベスト。菌が死んでも酸は残るので、酸味は乳酸菌の活動の目安にはなりません。
長く漬けるとそれだけ塩分が吸収されます。保存漬けは乳酸菌も摂れますが、塩分が多いことにも注意が必要です。