「書き始めたのは2年前、(第三次安倍内閣で)安保法制や憲法などが話題になり、世間が大きく揺れていた頃でした。変化のすべてが悪ではないと思うけれど、過去を知らないままに変わることを、見過ごしてはいけないような気がしたんです。そこで戦争孤児のエッセイや戦中戦後の文化についての本などを読み漁ると、知らなかった事実があまりに多く、それらをテーマにすることにしました」
第2話では近代女性史的側面から見たミシンの歴史が描かれ、第3話では戦争孤児の隠語などを交えながらストーリーが進められる。巻末に参考文献を一部掲載しているので、興味を広げて読んでもらいたいと中島さんは語った。
詳しく説明しすぎず、読者に判断をゆだねる表現が織り交ぜられているのも、中島さんの作品の特徴だ。登場人物の気持ちやあらすじなど、考えうる捉え方が複数ある場面もしばしば見られる。