からだ

仕事を辞めてから自宅でお酒を飲むことが増え、眠れないことも。【88歳の現役婦人科医師 Dr.野末の女性ホルモン講座】

産婦人科医師の野末悦子さんに教わります。
  • 撮影・岩本慶三 イラストレーション・小迎裕美子 構成・越川典子

Q. 仕事を辞めてから 自宅でお酒を飲むことが 増え、眠れないことも。

新型コロナウイルスの影響で、会社の収益が落ち、勤めを辞めざるを得なくなりました。私を含め、派遣社員は全員、解雇です。職種を選ばなければ仕事は見つかりそうですが、新しい環境に慣れるかどうか不安で決心がつきません。自宅にこもっているせいか、昼間からお酒を飲むことが増えました。夜中までずっと飲んでいることもあって、そんなときは将来が不安で眠れなくなることもあります。(A・Hさん 52歳 無職)

A.少しなら、などと思わず、今すぐ飲酒をやめましょう。きっぱり、です。

A・Hさんは、心のどこかで飲酒習慣をやめたい、危険性を自覚したから、お便りをくださったのだと思います。きっぱり、申し上げます。いますぐ、おやめください。1滴も、です。お酒をやめる、ということは、直面している問題から目をそらしたり、ごまかしたりするのをやめる、ということです。

「1杯なら」「百薬の長だから」と、軽く考えてはいけません。アルコールを代謝できる量は、男性より女性のほうが少なく、アルコール依存症になるまでの期間は男性の半分と短く、5〜6年とも言われています。

リスクがあるのは、仕事や家庭内での葛藤が高まる30代、そして更年期です。ちょうど、A・Hさんはただ中にいます。カラダの不調だけでなく、メンタルな面にも影響を受けやすいところに、解雇というストレスがかかってしまったのです。

ストレスを相談できる相手はいますか?(複数回答)

カウンセラーなどの専門家に相談することは少ないのが、日本の現状。家族や友人以外にも、相談できる専門家や医師をもつことが、自分を守るストレスマネジメントにつながる。出典:厚労省「平成30年 労働安全衛生調査(実態調査)の概要」

飲酒習慣が怖いのは、食事がおろそかになる、運動習慣がなくなる、周囲とのコミュニケーションが減るなど、気づかないうちに負のスパイラルに陥ってしまうこと。

一度、専門家の手を借りることを考えてみませんか。更年期外来で体調を診てもらい、必要ならホルモン補充療法(HRT)やカウンセリングなどを受けてもいいでしょう。

よく、シングルの女性のほうが更年期障害になりやすいのかと質問を受けるのですが、そんなことはありません。家族がいれば、その分ストレスも増えます。いずれにせよ、相談できる友人をもつことです。同性でも異性でも、何よりの財産です。

※症状や治療法には個人差があります。必ず専門医にご相談ください。

更年期に限らず、相談できる友人は何よりの財産。(Dr.野末)

野末悦子

野末悦子 さん (のずえ・えつこ)

産婦人科医師

横浜市立大学医学部卒業。川崎協同病院副院長、コスモス女性クリニック院長、久地診療所初代所長、介護老人保健施設「樹の丘」施設長などを歴任。

『クロワッサン』1031号より

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