水中をゆらゆら漂うクラゲ。その動きを見ているだけでストレス軽減効果があるのだという。
「刺されるなど、あまりいいイメージのなかったクラゲですが、その動きに意外にも癒やしを感じるという人が多いことがわかりました」
と教えてくれたのは、クラゲについて長年研究してきた日本大学生物資源科学部特任教授の広海十朗さん。クラゲにも何かしら役に立つ価値はないだろうかと探していた15年ほど前、ある水族館でのアンケート調査をもとに、癒やし効果について検証を始めたという。
「被験者に計算問題を解かせることでストレスを与え、その後に遊泳するクラゲの映像を見せました。使った“物差し”はストレスマーカーホルモンである唾液クロモグラニンA、脳波、加速度脈波、光トポグラフィーで、いずれの場合でもストレス軽減効果が認められました。加速度脈波の測定では、交感神経に対して副交感神経が優位になることもわかりました」
ただし、静止しているクラゲを見せても効果はなく、身の毛がよだつほど嫌いな人にとっては逆効果なのだそう。やはり、あのゆっくりとしたテンポの浮遊感のある動きや、傘の拍動のリズムに、1/f（エフぶんのいち）ゆらぎ効果があるようだ。
地味な存在だったクラゲは、今や水族館の目玉。リニューアルを予定している「すみだ水族館」では、長径7mの楕円形の水盤型水槽が登場。約500匹のミズクラゲが泳ぐ様子を上から覗き込んで、水面に立っているような浮遊感を体験できるなど、水族館の展示手法も進化している。
たまには水槽に泳ぐクラゲを、ひたすらぼんやり眺めてみよう。
