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医師に聞く「脳の朝活」の重要性と、毎朝の定番にしたい脳のための20の簡単な習慣

朝はだるくて頭はぼんやり。
実は、それ、脳がきちんと覚醒していないからかも。
脳が本来の力を取り戻せる、朝の過ごし方の極意がこちら!
  • イラストレーション・松栄舞子 構成&文・中條裕子

なぜ朝に脳を覚醒させることが大切なのか?

「もともと人間は太陽の動きに連動したほうが、脳の生理的な仕組みを活用しやすい」と、脳内科医にして1万人以上の脳を診断・治療してきた加藤俊徳さん。特に朝は、夜の睡眠中の脳から昼間の活動する脳へと変わる時間帯。

「朝、きちんと覚醒させることで脳は本来持っている一番よい働きが昼間できるようになります。早朝覚醒など脳の不調が生み出す不定愁訴を改善することは、日中の活動に有効です」

実際、朝に脳を覚醒させていない人は昼に向かい緩やかにピークを迎え、その後は夜に向かって緩やかに覚醒度が下がっていく。一方、起床時に脳の覚醒度を上げておくと、昼前にピークを迎えて夕方まで維持した後、夜になれば急激に下がる、という形になる。

「“早起きは三文の得”という言葉に私も以前は実感がなかった。でも、朝から元気で活動できる状態にすることは実は脳にとって正しい健康法なのです」

脳を覚醒させるという意識を持つだけで、日中の充実度は変わるという。それには、夜どう過ごすかも無関係ではない。遅い時間まで食事する、ダラダラ起きている、それでは翌朝スッキリ目覚めて活動することは難しい。脳の健康は朝を基点にすると整いやすいことを念頭に、夜の過ごし方も考えて。

脳を覚醒させることでどんな変化があるのか?

以前は、睡眠を削ってまで仕事をするなど、実は自分自身も昼夜の区別ができていなかった、と加藤さん。

「昼に脳のピークを作ることができていない人は、昼も夜も同じと考えがち。実はそれこそが、脳の感度が落ちている証拠。朝に脳をしっかり覚醒させると一日がより効率的に使えます。昼間にだるい、眠いというのは脳の働きが活性化していないから。生理的に起きていても脳が覚醒していないのです」

脳が充分に目覚めずに一日を過ごすと、頭がぼうっとしている状態が続き、集中力や注意力も持続しない。精神的にも余裕がない状態で、感情的になりやすい傾向に。反対に、朝にきちんと脳を覚醒させると、日中に脳や体の機能が活性化。疲れを感じにくく、充実した一日を過ごすことができる。

「脳が健康になると、日中に気持ちがどんどん前向きになります。新しいことに挑戦することができ、それが脳の活性化につながる。記憶力も上がり、自分がしていることに確実性があるので、自信が持てるようにもなります」

そのように日中を過ごせば、夜にはぐっすり眠れ、朝にはまたすっきりと目覚めることができる。よい循環が生まれて、脳とともに精神的にも身体的にも健康な状態が維持できるように。

脳の朝活を実践するために大切な脳番地とは?

(1)運動系脳番地|体を動かすこと全般を司る。
(2)視覚系脳番地|目を介して入力されるデータを処理。
(3)聴覚系脳番地|耳で聞いたことを脳へ集積させる。
(4)伝達系脳番地|他者とのコミュニケーションを担う。
(5)思考系脳番地|意欲や判断力にも関わる脳の司令塔。
(6)理解系脳番地|情報を読み解いて洞察力を発揮。
(7)記憶系脳番地|情報を保管して適切な時に取り出す。
(8)感情系脳番地|喜怒哀楽といった感情表現に関わる。

そもそも脳は1000億個を超える神経細胞から構成されており、その中で同じような働きを持った細胞同士が集まって集団となっているのだという。

「それらの集団が脳番地です。脳番地は神経細胞の種類と働きの違いにより、右脳と左脳に約60ずつ、全体に約120に区分しています。これをわかりやすく、機能ごとに8つに分けました」

それが、運動系、視覚系、聴覚系、伝達系、思考系、理解系、記憶系、感情系といった、8つの脳番地である。

そして、朝に脳を覚醒させるには、どの脳番地をどのような順番で刺激を与えるかが鍵となってくる。なぜなら、起き抜けのまだ目覚めていない脳に、いきなり高度な働きを要求してもうまくいかないから。

まずは運動系脳番地で目覚めを促し、次に視覚や聴覚で脳に外界の情報が入る状態を作る。その後に、伝達、思考、理解といった脳番地を順番に刺激していくことで、よりスムーズに脳は覚醒できるのだという。

「脳の番地は連動しやすい。たとえば、脳が朝きちんと覚醒し、記憶力が上がると、自分に自信が持てたり、瞬間の喜怒哀楽の感情が湧きやすくなったり」

脳番地を効果的に刺激すれば、さまざまに連動して働き出すことで脳はより充実した力を発揮してくれるのだ。

具体的には朝どんなことをまず行うとよいのか?

朝の習慣を作って日々実践し、脳を目覚めさせることが大事だという。

「今日は10時、翌日には7時とばらばらな時間に起きると前日の影響が残ってしまい、目覚めはすっきりとはいかない。同じ時間に同じ脳のパフォーマンスを出せるようにするには、一定の習慣が必要になってきます」

具体的には、朝日を浴びる、朝食を取る、この2つを必ず行う。

起きたらカーテンを開けて朝日を2〜3分浴び、一日をスタート。朝日を浴びると視覚系脳番地が刺激され、同時に光の刺激が体内時計に伝わり、脳と体が活動モードに切り替わる。セロトニンも分泌され、気持ちも前向きに。カーテンを開けるまでの動作で、運動系脳番地も刺激される。

また、朝食を取る間には食べ物を見ながら口まで運び、咀嚼して味わうことで運動系、視覚系、感情系脳番地が刺激され、食べたものは脳のエネルギーになる。あとは次ページの習慣から取り入れやすいものを3つ選び、毎朝の定番メニューにしよう。できれば、刺激される脳番地が1から順に増えていくように行うとよい。

「脳を朝から活性化させるには、強制ではなく自分が楽しめるような習慣を組み合わせていくのが一番。そのほうが長く続けることができます」

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